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陛下の仰せのままに  作者: rumi
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本物の蝶に ~藍~

「ありがとう、蒼陽。」

今、私は自分の家にいる。

「香武様も天伶様も、ありがとうございます。」

頭を下げると3人とも優しく笑ってくれた。

この場所には不釣り合いな木々に隠されていた私の家は

王宮内の傍らで、陽の当たる明るい場所に引っ越してきた。

戸を開ければ、あの日、賊に荒らされた跡など微塵も感じさせないほどに綺麗に片付いていた。

兄の部屋も私の部屋も使いなれた台所もそのまま。

「藍と一緒に眠れないのは、すごく寂しいなぁ。」

背後から悲しげに蒼陽が言った。

「「陛下……。」」

ため息を吐く側近の2人。

蒼陽は子供みたいだ。

「それより、陛下。

藍殿にお伝えしなくてはならないことがあるでしょう?」

「あの従兄弟の紫登(しと)様がいらっしゃるのですからね。藍殿のいない夜を寂しがっている場合ではありませんよ。」

蒼陽が深くため息を吐き、私に言った。

「今日から3日間、藍の女官はお休みね。藍が私の部屋に来るのも駄目。紫登がいるからね…

此処にいるように。

暇は鈴珠殿と過ごすといい。

……本当は私が共に過ごしたいのに……はぁー。」

蒼陽は深いため息を吐くと、私の頭を撫でて2人と共に家を出て行った。

3日間蒼陽に会えないのは何故か寂しく感じた。



「というわけなんですけど、紫登様って何者ですか?」

暇にしていた私の元に鈴珠様が来てくれた。

「紫登様は陛下の従兄弟で隣国を治めている御方ですね。」

(蒼陽と同じ立場にある人なんだ…。)

鈴珠様は

"これを使っても?"と言い、持ってきたお茶を淹れてくれた。

「蒼陽に此処にいるようにと言われました。

紫登様に会わせたくないっぽいのですが…。」

「そうね。

陛下の従兄弟ですから見目美しいのは確か。

ですが、性格が陛下とは逆というか…

紫登様の藍殿に対する態度も違うでしょう。

そこも心配されているのでしょうね。」

そう言って鈴珠様は笑った。

心配…。

王宮内にいてもなお、私を心配してくれる蒼陽。

確かにそうだ。

皆が皆、私を受け入れてくれるとは限らない。

今までだってそうだった……。

「蒼陽に心配はかけたくないし、此処で剣の練習でもしています。」

「そうね。

剣を振るうのもいいけれど

此処でも"女官の務め"ができますよ。」

首をかしげた私に、鈴珠様は言った。

「舞も剣同様、立派な"武器"。特に女にとっては。

きっと藍殿の舞はとても綺麗でしょうね。」

夕暮れ時まで鈴珠様は家に居てくれた。

舞をしたり、他愛もない話をしたりして楽しく暇を過ごした。

"また、明日。"

その言葉が嬉しかった。

明日も不安を抱えて生きていかなきゃならないと、そう思っていたのに、

今は"明日"があることを嬉しく思える。

"藍は女だから舞の一つや二つ出来ていた方がいい。"

兄がいつか私にそう言った。

"いつか使ってくれたらいい。

唯一の女らしい品だな。"

兄は笑いながら私に扇子をくれた。

その扇子があまりに綺麗で、私は引き出しに閉まい、なかなか使えないでいた。

私には綺麗な扇子よりも、剣のが似合うと思っていたから。

それでも扇子を広げ舞えば、

"まるで蝶のようだ。"

と褒めてくれた。

そっと引き出しから取り出してみる。

色褪せることのない扇子に思い出が蘇る。

そんな会話が昨日のことのように思い出されるのに…。

居たたまれなくなって私は外に出た。

部屋で舞うよりも外がいい。

もうすっかり辺りは暗く、王宮も静かだ。

家にいるように言われたけど、この時間なら大丈夫だろう。

私はそう思った。

月明かりしかない所でなら、私を月の美しさが隠してくれる。

誰かの目を気にしなくていい。

私は月明かりの下で本物の蝶になれた気がした。

……

…!?

人の気配を感じて振り返る、

「藍。」

そこにいたのは蒼陽。

小声で私の名前を呼ぶ。

「とても綺麗で驚いた。

なかなか声をかけられずにいたよ。」

そう言って笑った。

「蒼陽。

あ、あの……。」

蒼陽に外に出たことを謝ろうと思ったのに、蒼陽が見つめるから言葉がでない。蒼陽が私の髪に触れた。

「君の髪は月のもとではより一層美しいんだね。」

私は顔が熱くなるのを感じた。

夜で良かった。

だって私、

絶対真っ赤だ。

「今日はとにかく疲れたから藍で充電しないと。

私を家にいれてくれる?

紫登が怪しんでは困るからすぐに戻らなくてはならないけど。」

蒼陽が手を出す。

"友"の手を取らないことなどできないに決まってる。

私は蒼陽の手を取った。

それにしても…

さっきの気配は蒼陽ではないはず。

ならば、息を潜めて私を見ていた者は誰だったのだろう。

不安が募り私は蒼陽の手を強く握った。

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