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陛下の仰せのままに  作者: rumi
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初めての友達~蒼陽~

ぼんやりとした視界にうつり込むのは見覚えのない部屋。

上半身だけを起こすと、額からまだ微かに湿っている布が落ちた。

(…そうか。私は熱で倒れたのか。)

どれくらい眠っていたのだろう。

私の着ていたものは枕元にきちんと畳まれていて、私は誰のか分からないものを着ている。

広くない小さな部屋だ。

「…此処は?」

すると突然戸が開いた。

その者は私の額に手を当てると安堵したかのように、

"良かった"と言った。

(この者が看てくれたのか。)

「そっか、ありがとう。」

顔は見えないが、まだ少年といったところだろうか。

ぐぅぅぅ

突如、私のお腹が鳴ってしまい、恥ずかしいやら可笑しいやらで笑ってしまった。

いつまでも此処で休んでいるわけにはいかないし、

おそらく私を探しているに違いない。

(お腹も空いたし、帰らなくては。)

身体を起こすと少年は、まだ寝てろと言う。

その上、温かいものを作ってくれるらしい。

見ず知らずの者に、こんなに優しくしてくれるなんて…

この子がいなければ、私は雨に濡れ、身体が冷え、死んでいたに違いない。

(命の恩人だな。)

「ありがとう。」

頭から布を被っているが少年が微笑んだのが分かった。

(あ、笑った…。)

時折見える少年の目がとても綺麗だった。

「身体が暖まるからこれを。」

私の前に差し出されたのは美味しそうな粥だった。

「いただきます。

(モグモグ)…とても美味しい!」

こんなに美味しい粥は初めてだった。

私を見つめていた少年も嬉しそうだった。

そういえば、

「この服は…?」

「あ、すごく濡れていたから…兄のを…。」

「そっか、ありがとう。

粥も美味しかった。

色々とすまなかったね。」

遠くの方からこちらに向かって馬が走ってくる音が聞こえた。

私は畳まれている衣服に袖を通した。

(洗濯までしてくれたのか。

小さいのに偉いなぁ。)

「本当にありがとうね。私の名は蒼陽(そうひ)。君は?」

少年の頭を撫でながら言った。

すると、より深く布を被り小さな声で応えた。

「…(らん)。」

「藍か。良い名だね。

私と友達になってくれる?」

藍は大きく頷いた。

私は嬉しかった。

私には友と呼べるような友がいなかったから。

「では、行くね。」

戸を開くと私の側近が血相を変えて走り回っていた。

(あ、目が合った。)

「「陛下ー!!」」

「(クスクス)賑やかだなぁ、香武(きょうぶ)天伶(てんりょう)は。」

香武と天伶が馬に乗り駆けつけてきた。

この2人は私の側近で、王宮内で一二を争う腕の持ち主だ。

「え、陛下?」

私の後ろから藍が顔を出した。

それに驚いたのか馬が暴れ出した。

馬の脚に蹴られてはひとたまりもない。

馬の脚は壁を勢いよく破壊し、

「危ない!藍!!」

藍を守れたものの、私と藍は水溜まりの中。

「「……。」」

「「申し訳ありません!陛下!」」

2人が頭を下げたが、

泥だらけの藍が目に入っていないのか。

「私に頭を下げるのではない。この者は私の命の恩人であり、友人の藍だ。

藍に頭を下げるべきではないのか。」

私に睨まれた2人が藍に頭を下げた。

「藍殿、申し訳ありません。」

「陛下をお助けいただき、ありがとうございました。」

藍は落ち着かない様子を見せたが、そんな藍を私は抱えた。

「私の側近がすまなかったね。

ただ、コレは困ったね。」

馬が暴れたせいで壁は崩れて家はボロボロ。

「藍さえよかったら、私と共に王宮に行かない?」

あまりにも唐突すぎたか、藍は黙っていたけれど、壊れた家を見てため息を吐き、頷いた。


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