表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陛下の仰せのままに  作者: rumi
12/36

小さな手 ~蒼陽~

もうすぐ藍は家に帰る。

ずっと此処にいてくれたって構わない。

けれど、藍がそれを望んでいないのだから、無理強いはできない。

はぁー…

ため息を吐く。

「陛下、どうなさいました?」

香武が言う。

「会える場所であっても、毎日会えなくなるのは寂しいなぁ。それに心配だし…。」

「藍殿ほどの剣の腕前があれば、心配など無用なのではありませんか?」

天伶が言う。

「どんなに腕が良くても、藍は女の子なんだよ。

"友"の心配をしない"友"がどこにいるの?」

あの子の剣は、勝負をするものでもなければ、誰かを傷付けるものでもない。

ただ自分を守るために身に付けたものだ。

「そうですね。剣が強くても、藍殿は優しすぎますね。」

「あぁ。虫一つにも剣を振るうことができないのだから。陛下が心配されるお気持ちはよく分かります。」

2人はあの日の藍の剣を思い出しながら言った。

そうだ。

藍は虫一つも殺せない。

そんな子だからこそ、心配なのだ。

相手に危害を加えずに身を守ることなどできるのか…。

「藍が家に戻ったら見回りを頼んだよ。」

「「仰せのままに。」」

2人は私の部屋を出ていった。


先日、藍を連れて藍の家に行った。

いとも簡単に抱えることの出来る女の子は、人から隠れるかのように木々に囲まれた家に住んでいた。

1人で不安にならないのか…そう思った。

戸を開けた藍は小さな声で「ただいま。」

と言った。

それはとても哀しい声だった。

「お帰り。」

言葉は勝手に出た。

藍は被っている布をより深く被り、消えそうなほど小さな声で、

「ありがとう。」

と、言った。

私は藍の顔を知らない。

一体どんな顔をして笑うのだろう。

今、どんな顔をしているのだろう。

素顔を隠した私の友。

寂しさも不安も口にしない。

「君はもう1人じゃないよ。」

私の言葉は藍の心に届いただろうか。

木漏れ日の中、私の手を取ってくれた藍。

藍の手は剣など握るための手ではない。

私はこの小さな手を守りたいと強く思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ