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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第2章  王国辺境_農地開拓編
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閑話 第4話

5年前の話です。今後ちょくちょく昔の話を挟みますが仕様です。

 この世界に来てから2ヶ月が経過した。いくつか分かったことがある。


 1つ目はこの世界には良く分からない力が存在すること。暫定的に魔力と呼ぶことにする。


 2つ目は、普通の人でもその魔力を使って地球の法則を無視したことができること。体の強化と、火や水を出したりだ。詠唱が必要らしいので、魔術でいいだろう。ルヴィによると得意、不得意はあるが誰でもできるらしい。


 3つ目はバッドニュースだ。その魔術をオレは使えない。少しマシになった言葉で魔術の使い方をルヴィに聞いたところ、なんで出来ないの?と言われた。いや、出来ないよ。

 一番簡単な体の強化すら出来ず、色々と原因を探った結果、オレに触れたルヴィから魔力が無いと言われた。

 まあ、確かに地球じゃ魔力なんてない。当然と言えば当然だ。オレは落ち込んだ。気円斬が出来るかもしれないと、小学生ぶりに力んでみたのは無駄だった訳だ。20歳(ハタチ)にもなって頑張った自分が恥ずかしい。


 4つ目。最後に分かったことだ。ああ、それは……ルヴィが料理下手だったことだ。




 目の前にいる、同い年の狩人の青年に向かって宣言する。


「これからの食事はオレが作ります」


 うん。この2ヶ月で日常会話は普通に出来るようになった。もう、伝えたいことが伝えられないもどかしさからはおさらばだ。


「うん?助かるけど、コーサクに余裕はあるのか?」


 はっはっは。舐めてもらっては困る。


「大丈夫。手伝いには慣れて来た。前より早く終わってる。パルメさんのお墨付き」

 

 洗濯も、野菜の処理も、物を運ぶのも早くなった。日本人としての特性か、単純作業の効率化は楽しく感じる部分がある。それに肉体労働のおかげで筋肉が増えた。

 時間的な余裕はある。ああ、パルメさんは村長の息子の奥さんだ。女性陣の顔役である。強い。豪快。逞しい。肝っ玉母さんだ。


「なら任せるけど。なんで急に?」


「え。だってルヴィ料理下手じゃん」


 ぶっちゃけ美味しくないよ。


「そう?」


「うん」


「食えればよくない?」


「オレは美味い方がいい」


「う~ん……まあ、任せた」


「うん。任された」


 という訳で、料理係になった。食事は美味い方がいいに決まっている。食事とは、体の栄養だけではなく心の栄養でもあるのだ。


 オレがルヴィの料理下手に気付いたのは、つい先日、村長宅で夕食を食べる機会があったからだ。その日ルヴィは泊りがけで森に狩りに行っていた。


 オレはこの村に来てから、村全体で食事の質が低いと思っていたのだが、パルメさんが作った料理は素朴ながらも丁寧に作られていて、とても美味しかった。

 2ヶ月ぶりに食べる美味しい料理に愕然としたね。そこでパルメさんから色々聞いた結果、ルヴィの料理下手が判明した。


 この村に来たばかりの頃とは違い、今のオレは普通に会話も出来るし、時間の余裕も少しある。ならば、わざわざ美味しくない料理を食べる必要はないだろう。


 なので、美味しい料理を作りたいと思う。ルヴィへの恩返しも兼ねてだ。うん。頑張ろう。





 ルヴィの家の料理当番になってから、早1週間が経った。今も料理中だ。もうすぐ夕方、家の外で毛皮の処理をしているルヴィもそろそろ帰ってくるだろう。


 小麦粉に水と塩を入れて捏ね、薄く伸ばしてかまどの内側にべちんっと貼り付ける。パルメさんから習った、ここ周辺の主食だ。焼きあがるとナンみたいになる。


 ルヴィは面倒臭がって、小麦粉もまとめて全部スープにぶち込んでいた。その場合、出来上がるのは粉っぽいスープだ。のど越しが悪い。むしろ粉が喉に張り付いてむせる。


 根菜類はスープだ。一口サイズに切って、肉と一緒に鍋で煮込む。肉は良く分からない獣の肉。

 ルヴィが狩ってくるのはだいたい野鳥だが、たまにデカい獣の場合がある。元の世界の動物に似ているが、姿やサイズが違う。

 今煮込んでいるのは、角の生えたカピバラ?見たいな獣の肉だったはず。


 煮込むと出て来る灰汁を取って、森に生えている香草を投入する。肉の臭みを抑えたい。

 ルヴィは塩しか入れないからスープはいつも獣臭かった。香草をくれたパルメさんに感謝だ。


 あとは、野鳥を焼くか。オレも野鳥の解体くらいなら慣れてきた。大事なのは気合だ。腕の鳥肌に意識を向けてはいけない。


 綺麗に地肌を晒した野鳥に塩と香草をまぶして焼く。いい匂いだ。皮から出た油が弾ける様子が食欲をそそる。


「ただいまー」


 ルヴィが帰ってきた。


「おかえり。もう少しでご飯ができるよ」


「分かった。今日も美味そうな匂いだな」


 ルヴィは料理が下手だが、味音痴な訳ではない。聞いたら、食事は量>>味とのことだ。基本的に食えればいいというスタンスだ。料理に手間をかけるのは面倒臭いらしい。

 自分が作るのは面倒だが、オレが美味しく料理をしてくれるなら歓迎してくれる。


 この村では食材が少ないが、せめて丁寧に料理をしようと思う。





 そして夕食中。


「うん。美味いよ」


 野鳥の香草焼きにかぶり付きながらルヴィが話す。


「どういたしまして。居候だしね。料理させてもらうなら、ちゃんと作るよ」


「別に気にしなくていいけどな」


 気にしないのは無理だな。スープをすすりながら思う。うん。塩スープより美味い。


「まあ、元々料理はけっこう好きなんだ。このまま任せてよ」


「そうか?なら、まあ頼んだ」


「うん」


 ナンもどきをちぎって口に運ぶ。白米が食べたい。聞いたらこの村では小麦が主食らしい。お米はない。ついでにパンもない。イモはあった。


「ああ、そうだルヴィ。浅いところでいいから森の歩き方を教えて欲しい」


「ん?なんでだ?」


「今日の料理にも使ってる香草って、森の中に生えてるだろ?自分でも集めたい」


 今手元にある香草はパルメさんから譲ってもらったものだ。いつまでもパルメさんからもらう訳にはいかない。


「う~ん。まあ、浅いところならいいか。いいよ。暇を見て森に連れてってやる」


「うん。ありがとう。お世話になります」


「おう」


 人は食べなければ生きていけない。そして、食べるなら美味しいものがいい。美味いものを食べた方が人は頑張れる。


 この村でオレが出来ることは少ないが、オレを拾ってくれたルヴィに料理を作ることは出来そうだ。

 分からないことだらけだが、出来ることを頑張りたいと思う。


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よろしければこちらもどうぞ! 『お米が食べたい』シリーズ作品

〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

〇ルヴィ視点の物語 : 『狩人ルヴィの故郷復興記』

シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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