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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第2章  王国辺境_農地開拓編
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情報収集

 窓から入ってくる朝日で目が覚めた。領主の屋敷の一室。見慣れない室内に一瞬混乱した。


 昨日の晩はリリーナさんと領主が会食をする間、ずっと壁際で突っ立って警備をしていた。特に問題は起きなかったが、豚領主がリリーナさんを見る目が怪しかった。あれは良くないことを考えている。要警戒だ。


 会食で出た料理は、とても豪華に見えた。2人しか座っていない大きなテーブルに大量に並ぶ料理たち。

 食べきれないほど料理を並べるのが貴族のもてなしらしいが、はっきり言って気に入らない。

 余った料理は使用人たちで食べるらしいが、それでも余ったら廃棄するらしい。見栄のために、捨てる前提で料理をするのはオレの感覚では許せないことだ。やはり、貴族は嫌いだ。


 朝から気分が悪くなりながらも、身支度を済ませる。今日からリリーナさんは商談に入るはずだ。

 リューリック商会が扱うのは食料品。ここの領主が求めているのも当然食料だ。現状では情報が足りないが、荒らされた畑から考えると領地で足りなくなるから購入するのだろう。


 商談中もオレが護衛だろうか?別に構わない。雇われの身だ。上手く使ってもらおう。





 違った。今日は外で情報収集に行って来い。とのことらしい。


「今日は俺等で商会長に付きますんで、コーサクさんは街の様子を調べて来てくだせえ」


 朝のミーティングでマイクさんからそう言われた。まあ、周囲の安全確認も護衛の仕事か。


 オレとロゼッタは平服に着替えて街に出た。タローも一緒だ。


「情報収集ってどこでするもんなの?酒場?」


「いや、さすがに朝から酒場に人はいないだろう。買い物でもしつつ店主に話を聞いてみるのが得策だ」


「了解。とりあえず、お店を探して歩こうか」


「うむ」


 ロゼッタと話しながら、動き出した街を散策する。人々の顔はあまり明るくない。活気がない。貿易都市だったら朝一は狩りに行く冒険者や、仕入れを始める商人、荷運びをする労働者でうるさいくらいに騒がしいのに。


 そのまま歩いていると美味しそうな匂いがし始めた。近くに屋台があるのだろう。


 ぐううう、と腹の音が聞こえた。隣から。


 音の発生源はオレではなくロゼッタだ。両手で自分を抱きしめるようにお腹を押さえて、顔を赤くしている。


「……最初は屋台に行ってみようか。軽く食べながら、この街の話を聞いてみよう」


「う、うむ。そうだな」


「わふ」


 匂いを追って移動する。すると、あまり大きくない通りに出た。美味しいそうに湯気を上げる屋台が並んでいる。

 屋台によって細くなった通りには、人が忙しなく行き来している。ここで朝食を摂ってから仕事に行くのだろう。


 店の人に話を聞くために、あまり混んでいない屋台を探す。あ、角兎の串焼き。美味そう。ぐ、だけど並ぶ人が多い。今はパスだ。後で来よう。


 ロゼッタと相談して選んだのは、汁物の屋台。野菜と少しの肉に、小麦の団子が入ったスープを売っていた。

 屋台の横には座るスペースもある。スープを売る店主に近い席に座ることができた。これで話を聞きやすい。でも話を聞く前に食べようか。


 顔に出さないようにしているが、ロゼッタは早く食べたそうにしている。引き結んだ唇から、オレには我慢しているのがバレバレだ。

 タローも足元で尻尾を振りながらオレを見上げている。


「冷める前に食べよう。あ、タローは火傷しないようにしろよ?」


「わふ!」


「じゃあ、「いただきます」」


 スープをすする。とても美味しいという訳ではないが、煮込まれた野菜と肉の旨味が出ていて安心する味だ。

 味付けは塩と、たぶん香辛料がいくつか。小麦の団子は食べ応えがある。腹に溜まりそうだ。これから働くならいいエネルギーになるだろう。

 野菜は煮崩れて食感がほぼない。入っている肉も欠片だ。だけど、忙しい朝に短時間で腹に入れるなら悪くはなさそうだ。


 さて、食べながら店主に話を聞こうと思ったのだが、既に目の前にいるロゼッタがスープを完食してしまっていた。


「「……」」


 ロゼッタがオレの目線から顔を逸らす。端正な横顔は少し赤い。そんなにお腹空いてたの?


「わふ」


 タローも食べ終わったようだ。まあいいや。オレも残ったスープを流し込む。


 店主へは、この空になった木の器を返しながら話を聞くとしよう。近い席に座った意味がなくなったな。


 タローの皿も拾って席を立つ。


「ごちそうさまでした。美味しかったです」


「おう!ありがとよ!」


 店主は色黒の痩せたおっちゃんだ。器を手渡しながら聞いてみる。


「オレ達この街には昨日着いたんですけど、畑とか荒れてて驚きました。何かあったんですか?」


「おお?知らねえのかい?さては西から来たんだなアンタたち。ちょっと前に、東の方で氷龍が通ったんだよ。そのおかげで、この街も夏場とは思えねえくらいに寒くなってな」


 いや、氷龍は知ってる。むしろこの街の誰より知っているよ。


「そんで森の実りも悪くなっちまったみたいでよ。食うもん無くなった魔物が畑まで出て来たんだよ。ここの騎士様と冒険者で追っ払ったんだけどよ。ただでさえ寒さで育ちが悪くなった麦が荒らされちまってな」


 ロゼッタがいた場所と同じようなことが起きてるな。


「今はまだ食うもんあるけどよ。今年の収穫量は少ねえだろうって言われてるな。そんで領主様は他から食いもん買うつもりらしいが、俺らまで回ってくんのかねえ」


 で、その購入先はリューリック商会だと。う~ん。畑が荒れた原因は分かった。でも、そもそも普段から魔物を狩って生息域を遠ざけておけば、簡単に人里まで魔物が来ることはないはずだ。

 現に貿易都市では、氷龍が通過した後も魔物が襲ってくることは無かった。


「オレ達もこの街に入る直前で魔物に襲われましたけど。普通はもっと魔物を狩って、非常時にも抑え込めるようにしますよね?」


「あ~、あ~。それなんだけどよう」


 店主が顔を近づけてくる。その声も小さくなった。


「ここの領主様はよう。あまり上手くねえんだ。自分のことばっかり考えてやがる。先代のときは冒険者にも金出して森の魔物を狩ってたんだがよ。今じゃあ冒険者への金も減って、よく分かんねえ珍味だかを買ってるらしいんだ。苦労するのは、いつも平民の俺等だ。勘弁して欲しいぜ」


 なるほど。やはりあの豚もクズか。オレは豚の評価をさらに下げた。


「おおっと、話し過ぎた。俺が言ったことは他では言わないでくれよ?騎士様にでも目を付けられたら大変だからな」


「ええ、分かってますよ。ありがとうございました」


 店主に礼を言って屋台を離れる。ここの領主は頭が悪いらしい。バカな貴族ってヤツは厄介だ。普通に考えたらあり得ない行動をする。


 はあ、他のところでも情報を集めるか。次の行き先をロゼッタと相談しよう。


 ロゼッタに振り返ると、何か言いかけたのか口をもごもごさせている。ああ、そういえば、さっきの量じゃロゼッタには足りないか。ふむ。


「もう少し、この辺りの屋台で情報を集めようか」


「っ!う、うむ。そうしよう。1件だけでは情報に偏りがあるかもしれないからな」


「そうだね」


 次の屋台を選びながらロゼッタの隣を歩く。


 ここの豚領主を含め、貴族ってやつは気に入らない。嫌に貴族に出会う度に、嫌な記憶が蘇る。腐った奴等は全員爆発させてしまいたいと思う。


 気分が落ち込んで来た。今は護衛の仕事に集中しよう。周りを見渡す。あ、角兎の串焼きだ。美味しそうだな。


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よろしければこちらもどうぞ! 『お米が食べたい』シリーズ作品

〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

〇ルヴィ視点の物語 : 『狩人ルヴィの故郷復興記』

シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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