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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第2章  王国辺境_農地開拓編
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タロー初めての狩り

 都市を出発してから7日目。オレの改造馬車は一番後ろを走っている。護衛の人達によると、あと1時間ほどで目的地に着くらしい。もう少しすれば、麦畑が見えてくるはずとのことだ。


 御者台の上で、隣にはロゼッタ。膝の上にはタローがいる。ちょっと大きくなったよな、タロー。前より重い。撫で心地もいいなあ。


 オレに撫でられているタローは、さっきからピクピクと耳を動かしている。何か察知しているようだ。かく言うオレも異常を感じている。


「ん~?うむむ~?」


 なんかピリピリする。弱いが、肌に感じる魔力と敵意。左手に見える森の中に、何かいる。


「わふ!」


 タローも起き上がった。森に向かって吠える。


「やっぱりいるよな?」


「わふ!」


「魔物か?」


「たぶん。でも、あまり強いヤツはいないと思う」


 襲ってくるかな?とりあえず、他の護衛にも伝えないと。


「他の護衛には私が伝えてこよう」


「うん。頼んだ」


 ロゼッタがひらりと御者台から飛び降り、そのまま前方へ加速して行った。馬車より速いんだからすごいよなあ。


 さて、護衛の人達はどう判断するか。魔物はまだ姿を見せていない。このまま走り抜けてもいいと思う。問題は人里に近いことだな。後の安全を考えるなら、ここで殲滅した方がいいかもしれない。

 というか、そもそも何で人が住む場所の近くで魔物が出るのか。普段から狩っておけよ。

 オレはまだ見ぬ領主の評価を1段階下げた。


 ロゼッタがマイクさんと一緒に戻って来た。マイクさんが叫んでくる。


「馬車を止めるぞ!魔物はここで狩る!」


「了解です!」


 うん。賛成だ。マイクさんの判断に従おう。ここで魔物を無視して、襲ってくるのを緊張して待つよりは、自分から仕掛けた方が気が楽だ。


 馬の手綱を引いて減速させ、馬車を停止させる。ロゼッタが寄って来た。


「オレが突っ込む!ロゼッタはここで護衛を!」


「分かった!」


 オレよりロゼッタの方が守りに向いている。だいたいオレは、人が近くにいると爆弾使えないし。

 まあ、感じる魔力は小物だ。爆弾はいらないだろうけど。

 ああ、それと丁度いい機会だ。


「タロー!行くぞ!」


「わふ!」


 タローの狩りの練習もするとしよう。オレがフォローする。


 商会の護衛5人の内、3人が森へ向かって走り出した。オレ達も向かうとしよう。


「身体強化『全身:強』起動」


 体が生まれ変わる。感覚が広がる。力が漲る。


 走り出したオレの横を、タローが並走する。タローも走るの速いなあ。さすが狼。


 森へ向かって駆ける。感じる魔力は近づいてきている。最初の1体が森の暗がりから姿を現した。角の生えた兎だ。ただし、オレの胸くらいまである。でかい。角兎だ。久しぶりに見たなあ。


「おいタロー。あれ角兎だぜ。肉が美味い。うわあ、懐かしい~」


「わふ!」


 オレが初めて狩った魔物だな。もっと小さい個体だったけど。あの頃は大変だった。まだ魔道具なかったしな。


 オレが昔を思い出している間にも、森から魔物が出て来る。角兎、鎧鹿、魔狸に荒鶏。

 他の護衛達も戦いを始めた。鎧袖一触に蹴散らされていく魔物達。動きに無駄がない。護衛だけあって、皆かなりの実力のようだ。


 オレも行くとしよう。爆弾は温存だ。このレベルの魔物にはもったいない。


「タロー!付いて来いよ!」


「わふ!」


「開け『武器庫』!『足鎧』!」


 オレの足を魔力が覆う。半透明な魔力の防具。そして武器だ。


 1羽の角兎に狙いを定める。加速する。哺乳類型の魔物だけで良かった。


 -狙うのは首。


 なんせ、首を折れば死ぬ。


 走りの速度と体重を乗せた爪先が、兎の首元に叩き込まれる。足から伝わる嫌な音。骨を砕いた感触だ。殺った。


 倒れ伏す兎。起き上がることはない。


「よし。こんな感じだ、タロー。だいたいの生き物は首が弱点だからな。狙うならそこだ。次は弱めに蹴るから、とどめは任せた」


「わふ!」


 次の兎に向かって走る。オレに気付いた兎が赤い目を光らせて突進してくる。鋭い角は当たれば悲惨だ。


 当たらないけど。衝突する直前で右に1歩ステップ。脇腹に一撃を突き立てる。


 バランスを崩して地面を転がっていく兎。内臓への衝撃はそう簡単には消えない。


「タロー!」


 足を震わせて立ち上がろうとする兎にタローが飛び掛かる。首に向かって牙を突き立てた。兎も逃れようとするが、タローはがっちりと噛み付いて離さない。

 次第に兎の動きは鈍くなり、タローの初狩りは成功した。


「おし、タロー!上手だぞ!良くやった!……後で水浴びしような?」


「わふ!」


 タローの白い毛に、兎の赤い血が染み込んでいる。特に口元の赤が目立つ。猟奇的な感じだ。まあ、正しい姿ではあるのか?狼だし。


「まあいいや。次に行こうか」


「わふ」


 強化された脚で地面を蹴り、近くにいた鎧鹿に突撃した。





 森まで入って、付近にいた魔物はだいたい狩った。何体か森の奥に逃げたが、今回の件で学習して街道まで出てこなければ問題ないだろう。


 狩った魔物は30体ほど。手分けをして魔石を取り出し、何体かは解体して肉を持ってきた。久しぶりに角兎の串焼きが食べたい。けっこう美味いんだ。


 残りの死体はひとまず森の中に置いて来た。領地に着いたら相談するらしい。


 全員、元の配置に戻り、再び3台の馬車が走り出す。


 そして目的地であるウィブリシア領が見えて来たのだが、どうにも不穏だ。遠目に見える畑では麦が無残に倒れ、荒れている。

 そもそも他の麦も発育が悪そうに見える。活気も感じられない。面倒事の予感がする。


 何があったにせよ、とりあえず今日は安全なベットで寝たい。


 ついでに美味しい料理が食べたいんだけど……美味しいものあるかなあ、これ。


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〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

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シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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