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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第2章  王国辺境_農地開拓編
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謎の木と白い花

 夏の日差しが降り注ぐ家の庭に、ふと違和感を覚えた。違和感の元は、プラントキメラから採れた謎の木だ。


 緑が主張する庭の中に、かすかな白が映り込んでくる。


「いつに間にか、謎の木に花咲いてるな」


「わふ」


 全然気づかなかったわ。いつからだろう。昨日は咲いていたか?


「何の花か。食える実がなるといいな。な、タロー」


「わふ!」


 タローが食えるかは知らんけど。さて、ちょっと観察してみるか。


 庭に出て、木に近づく。謎の木に咲いているのは、小さな白い花。どうにも、その花に既視感がある。


「ん~?どっかで見た覚えが……こっちじゃないな。元の世界(あっち)か?」


 白い花。強い主張はしないが、それでも目に留まる白い花。オレはこの花を何度も見たことがある気がする。


 穴の空いた記憶を探る。どこだったか。田舎のじいちゃん家か?そうだ。田んぼと畑、山だけが広がるあそこで、この花を見たことがある。

 ああ、幼い頃に教えてもらったこの花は。


「……梅の花、だよな?」


 そうだ、梅の花にそっくりだ。オレの記憶の中のものと、とても良く似ている。


「梅かあ。そうだったら、実が生るといいなあ」


「わふ?」


「ああ、オレの故郷にあった梅の木にそっくりなんだ。でも、梅だったら、タローは食べるの無理かもなあ」


「わふぅ」


「はっはっは」


 さて、この木が梅の木だったとして、梅が出来たらどうしようか。


 オレの中では、梅=おにぎりの具なんだよなあ。ああ、梅干しおにぎり、食べたいなあ。


 おにぎり。いいなあ、おにぎり。

 炊き立てのご飯をふんわり握って、海苔を巻いて、出来立てのおにぎりをパリパリの海苔と一緒にほうばりたい。

 お米の柔らかさと、まだ結晶が残る塩を感じながら、温かく、お米がほどけるそれを堪能したい。


 ああ、でも。弁当用で時間が経ったおにぎりもいい。

 崩れないように、少しだけ固めに握って、海苔がしんなりしたおにぎりを噛み締めたい。

 塩がお米に馴染み、冷めてお米の味が良く分かるそれを、じっくりと楽しみたい。


「あああ~~~、おにぎり食いてえ~~!」


「わふ?」


「ははっ、お米探そう……」


 はあ。


 さて、梅というと、オレは梅干しにする方法しかパッと出てこないのだが、お米の無い状態で梅干しを消費するだろうか?

 まあ、保存用にちゃんと古い方法で作れば余裕で何年ももつので、将来お米が見つかったときのために作っておいても良いと思うが。


「他に何かあったかなあ、梅の食べ方」


う~ん。梅酒?漬けるだけなら簡単だけど、あれ確か焼酎じゃなかったか?この辺に売ってたかなあ。ビールと果実酒しか見てない気がするけど。

 自分で作るか?この都市でも酒に関する決まりはガッチガチにあるけど、売らずに家で消費するなら、酒造りはセーフだったはず。


 でも、オレ別に普段酒飲まないしなあ。労力掛けるほどの魅力を感じない。けど、ロゼッタとかは酒好きだしな、お客さんようにちょっと試作してみるか。そのうちな。


 後は、確か梅ジャムって聞いたことあるな。食べたことないけど。どんな味なんだろう。甘いのか?う~ん。ジャムにするなら他の果物あるし、ちょっと保留。


 いいや。梅の実が生ったら、梅酒用に少し残して、後は梅干しにしてしまおう。保存が効くし、梅干しを使った料理もいくつか思い出した。あれとか、あれとか。


 それに梅干しなら、単体でも食えるしな。夏バテとかにも効果抜群。疲れた体に良く効くぜ。

 あと、ちょっとオレ以外が梅干しを食べたときに、どんな反応をするのかも見てみたいな。慣れてない人が食べたら、どんな顔をするんだろう?この世界で見たことないしな、梅干し。


「よし!それで行こう。いろいろ楽しみだなタロー!」


「わふ!」


 生きることとは、食べることだ。食に楽しみがあるのは良い。実に良いことだ。


「ははっ、なんか腹減ってきたな。タロー、ちょっとおやつにするか」


「わふう!」


「鶏の手羽先の部分、とっておいたんだ。焼いて食おうぜ?」


「わふふう!」


「ははは!」


 気分がいい。梅が食べられそうだからか。昔の思い出に少し浸ったからか。


 ああ、ちゃんとお腹が空いて、ちゃんと食べられるなら。人はどこでだって生きていけるものだ。


 さて、手羽先焼こうか。


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〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

〇ルヴィ視点の物語 : 『狩人ルヴィの故郷復興記』

シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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