熟睡の後
差し込む光に目が覚めた。朝か。
昨日寝不足の勢いで盛大にフラグを立てたような気がしたが、オレの睡眠は邪魔されなかったようだ。
かなり気分がいい。体が回復しているのが分かる。たった一晩熟睡しただけで、ここまで回復するとは、オレもまだまだ若いということか。
ベットから降りてキッチンを目指す。なんだかとても喉が渇いている。気温が下がって乾燥しているせいかな?
お茶を飲みながら窓の外を見る。雪は降っていない。悪くない天気だ。冬にしてはだけど。
「あ~、買い物行くか。市場開いてるかな?」
なんだか新鮮な野菜が食べたい。今、家にあるのは穀物類と保存食がほとんどだ。買い物に行こう。
市場は開いていた。厚手の服を着ながら、都市の住人たちが威勢よく活動している。
うん、この分だと都市の生活にもあまり影響は出ていなそうだ。良かった。
さて、何かいいものはあるかな?
「あれ?コーサクさん。おはようございます」
「うん?ああ、イルシア。おはよう」
「一昨日はどうもありがとうございました」
「おと、とい?」
「はい?」
ん?豚汁を作ったのは昨日だ。昨日、炊き出しが終わった後に家に帰って、ようやく安眠出来て、一晩寝て、今だろう?うん昨日、だよな?
「ん?……イルシア、オレが豚汁作ったのって何日前?」
「え、ええと?だから一昨日、2日前ですけど?」
ん~?
「…………なるほど。……イルシア、オレ丸々1日寝てたわ。全然気づかなかった。今日が昨日だと思ってた」
「そ、そうですか、よっぽど疲れていたんですね。本当にお疲れ様でした」
はああ、そういうことか。眠った時間に対してずいぶん回復していると思った。そうか、そうか、昨日1日まったく起きずに寝たのね。なるほどー。
……どんだけ疲れてたんだよ、オレ。
「びっくりだわ。まあ、実害も無かったし良いか。イルシアも食料品買いに来たの?」
「はい。孤児院だと1日に使う食材も多いので。ちゃんと市場が開いてよかったです」
育ち盛りがたくさんいるから大変だよね。
「でも1人だと荷物持って帰るの大変じゃない?」
既にイルシアはいくつか荷物を持っている。たぶんイルシアの方がオレより力があるのだが、重そうな荷物を持っているのを見ると、手伝った方が良いように思ってしまう。オレ、あまり役に立たないのに。
「いえ、私だけじゃなくて、リックと他の子も来てますよ。今は別行動です」
「そうなんだ」
じゃあ、大丈夫か。荷物も分担して持つんだろう。
「お~い、イルシア~」
「この声はリックだね」
「そうですね。えーと、あ!いました」
片手に荷物を持ったリックがやって来た。
「お!コーサクさん、おはようございますっす!元気そうで良かったっす!」
「おはよう。おかげさまで、良く寝たからね。昨日1日寝てた」
「すごいっすね!」
「本当にね。さて、オレも買い物だ。野菜欲しいんだよね」
すごくサラダが食べたい。ビタミン足りてないのかな?
「野菜っすか。イルシア、野菜はまだ買ってないよね?」
「うん、これから行くところ」
「分かった。コーサクさん、一緒に行かないっすか?すぐそこっすから」
「そう、じゃあお言葉に甘えて。そういえば、オレ、値引き交渉苦手なんだよね」
「ふふふ。確かに。強気で値段交渉するコーサクさんって想像できませんね」
なんだろう。店員さんの勢いに負けて、そのまま買っちゃうんだよね。
3人で野菜売り場へ向かった。
リックとイルシアに値段交渉を手伝ってもらい。無事、野菜をゲットした。いつもより何割も安い。オレはカモだったのか。
……まあいいや。今まで値切らなかった分、時間を得していたと考えよう。
今日はサラダ祭りだな。
リックとイルシアも買い物が終わったので、他の子との待ち合わせ場所に向かうようだ。途中まで、オレの帰るルートと同じなので一緒に行く。
「イルシア、そっちの荷物持つよ」
リックが、少し顔に照れを浮かべながらイルシアに言う。
「う、うん。よろしく」
荷物を渡すイルシアの手、荷物を受け取るリックの手。そして重なる2人の手。
「「あっ」」
赤面する2人。急いで手を離して、少し歩く距離が広がる。お互いをチラチラと伺いながら2人は歩く。
そしてそれを見せられるオレ。
うわあ、う、初々しい。あまりにも青春すぎてお兄さん、背中がざわざわするよ。掻いていい?
だが残念。オレは買った野菜で両手がふさがっているので、この背中のざわめきに耐えるしかないのだ。
前を歩く2人の雰囲気はとても甘い。
今日はデザート作らなくていいな。お腹いっぱいだからね。




