魔道具設置
少し疲れを見せていたコーサクを見送った。振り返ると、何やら目を輝かせながら干し肉を食っている姿が目に入る。美味えのか?干し肉が?
「ジュード、その歳にしちゃあ、手前の腕は悪くねえよ」
「ん、んぐ……うす。ありがとうございます」
言葉通り、コイツの腕は悪くない。最近は少し伸び悩んでいるようだが、職人は誰もが悩んで、試行錯誤して成長していくもんだ。
作業の速さは、経験を積めば上がっていく。非常事態だが、今の環境はコイツの成長にとって悪いものではないだろう。
問題は。
「だけどよ。コーサクと自分の腕を比べるのはやめとけ。アイツは化け物の類だ。アイツの作り方は、俺たちの流儀の延長には無えよ」
「……うす……作業に戻ります」
「ああ、任したぞ」
魔道具作りを再開したジュードを横目に、コーサクが作った魔道具を確認する。
……相変わらず、半日で、しかも1人で作ったとは思えねえ量だな。
これだけの魔道具を作って、アイツは“少し疲れた”ように見えるだけだ。
動作は同じように全て問題がない。魔石内の魔術式は、使っている精霊語こそ同じだが、理解不能な羅列になっている。
アイツは、魔道具の作り方を含めた、存在そのものが異質な男だ。
アイツが全く悪意の無いヤツで良かったと思う。良く分からねえ植物に固執していなかったら、もしこの都市ではなく、帝国や王国に付いていたらと思うとゾッとする。
この都市は再びどっちかの国に占領されたかもしれねえし、氷龍による災害の被害も跳ね上がっていたはずだ。
「……普段は祈らねえが、縁の精霊に感謝しておくか」
ついでに、今回のこれも何事もなく終わるとありがてえ。
「へっくしゅ!」
「コーサクさん、寒いっすか?」
「ん~、いや大丈夫、大丈夫。リックが風除けの魔術使ってくれたおかげで快適だよ」
「そうっすか。もうすぐ着くっすよ」
「了解~」
オレは今、リックに背負子で背負われて運ばれている。さすが配達を本業にしているだけあって、ほとんど揺れない。
風除けの魔術のおかげで風圧を感じることもないので、景色だけが後ろ向きに高速で流れているように見える。
「着いたっす!」
「うし、ありがとう」
今日の外回り1件目は宿屋だ。建物を補強する魔道具は、一軒家くらいなら1台で賄うことができるが、大きな建物になると複数台設置する必要がある。
魔道具同士が干渉しないように連結する必要があるので、オレが直接回った方が速くて確実だ。
「ごめんくださ~い」
「は~い、いらっしゃいませ~。ご宿泊ですか?」
「客じゃないんです。え~と、都市運営から氷龍の通過に備えた魔道具の設置について通知が来たと思います。その件で魔道具を設置に来ました」
「あ~、そうなんですか。ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「ええ、すぐに終わりますんで」
宿屋で応対してくれたのは、看板娘っぽい若い娘さんだ。一緒にいた少年と掃除中だったようだ。
……何だろう?あの少年の顔をどっかで見たような。……う~ん?何かゴルドンに似てる?
「……どうかしました?」
「いえ、何でもないです。終わったらまた声かけますね」
おっと、少年を見ていたら不審そうな顔をされてしまった。まあいい、時間も無いし仕事しよう。
「リック、そっち支えてくれる?」
「はいっす」
オレの消耗を抑えるために工具箱の発動も最低限だ。いつもは魔力のアームを使うところをリックに手伝ってもらう。計3つ設置した。
設置した魔道具を連結し、宿屋の建物に沿って強化が発動するよう設定する。おし、完了。
看板娘ちゃんに終了と使い方の説明だな。
「すみません、終わりました」
「は~い、おつかれさまです」
「使い方なんですけど、雪が降ってきたら3つそれぞれに魔力を流してください。後は1日1回魔力を補充してくれれば大丈夫です。特にそれ以外の操作はないですね」
「そうなんですか~。簡単でよかったです。ありがとうございました。えと、お茶でもいかがですか?」
「いえ、まだ回る場所が多いので。お気持ちだけいただいておきます」
「そうですか~。あの、頑張ってください!」
「はい、ありがとうございます。では、失礼します」
看板娘ちゃんと、ゴルドン似の少年に見送られて宿屋を出る。
「よし、リック。次に行こうか」
「了解っす。飛ばすっすよ」
「あ、蜂蜜クッキー食べる?」
「いただくっす!」
うん、蜂蜜クッキー美味いよね。
さて、応援も貰ったし、まだまだ頑張らないとね?




