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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第1章  自由貿易都市_氷龍飛来編
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農場

 オレは今農場に来ている。都市の周りに広がる農場の中でも端の方にあるここは、名義的にはオレの土地だ。オレはほとんど管理していないが。

 オレに気づいて近づいてきた年配の男性に声を掛ける。


「こんにちは、アンドリューさん」


「おお。コーサクさん。こんにちは」


「何か変わりありませんか?」


「育てているもんは、豆も含めて元気に育っとりますよ。うちのカカアもバカ息子どもも元気ですわ」


「そうですか。良かったです。エイドルは温室の中ですか?」


「ええ。いつも通り調べものをしとりますよ」


「分かりました。お仕事頑張ってください」


「ははは。もちろんですわ」


 アンドリューさんと別れて、農場の一角に建っている温室に向かう。

 2年前、アンドリューさん一家は詐欺に引っかかって、借金で首が回らなくなっていた。

 当時のオレは醤油と味噌の材料になる大豆に似た豆を育ててもらえる農家を探していて、アンドリューさんは農作業以外のことになると少しぬけているが、誠実で腕の良い農家だったので、豆を育ててもらうことを条件に借金を肩代わりして雇うことしたのだ。

 アンドリューさんは現在、元々育てていた野菜を作りつつ、追加で豆を作ってオレに金を返している。


 アンドリューさんの無知に付け込んで詐欺を働いた商会はすぐに潰れた。



 温室に入る。天井の半分がガラス張りになっている建物だ。オレの家より広い。

 ガラスはある蝶型の魔物の鱗粉を混ぜ込むとできる強化ガラスを使っている。かなり高額な買い物だった。

 中では明るい緑色の髪をした男が、何やらぶつぶつと呟きながら作業をしていた。


「ふむ、やはり……からは抽出……しかし……人での実験が必要……」


「エイドル」


 声を掛けてもこちらに気づかない。


「エイドル!」


「おおっと!これはこれは、コーサク殿。ご機嫌麗しゅう。いつからいたので?」


「たった今来たばかりだよ。勝手な人体実験は認めないぞ?」


「それはもちろん!さすがにここを追い出されたら行く宛てがありませんからな」


 エイドルは王国で路頭に迷っているところを拾った自称植物学者だ。お米を知っているかと思って接触した。貴族に雇われていたが、何かやらかして首になったらしい。今ではこの温室の管理を任せている。

 趣味は植物の生態を調べることと薬の作成だ。モラルが少し足りないが、知識と腕は本物だ。

 貴族を相手にしていたからか、大げさな言動が多い。


「何か問題はあった?」


「ふむ。温室内の植物の状態には特に問題はありませんな。果物と薬草も問題なく育ち、リューリック商会に販売できています。最近作った、農作物に影響の無い虫除け剤の売れ行きが良かったくらいですかな。新しい植物を購入しても?」


「了解。薬の利益は一部を納めてくれれば使い道は任せるよ。オレは手を出してないし」


「ふむ、ありがたい。とてもありがたいことですぞ!いやあ、余計な口と手を出してこないパトロンほど、この世にすばらしいものはありませんな!以前の雇い主とは大違いです」


 両手を広げて喜びを表現しながらエイドルが声を上げる。

 そりゃそうだろ。貴族なんて「お前のものはオレのもの。オレのものはオレのもの」って某Gな少年の言葉そのままの考えしてるからな。何も知らないのに干渉だけはしてくるぞ。


「そりゃ良かった。楽しそうでなによりだよ。今月分の帳簿もらえる?」


「ええ、こちらに。どうぞ」


 一応アンドリューさん一家とエイドルはオレが雇っているので、オレの収入と合わせて税金はオレが支払わなければならない。帳簿の管理は少し面倒だ。パソコンが欲しい。


「じゃあ、引き続きここの管理は頼んだ。果物はいくつかもらって行くよ」


「ええ、お任せあれ」


 家に帰って計算だ。

 特にオレはお米の情報を得るために結構な数の商会と取引をしているので、契約の件数の分、計算しなければならないものが多い。

 面倒だが、この都市は商人が中心になっているのもあって、税金の支払い抜けによる罰則はかなり厳しい。

 間違える訳にはいかない。


 その内、誰か雇うことも考えたいと思う。


 仕事が終わったら、息抜きにドライフルーツでも作ろう。お茶請けに、お菓子の材料に、旅のお供にと使い道は多い。特に嵩張らないので冒険者にあげると喜ばれる。子供達にも人気だ。

 できあがったらお裾分けに行きたいと思う。



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よろしければこちらもどうぞ! 『お米が食べたい』シリーズ作品

〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

〇ルヴィ視点の物語 : 『狩人ルヴィの故郷復興記』

シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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