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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第4章  帝国未踏域_悪龍討伐編
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閑話 狩人の奮闘

ルヴィ視点です。

 村を復興する。コーサクにはそう言ったが、やるべきことが山積みだ。


 まず、第一に人手が必要だ。さすがに俺一人では手が回らない。魔物に潰された家の建て直しに、畑作りにと、専門的な知識を持った人間がいる。


 村の復興に関して、狩人の俺に出来ることはそう多くない。これまでの反省をいかして、村の防衛を強化するくらいだ。

 周囲の魔物を狩っているだけでは、村の復興は進まない。


 そして、第二に、村への移住者が必要だ。いくら家を建てても、住む人間がいないとどうしようもない。

 できれば、移住を望む人間が専門的な知識を持っていればいいのだが、そうそう上手くはいかないだろう。


 第三は金だ。人を雇うにも、資材を買うにも金がかかる。畑ができるまでは、食べるものも買わなければならない。

 考えれば考えるほどに金は必要だ。


 第四は、知識か。俺には学がない。文字も簡単な単語を繋げられるくらいだ。これもどうにかする必要がある。


「先が長い……」


 実際困っている。今更になって、村長の苦労が身にしみて分かった。


「ふう、ギルドに行くか」


 とりあえず、今は冒険者として活動している。金を貯めるためと、伝手を作るためだ。引退間際の冒険者は、定住する場所を探していることも多い。

 だから、森での偵察役として顔を売りつつ、村へ来てくれそうな人を探している。


 今日も働きに行くとしよう。





 夕方。家へと向かって歩く。今日は収穫がほとんどなかった。潰れた村をこれから立て直すと聞いて、首を縦に振る人間はそういない。

 最後まで話を聞いてもらえただけでも良い方だ。


 溜息を吐きながら歩き、家に着いた。コーサクから譲ってもらった家だ。


 家に入り、軽く汚れを落とす。そして、足を進める先は台所だ。


 コーサクが俺にくれた物は3つ。1つはこの家。2つ目はいくつかの魔道具。そして、3つ目は、料理のレシピだ。


 魔道具は、村の復興作業や生活に必要な物だった。買うとなれば、それなりの値になる。実際に作業を始めれば、とても役に立つはずだ。


 料理のレシピは、あの村の料理の作り方を、コーサクが覚えている限り書いてくれたものだ。

 かつての懐かしい料理が並んでいる。


 そのレシピを読みながら、見よう見まねで夕食を作る。出来上がったものを味見するが、パルメさんやコーサクが作ったものとは程遠い味だ。


 レシピの文字を理解しきれていないのと、元々料理が得意ではないのが原因だと思う。


 その、ふた味ほど足りない料理を食べながら、これからのことを考える。


 コーサクは、そのうち家族を連れて村に顔を出すと言っていた。あいつのことだ。本当に来るつもりなのだろう。


 まだ子供は産まれていないとも言っていた。来るとすれば、ある程度子供が大きくなってから。数年は後のはずだ。


 それまでに、村を形にすることを目標にする。


 コーサクの前で宣言した通り、俺は村を復興する。そう決めて、夕食の残り一切れを口に放り込んだ。





 翌日も冒険者ギルドへ行くために家を出る。だが、その日はいつもと違った。


「……なんだ?」


 道端に誰か倒れている。小さく細い体。子供だろうか。服はそれなりに良いものに見える。


 うつ伏せなので顔は見えないが、狩人としての感覚が、生きていることを知らせてくる。


 少しだけ警戒しながら近づき、声を掛けた。病人だったら、治療院に連れて行かなければならない。


「おい、大丈夫か?」


「……た」


 小さく声がした。意識はあるようだ。膝を付いて、耳を澄ませる。


「おなか……すきました」


 ……少なくとも、病人ではないようだ。





 目の前に、俺の昼飯用のパンを頬張る行き倒れがいる。


「むぐ、むぐ」


 いつから食べていなかったのか、パンはあっという間に小さな口の中に消えていく。


「水、飲むか?」


「むぐ!む、ん。ありがとうございます!」


 ごぐごぐと音を立てて水筒の水を飲むその喉は、白く細い。


「ぷは、ありがとうございました。もう2日も何も食べてなくて」


 無防備に笑うその顔は小さい。髪は短く切り揃えられ、身に纏っているのは男物の服だ。


「ああー……一応、何で倒れていたか聞いてもいいか?」


 他でまた倒れられても困る。


「え~と、はい」


 その高い声が少し暗くなる。


「え、と。僕は帝都に働きに来たのですが、あの、着いたら働き先がなくなってて……」


「ああ」


 新しい皇帝になってから、不正を働いていた貴族や、大商人が次々と罰を受けるようになった。

 潰れた店も多い。働き先は、その内の1つだったのだろう。


 新しい皇帝によって、あの村周辺を治めていた領主も変わることになった。俺の復讐の相手はもういない。影響は大きいが、良いことではあるのだと思う。


「それで、その、住み込みで働かせてもらえるはずだったので、お金もあまり持ってなくてですね。宿も取れずに、空腹で倒れていたところを、貴方が助けてくれました。ありがとうございます。パン、美味しかったです」


「……どういたしまして」


 俺がパンを食わせたところで、問題は何も解決していないが……。


「これからどうするんだ?」


「え~と、とりあえず、雇ってもらえるところを探してみようと思います。これでも、読み書きは得意なのです」


 それだと、仕事先が見つかるまで何も食えないだろう。


 そのことを口にしようとしたとき、別の音が俺の声を遮った。


 くううぅぅ。


 目の前の人物が、バッと腹を押さえる。


「あ、あはは……」


 ……どうやら、パンだけでは足りなかったようだ。


 その姿に、コーサクのことを思い出した。あいつも、最初に会ったときは、急に腹を鳴らしたものだ。

 何だか急におかしくなった。笑いがこみ上げてくる。


「ぷ、はははは!」


 腹の底から笑ったのはいつ以来だろうか。


「ははは、はあ。そうだな。飯、おごってやるよ」


「はい?」


 不思議そうに首を傾げる姿に、更に言葉を重ねる。


「ちょうど、読み書きを教えてくれる人を探してたんだ。飯を食いながら、少し話を聞いてくれよ」


「え、あ、はい!」


 飯に釣られたのか、仕事の気配を感じたのか、元気の良い返事だ。


「ああ、俺はルヴィだ。よろしく」


「僕はエミリー……じゃなかった、エミリオです!よろしくお願いします!」


 エミリオを連れて飯屋に移動する。


 それにしても、華奢な身体、高い声、骨格と、どう見ても男のふりをする少女なのだが、指摘してもいいんだろうか。

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よろしければこちらもどうぞ! 『お米が食べたい』シリーズ作品

〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

〇ルヴィ視点の物語 : 『狩人ルヴィの故郷復興記』

シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
― 新着の感想 ―
[良い点] ルヴィー視点うれしい。 [気になる点] 閑話で前エピソードのその後の話しがあると主人公以外の世界観が広がって物語に深みがでて良いですね(^-^) ルヴィーのその後は気になるので、ぜひこれか…
[一言] 面白いよ! 頑張りすぎないように頑張って!
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