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異世界でもお米が食べたい  作者: 善鬼
第1章  自由貿易都市_氷龍飛来編
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赤い友人

 午前中でリードさんから追加で依頼のあった魔道具を作り終わり、甘いものが食べたくなったので、メタリックかぼちゃでカボチャプリンを作る最中のこと。


「あれ。雨降って来たな」


 初めはポツポツと降って来た雨が、数秒で土砂降りに変わった。どのくらい降るだろうか。天気予報が無いので不便だ。


 なんとなく、今日は来客がありそうな気がしたので夕食を多めに作ることにした。



 夕方、玄関のドアをノックする音がする。

 玄関を開けると、真っ赤な服と髪が特徴的な若い男が立っていた。友人で冒険者のレックスだ。


「いらっしゃい、レックス」


「……ああ。……悪い……邪魔する」


 ボソボソと俯きながらレックスが喋る。元気がなさそうだ。


「とりあえず、風呂入りなよ。飯もまだだよね?」


「……ああ。……まだ食ってない。……感謝する」


 レックスを風呂に送り出して、夕食を2人分並べる。

 レックスはオレの友人で、冒険者で、雨がとても苦手だ。



 風呂から上がったレックスと2人で夕食を食べる。

 今日のメニューは、自作の柔らかいパン、生姜入りのミートパイ、温野菜のサラダと鶏肉のシチューだ。


「……美味い」


「そう。よかった。この間は紅甲亀の討伐に行ってるって聞いたけど、どうだった?」


「……ただのでかい亀だった。……特に問題は無かった」


「その後は、何のクエスト受けてたんだ?」


「……ワイバーンが出たから、倒しに行ったが……」


「雨降って来たから帰って来た?」


「……そうだ」


 ワイバーンくらいレックスなら余裕だろうが、雨だと戦えないから一時撤退して来たようだ。


「とりあえず、雨が止むまでゆっくりしていきなよ。デザートにカボチャプリンもあるよ」


「……感謝する」


 夕食後にデザートのカボチャプリンを食べて、レックスと酒を飲みながら深夜まで話した。



 朝、窓から射す日で目が覚めた。雨は上がったらしい。昨日の酒が少しのこっている。口の中がパサパサだ。

 庭からは、鳥の声がうるさいくらいに聞こえる。


「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ」

「ギャーッギャーッ」

「はあっはぁー!」


 ……なんか変なの混じってる。


 顔を洗って庭に出ると、レックスが素振りをしていた。手には落ちていただろう小枝がある。レックスが小枝を降るたびに、空間が切れる音がした。


「ふはははははー!」


 超元気だ。昨日とは違い、レックスは赤い髪を逆立たせてとても元気そうだ。


「おはよう、レックス」


「おはよう、コーサク! 良い天気だな。昨日の飯は美味かったぜ」


「もう元気?」


「おお、もちろんだ。今の俺ならワイバーン程度一撃だ!行ってくる!」


「いってらっしゃーい」


 朝飯も食わず、風のような勢いでレックスが出て行った。あの様子なら大丈夫だろう。


 レックスは“斬”属性の精霊に愛された精霊使いだ。その最上級の親和性は、詠唱なしでの魔術の行使を可能にする。本気を出せばほとんど敵はいない。

 その反面なのかは知らないが、レックスは変わっている。自分の赤い髪をセットし、同じ色の服でバッチリと“決め”ないと、テンションが下がって戦えなくなる。

 かっこよくないと戦えないらしい。心理状態と戦闘能力が比例しているのは、精霊使いならではだろうか。


 ともあれ、レックスはこの世界でオレの一番の友人だ。


 オレの友人で、冒険者で、髪が濡れる雨が苦手で、オレが知る限り最強の人間だ。


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〇コーサクの過去編 : 『ある爆弾魔の放浪記』  

〇ルヴィ視点の物語 : 『狩人ルヴィの故郷復興記』

シリーズ外作品 〇短編 : 光闇の女神と男子高校生な勇者たち
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