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第9話 頼むから精神科だけはやめてくれぇぇぇ!

美人とブスでは、ここまで差別が激しいのかと、現在の日本社会を垣間見るようだった。

俺は、今萌乃と共に映画に行くべく、多少人通りの多い町に来ていた。

そんな人混みの中に入ったら暑苦しく無いかって?答えはノーだ。

現在の状況を簡単かつ明確に表すとしたら、萌乃が歩く、前にいる人が両サイドに寄る。

そのため、暑いというよりは風がそのまま直撃するため、とても寒い。萌乃も手にハァーっと息を吹き掛けている。萌乃の手になりたい。………俺変態過ぎるだろ。

萌乃があまりにも寒そうにしているので俺は自分の着ていた上着を脱いで渡した。


「ほら……貸してやるよ」


俺はこんな台詞を言うときが来るなんて四日前の俺は思っても見なかっただろうな。

俺はそういうと萌乃の背中に被せてあげた。

それと、同時に周りで見ていた人達が、汚物を近づけるな!だの天使が汚れてしまうー!だの罵倒していた。何でやねん!俺の上着とか最近使わなさ過ぎて押し入れの倉庫番しとったんやぞ!冷静に考えると汚いな。

一方萌乃はというと、スッと振り返って満面の笑みで言ってきた。


「ありがとう!」


ヤバい。俺風邪引いちゃったかな。すごく体が暑いぞ。頭もクラクラするしな、明日辺り病院に行くか。当然、精神科ですよ。

俺は、少し照れながらも返事をした。


「おお……」


何故だろう?さっきまで俺のことをディスっていた奴らが動くことなく固まって皆涙を瞳に浮かべているんだが。生きているのか心配になる。良い病院紹介しますよ!



そんな事もありながらも何とか映画館までたどり着いた。

映画館は町中にあるだけあって歴史をみじんも感じさせない造りだった。

建物の表面は黒色で中に入る扉がいくつか設置されている。まあ至って普通の映画館だ。



俺たちは映画館に入る前に入り口横に張られている今日の放映予定の映画をどれにするか決めていた。

うーんホラーはまず無いな。俺ビビりだから最悪意識と命持っていかれるかも知れないから却下と。えーっと恋愛物か……爆睡対象だな。却下と。アニメかー………目が痛くなりそうだから却下と。

俺映画基本的に見えなくね。

すると、先程から首をかしげながらうーんうーんと唸り声を上げて悩んでいた萌乃が一つの答えに絞ったらしい。俺的には、まあホラーじゃなければ良いかな。


「これにしよう!」


萌乃はホラーの『貴方と私』とかいう名前だけで泣きそうな映画をチョイスしてきた。

やっぱりな~なんかフラグ踏んだような気がしたんだよな。

しかし、ここはさすがに断ろう。萌乃の前で泣くのはアレだしな。

すると萌乃が俺に向かって上目遣いで言ってきた。


「ダメ?」


「良いよ!」


スマン無理。最近まで、非リアだった俺に何を求めているんだよ。最初から俺には選択肢が無かったんだな。

俺は、恐怖という中々に重たい物を背中に背負いながら、映画館のなぜか入り口が三つある扉をくぐった。


中は、外の暗さとは一変して床は、とても鮮やかな赤色をしており、壁なんかも黒を基調としてはいるものの、その暗さを逆に活かすような色付けが施されていた。

俺と萌乃は入り口入って左のチケット売り場に足を運んだ。

その間も周りの人の驚きの声は止まらない。俺に至っては存在すら認知されているのか微妙なくらいに皆萌乃に焦点が集中している。

そんな事を考えていると、チケット売り場のところまで来ていた。

俺!今ならまだ、引き返せる。さあ!言うんだ!俺ぇぇぇ!


「これで良いんだよね?」


「そうだな」


だから言っているだろ。俺なんかに期待をしないでくれ。

俺たちはチケットを取り終えると、すぐに放映らしいので会場に向かった。

チケットを受付の人に渡してから中に入るとそこは、さっきの明るさが嘘のように暗く前が道しか見えないくらいだった。

俺たちは階段を上り、一番後ろから二つ目の真ん中の席に着いた。

俺が、肘おきに肘を置くと、萌乃の肘に当たった。

そのためか、萌乃の顔が少し赤くなり、申し訳無さそうにしていた。

俺は、映画もヤバいがこの状況もかなりヤバいな。俺生きて帰れるだろうか。


そうこうしていると、部屋の暗さがさっきまでより暗くなり映画が始まった。

それと同時に萌乃がこっちに向いて小さな声で言ってきた。


「始まったね」


「ああそうだな」


確かに始まったな。俺の死へのカウントダウンが。

映画は最初ゆっくりなペースで話が進んでいく。

これなら俺何とかなるかもな。俺の中に安心が発生した。ホラー映画あるあるである。

俺が良かった良かった。と気を緩めていると、


『ギャーーーー』


ギャーーーーーー。何とか声に出さずに耐えきった。危うく神様とご対面するところだったぞ。

すると、俺の右腕に違和感を感じた。

俺は、さっきの映像がフラッシュバックしてとても怖かったため、恐る恐る見てみると・・・

萌乃が目をつぶって俺の腕にしがみついていた。ホラー映画最高じゃねぇか。



結局萌乃はクライマックスの間ずっと俺の腕にしがみついていた。

俺は、というと怖すぎて頑張って意識を飛ばそうと頑張ったが結局全部見てしまった。俺今日の夜一人でトイレ行けるかな……。


「怖かったねー」


萌乃が怖かったのか、まだ少し足が震えているにも関わらず言ってきた。

俺は、足というより全身が震えていながら返事をした。


「そうだな。俺もかなりビビった。それより、てっきり俺は萌乃はホラーが得意なのかと思ったんだがな」


「えっ全然得意じゃないよ」


じゃあ何でホラーにしたんだよ。荒手の嫌がらせだったら泣くところだぞ。


「じゃあ何でホラーにしたんだ?」


「それは………」


何か突然突然萌乃がもじもじし始めた。下を向いた顔を良く見ると顔がとても赤く染まっており、この暗闇でも分かってしまうほどだった。


「昨日………初めてのデートだから絶対成功させようと思ってネットで調べたら、男の人は皆ホラーが好きだって書いてあったから……斗真君も喜んでくれると思って………」


ヤバい。ホラー映画でHPのほとんどを削られた俺には強すぎる。

可愛すぎんだろー。心の中で山びこのように響き渡った。

つーか、そのネット通りにいうと俺はホラー嫌いだから、女性ということになるんだが………。

こういう事を言われたら、当然こう返すだろと言わんばかりのテンプレ的言葉を笑顔で言った。


「俺もホラー好きだからな」


嘘というのは付くためにあるのです。


「良かった~」


萌乃が安堵の息を吐きながら言った。かわいい~。

俺は、萌乃の可愛さに耐えられなくなり、話を進める。


「次はどこに行く?」


「次は………どうする?」


やばい!答えを求められたぞ。俺デートしたこと無いし昨日もこう言われたらこう返せと白夜先生に教わっただけだからな。


「・・・・・」


俺は、体の前に腕を組みながら悩んでいた。

すると、萌乃が俺が困っている事を気にしたのか言ってきた。


「ちょっと早いけど、お昼ご飯にしようか!」


そう言われて、チケット売り場の横にある時計を見て見ると12時を少し越したくらいのところを針が示していた。


「そうだな。そうするか」


「じゃあどこに行こうか?」


萌乃はそういうと俺の真似をするように体の前に腕を組みながら悩んでいた。

本日もうちの彼女は天使です。

俺がほのぼのと見ていると、決めたといわんばかりの笑顔を俺に向けて言ってきた。


「ここから少し離れているけどとてもおいしい和食店があるの。そこはどうかな?」


「良いな。そこにしよう!」


まず、俺には断る権利など存在しないのだからな。この言い方だと俺が地球外生命体みたいだな。

俺達はそのおいしい和食店目指して映画館を後にした。

俺が萌乃の横を歩いていると隣で歩く萌乃が俺の方を向いて言ってきた。


「手でも繋ぐ?」


「・・・・・」 


マジでかーーーーーーーーーーー!

おいおい。勝ち組演出が突然発生してきたよ!来る!くるぞーーーー!


「い、良いぞ」


「嘘だよー」


萌乃は、悪戯的な顔を浮かべながら言ってきた。

返せ!俺の喜びを返せ!男子高校生の純真無垢な心を弄びやがって!許せん!

すると、萌乃が顔を朱に染めながら言ってきた。


「……そういうことは……………もう少ししたら…………やっても………良いよ………」


やっぱり、可愛いから許す。

ブスだったら顔面に右ストレート入れてたかもな。



そんなこんなで本日二つ目の和食店に着いた。


さっきの映画館とは打って変わってとても歴史を感じさせる造りをしていた。

建物は木造建築で木の歴史を感じる程にまで焦げ茶色になっていた。

入口の前には長蛇の列があり、三十分待ちとかかれていた。


「どうしよう。かなり並んでいるね」


「そうだな」


この場所を選んだことに申し訳なさがあるのか、萌乃は下を向いていた。

こういう時、皆さんならどうしますか?


1他の場所を提案する


2黙って列に並ぶ


3帰る


4結婚を申し込む


どう考えても4はいらないだろ。

まあいつもの俺なら3を選ぶところだが!今日は天使を横に連れているので当然4と見せかけて2を選ぶでしょう。


答え2


俺は、黙って列に並んだ。

俺が並んでくれた事がよほど嬉しかったのか今年一番の笑顔で俺の横に並んだ。

今年一番って俺まだ出会って三日でしたわ。

時間が経つに連れて着々と人が進んでいき、とうとう俺達の番が回ってきた。

こうして、一番前に来てから後ろを見てみるとたくさんの人が並んでいて極度な優越感に浸れるんだよな。人がゴミのようだ!……………これ高いところに登って言わないと自分もゴミみたいだな……。


「次の方どうぞ!」


中々に爽やかな声が俺達の番を呼ぶ。

俺達は扉を開け、中に入った。

中は和食店と言うだけあってどの席も畳だった。

俺達は一番奥の座敷に連れていかれた。


「ご注文がお決まりになったらこのベルでお呼び下さい」


ベルて、完全に雰囲気がレストラン何だが………。

俺は、和風ハンバーグを選び、萌乃は和風焼肉定食を選んだ。つーかこの店のメニュー何でもかんでも和風ってついているような。



その後、俺達は一日中デートを満喫した。萌乃は、デート中終始笑顔だった。

俺が萌乃の家まで送ろうとしたが無残にも断られたため、途中まで送った。

その時には、もう日が暮れはじめており、オレンジ色の光がアスファルトの道を染めていた。この時間帯になると、風が少し強くなってきており肌寒さを感じる。

その中で、萌乃はクルッと振り返り俺に言ってきた。


「今日はありがとうね!すっごい楽しかった!」


萌乃の笑顔は、逆光のためかいつもより暗く沈んだ笑顔のように見えた。

しかし、俺は気にすることも無く言った。


「そうだな。今日は俺も楽しかった!」


俺も笑顔で答えた。


「じゃあね!斗真君!」


萌乃がもう一度クルッと回って家の方向へと足を進め始めた。

俺は、萌乃がクルッと回るときに一瞬だけ笑顔が消えたように思い違和感を感じていた。

萌乃が歩くと共に日は落ちていき、萌乃が見えなくなる頃には辺りは暗闇に包まれていた。



俺はこの時点で気づくべきだったのかも知れない。




彼女の笑顔の真実に…………。









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