第7話 頼むからクラスのみんなの前ではやめてくれぇぇぇ!
朝の陽ざしが窓を通り電気もついていない校舎の階段を照らす。
陽ざしが当たっているためか階段はほんのり温かみを感じる。
俺はいつもこの階段をまじまじと見ることなくかけていくからか今日階段をゆっくり上ってみるとここは聖なる階段なんじゃないかと目を疑ってしまう。そこら中にほこりがあり、階段の一段一段に入っている傷。この階段きたねぇな。すると仲間になったモンスターのごとく俺の後ろをついてきているマイプリティープリンセス萌乃が声をかけてきた。
「今日は昨日みたいに走らないんだね」
萌乃はそう言いながら口元に手を当てくすくす笑っていた。
まさか見られていただ……と……なんか恥ずかしいな。
平常心平常心俺は呪文のように頭の中で唱えた。
「まあ今日はいつもより時間に余裕があるからね」
すると萌乃が不思議そうな顔をして言ってきた。
「でも、あと十分しかないよ」
萌乃よ十分というのは「しか」じゃなくて「も」という表現の方が正解なんだぜ。
だって十分あればカップラーメン三つ作ることが出来るんだぞ。
俺と萌乃はコツコツと規則的なリズムを鳴らしながら六階までたどり着いた。
俺としてはいつも朝六階を階段ダッシュしているため六階を歩いて上るなんて赤子の手をひねるくらいに簡単なことだけど、萌乃は昨日上ったのが初めてで今日が二回目とは言えど六階を上るのはきつかったらしく息があがっていた。
萌乃の息が整うのを待ってから一緒に教室に入った。
「みんなおはよう」
俺がクラスメイト達に朝の挨拶をしたとたん俺はクラスメイトの北岡君に後ろから腕を拘束され黒板になぜか貼り付けられた十字架にガムテープで張り付けられた。当然抵抗はしたが北岡君は不覚にも柔道部なため帰宅部で春の身体検査で握力二十五キロという大記録をたたき出した俺にはどうすることもできなかった。
すると俺の前に北岡君とその他愉快な仲間たちが横に並んだ。
そして、真ん中の北岡君が代表して口を開いた。
「お前は俺たち非リアモテない連盟略してHMRの掟を覚えているか?」
結局正式名称を言うんなら略す必要無くね……。
そういや、このクラスになったときに白夜がもてまっくたためにそんな連盟に参加したようなしてないような。
しかし、あの連盟に掟なんてあったけな?
「あの連盟に掟なんてあったのか」
「昨日の放課後作った」
北岡君は平然とした顔で言ってきた。
昨日の放課後って俺いなかっただろうが。なんかしらないなぁとか思っていたけど知ってるわけが無かったわ。
「いや、俺昨日の放課後教室にいなかったし」
そういうと確かにという声が上がっていた。おいおいお前らバカすぎるだろ。
俺がいなかったという結論に至ったのか連盟の掟について言ってきた。
「一つ・・・神童さんの一メートル圏内には近寄ってはならない」
それはある意味遠目からみたら、いじめにも見えなくはないぞ。
「二つ・・・神童さんとは会話してはならない」
だから、なぜかいじめにも見えなくはないような気がするんだが。
「三つ・・・神童さんに握手などしていただいたときには一生手を洗ってはいけない」
きっつ……。
つーかその掟一つ目の掟破ってんじゃねぇか。
「以上だ」
少ない!掟少な過ぎるだろ普通最低でも十個はあるだろ掟って。しかも、どの掟も萌乃がらみじゃねぇか!
すると、北岡君が大きく息を吸って言ってきた。
「おぬしは第一条と第二条を見事なまでに破ったため判決は死刑!!」
ものすごいくだらないことで俺の命を奪おうとしているんだけど。
しかし、俺も『死因HMRの掟を破った』なんて、死に方は嫌なので抵抗した。
「俺はすでにその連盟を抜けているんだよ」
口でしか抵抗できない俺っていったい……。
「そんなのは関係ない」
うん。死のう。俺もうそのルートしかねぇわ。
すると、俺の横のドアがガラガラと開かれた。まっまさか正義のヒーローが俺を助けに来てくれたのか。
ドアから入ってきたのは額に大粒の汗をたくさんかいたクラスメイトの佐藤君だった。
佐藤君は息があがっており辛そうながらも話し始めた。
「はあ……はあ……北岡はあ……隣のクラスの奴によると坂神の奴朝神童さんと一緒に登校してきたうえに手まで握ったらしいですよはあ……」
正義のヒーローというのは現実には存在しないらしい。これからは絶対に信じないからな!
北岡君が驚いた顔をしながらこちらに振り向き言ってきた。
「判決を無期懲役にする」
こいつら死刑と無期懲役のどっちが重い刑罰か知らねぇんじゃねぇの。
俺が死を覚悟して人生を振り返っていると、一部始終を席に座ってどうしようかとおどおどしながら見ていた萌乃が席を立って俺の元まで来た。
それと同時にHMRの人々は萌乃に敬意を示すかのように土下座した。お前ら何の宗教団体だよ。
そして、萌乃が北岡君に向かって言った。
「あの……許してはもらえないんでしょうか?」
「はい。仰せのとおりに」
切り替え早い!早すぎて俺一瞬理解が遅れたわ。
そして、俺は勇者萌乃の手によって助けられた。なんか、ヒロインになった気分だな。………俺だせぇー。
朝からそんな災難にあったがその後俺を拘束したりなどの行動は一度もなかった。
・・・
・・・
・・・
四時間目が終わりご飯を食べ終えた俺はある女子生徒に呼び出され屋上にいた。
昼間の屋上は昼の陽ざしに当てられてとても暖かく夏かと錯覚してしまう。
その真ん中で俺は手紙を手にした女子生徒に頭を下げられていた。
そして、女子生徒は言った。
「この手紙を白夜君に渡してください!」
最近いいことずくめだったため一緒に橋渡しも無くなると信じていたがそんなことは決してなかった。
「あっはい」
一瞬にして暖かった空気は鳥肌が立つような寒い風に変わった気がした。
俺は、俺当てでもない手紙をもって自分の教室に戻った。
すると、教室には萌乃が少し機嫌悪そうにしていた。
萌乃が俺に気づいたのかこっちに向かって歩いてきた。
そして、萌乃が膨らました頬の空気を放出して言ってきた。
「さっき呼ばれて何していたの?」
何をしていたと言われても日課をしていたんだけどな。
俺は正直に答えた。
「白夜に渡す手紙を受け取っていたんだよ」
「ほ、本当にそれだけ?」
萌乃が少し怒り気味に言ってきた。
なんでこんなに起こっているんだ?俺としては突然の女子生徒からの誘いだったためにとうとう俺にも人生の中で三回は来ると言われるモテきがきたのかーーーとか一人で盛り上がっていたことが恥ずかしくて泣きそうなんだがな。
「ほんとにそれだけだって!」
「そう……なんだ」
萌乃はやっと落ち着いたようだ。しかし、萌乃が大きな声を出したためかクラスメイト達がすごくこちらを見ているんだが。痛い!視線が痛すぎる!
すると、萌乃がおどおどしながら言ってきた。
「何も……してないならさ……明日一緒にお出かけしてくれない?」
「え?」
クラスの男子生徒が椅子から立ち上がったり泣きさけんだりしていた。
……俺の命終わったな……。