第3話 頼むから先生を睨んでくれぇぇぇ!
学校とは生徒を育成することを目的に建てられた施設である。
だったら遅刻という概念は必要なのだろうか!
俺は今チャイムを背に聞きながら自分の教室へと続く階段を諦めず走っている。
チャイムのキーンコーンカーンコーンはあと1回しかない。
しかし、俺はあと階段を2階分登らなくてはならない。
無駄なんだよ!何で2年生が6階建ての6階何だよ!
もう終わったか………。
「諦めんじゃねぇぇぇ!」
そうだ良く聞くじゃないか。努力は報われるって。
俺は13段の階段を勢い良く駆け上がった。
やっやっと教室の扉が見えてきた。
俺は息を切らしながらもドアを横にスライドさせた。
「はーい坂神君遅刻ね」
努力が報われる人は特別な人らしい。
俺はクラスの人の視線を浴びながら窓際の1番後ろの席に着いた。
学校の中で唯一落ち着く場所のような気がする。
理由は隣の席は誰も居らず机と椅子だけが綺麗に置かれているからだ。
だからこそこの俺の席はいわゆるマイワールドという事だ。やばい厨二病発症してるわ。
すると前に立っている黒髪ロングの独身の我らが担任加藤先生が口を開いた。
「はーい今日は今から新しくみんなの仲間になる子を紹介しまーす」
ここは小学1年生の教室か!俺がそう思うくらいに加藤先生の喋り方が小学校の先生だった。
すると教卓の横のドアがそぉっと横に開かれた。
そして、ある1人の少女が入って来た。
俺はさっきまで机に腕をついてボォーっと眺めていたがその少女が入って来た瞬間に手から顔がずり落ちた。
そうその少女は長い金色の髪をたなびかせながら新雪のような白色をした肌の薄紫色の瞳は前をしっかりと見ていた。
「「天使が降臨しなすったー」」
クラスの男子が叫びはじめた。
ある奴は天に向かって両手を合わせている奴も居た。
すると教卓の前に立った美少女が口を開いた。
「私………神童萌乃………と言います……よっよろしくお願いします」
美人があんな喋り方をすると何かほのぼのした空気になるんだよな。でも、もしブスがあんな喋り方した時にはドロップキック入れちゃうかもな。
おい。良く周りを見たら男子の大半が目に涙を浮かべているんだが。
すると独身の担任がこいつは良いよなみたいな顔をしながら席を指定する。
「じゃじゃあ神童さんにはあそこの坂神君の横にいって貰えるかな」
「えっ」
先生がそう言った途端の男子からの死ねよと言わんばかりの視線が痛すぎる。俺今日からあの視線にずっと当てられるのかよ。俺のHP持つかな。
そんな事を頭を抱えて悩んでいると隣から話かけられた。
「これからよろしくね!」
やばいその笑顔は反則だろ。俺の理性と共に意識も連れて行かれそうだ。
「ああよっよろしく」
何だよお前ら何でそんなに俺を睨むんだよ。睨むなら俺じゃなくて担任をにらめ。
すると担任が舌打ちをしながら教室をあとにした。
それと同時に神童さんも教室から出ていった。
つらいつらすぎる。俺生きて帰れるんだろうか。
そんな事を考えていると爽やかな奴が爽やかなオーラと女子の視線を連れて俺に話しかけてきた。
「よう斗真朝から災難だな」
そうこの爽やかイケメンこそ風間白夜だ。
嫌味かそれ絶対嫌味だろ。親友とはいえど殺意が湧く時だってあるんだぞ。
俺はそう思いながら鋭い視線を白夜に送った。
「本当に災難過ぎて朝から体が異常に重く感じるよ」
すると白夜が爽やかに笑った。その途端後ろの女子達がキャーとかワーとか悲鳴に近い奇声をあげた。
何なんだよお前ら俺が笑ってもそうはならないだろ。顔か顔なのか。
俺はふと白夜への用事を思い出した。
「そうだ白夜。はいこれ」
俺は昨日渡された手紙を白夜に渡した。
すると白夜が小さくため息をついて言ってきた。
「だから斗真。渡されても断ってって言ったじゃん」
お前無茶振り過ぎんだよ。
俺あてでもない告白に俺がごめんなさいって言ったら変な感じを通り越して怖すぎるわ。
「お前無茶振り過ぎるだろ」
「それもそうだな」
また白夜は笑って答えた。
分かってんなら最初から言うなよ。
そうこうしている内に1時間目が始まった。
・・・
・・・
・・・
「やっと4時間目が終わったー」
俺はそう言いながら机に突っ伏した。
俺は今日いつもの倍疲れている。
理由は簡単だ。
男子連中から休み時間の度に神童さんの1キロ圏内には入るんじゃねえぞとか神童さんに話しかけた時お前の命は無いと思えよとか頭のおかしい連中から休み時間の度に聞かされたからだ。
すると今まで一切誰とも話していなかった神童さんが俺に話しかけてきた。
「あの放課後時間があったら屋上に来てくれませんか?」
「は?」
「大事な話があるので」
神童さんはもじもじしながら言ってきた。
放課後……屋上……大事な話……
俺がこの3つの単語で連想ゲームして次に出てくる言葉は一つだ。
橋渡しか……。
ふっもう俺は昔のように放課後に屋上という言葉でワクワクすることは無いのだ。そう俺は感情を無にするという高度テクニックを手に入れたからな。
・・・
・・・
そして、6時間めが終わり放課後になった。
俺は心の中で感情を無にしていると白夜が笑顔で話しかけてきた。
「どうしたんだ斗真?お前何でそんなに考え込んでいるんだ」
やあこんにちは今の俺の状態を作り出した元凶君。
俺は内心そう思いながらもそれなりに普通の返答をした。
「まあ色々あってな」
「そうかじゃあ帰ろうぜ」
お前そうかじゃねぇよ。考えてるって言ってんだろ。
「すまん今日は……えっ」
俺が白夜に断りを入れようとした瞬間俺の右腕が勢い良く引っ張られた。
「なっ何だ!!」
俺はとっさに右腕を見た。
そこには顔を赤く染めながら俺を睨んでいる神童さんが居た。
「はっ早く」
そう言って俺を勢いよく引っ張った。やめて関節外れる。
俺は教室を出ていく時に教室の中を見た。
男子達が見たことも無いような形相をしており何やら十字架の制作に取りかかっていた。
俺はその光景を見た瞬間死を覚悟した。
俺は気付けば屋上に続く階段を上っていた。
俺はとっさに掴まれていた腕を離した。
「なっ何するんだよ!」
すると顔を紅潮させた神童さんが弱気な感じで言ってきた。
「えっとなかなか来てくれないので忘れてしまったのかと思って」
うん。可愛い。
「あっいや忘れていた訳じゃなくて友達に一緒に帰れないと伝えていた所だったんだけど……」
重い。空気が凄く重い。
空気に耐えられなくなったチキンな俺は屋上の扉を開けた。
何回目だろう。この屋上に女子と2人きりになるのは。まあ俺本人には何の用も無い女子達だけどね。
俺は地面が少し夕日に照らされ白色の地盤が薄くオレンジに染まった屋上に出た。
それに続いて神童さんも屋上に出た。
それにともない神童さんの顔が異常に赤くなっていきもじもじしはじめた。何それめっちゃ可愛い。
「えっと……その……」
多分今手紙を俺に渡すのに戸惑っているのだろう。
ここはエスコートしてやるのが男ってもんだろ。
俺は良く分からぬ概念に基づきスっと手紙を受け取る手を出した。
それから少し時間が経った。
一向に俺の手の上に紙らしき感触を感じない。
俺はそぉっと神童さんの顔を見た。
神童さんは凄く戸惑ったような顔をしていた。それより神童さんの顔が真っ赤に染まってトマトかパプリカか悩ましい色になっていた。
俺は何か話しかけないとと思い話しかけた。
「えっと……手紙があるんですよね……」
「え……無いです……けど……」
えっ無いの!何俺に告白してその内容を白夜にそっくりそのまま伝えろとかいう難易度高めな事をさせようとしているの。
「えっじゃあどうするんですか?」
神童さんは凄く意味不明と言った感じの顔をしていた。
おかしい何かがおかしい。
何かズレているような……………。
すると神童さんが意を決したように言った。
「あなたの事が好きです!私と付き合ってください」
「えっ?」