第10話 頼むから視線で俺をいじめないでくれぇぇぇ!
秋は、夏と冬という真逆の季節の間の繋ぎの季節だ。まあ簡単に表せば、メインのあとすぐにデザートじゃなくて、間に何か欲しくね。って感じだ。………意味不明だなこれ。まあ、間に何かを挟みたいと言うことだな。うんうん。そうそう。
間の季節のためか秋は、九月や十月の最初くらいまでは夏よりの暖かさに包まれており、とても生活しやすい季節なのだが、十月序盤を過ぎれば日を重ねるごとに冬の冷たさが押し寄せてくる。
ちなみに今日は、十一月三日だ。
俺は、暖房器具達と辛い別れを交わしてから学校へ向かうべく歩き出した。
今日はとても寒く今年一番冷え込むらしい。
外に出ただけで、その寒さを感じ取れるくらいだ。
「寒っ」
もう、この寒さは秋ではなくて冬予備軍だろ。
しかし、俺にはしのごの言っている時間は無い。当然遅刻寸前ナウ。
俺は、寒さも吹っ飛ぶような走りを見せ、プロのスカウトにでも引っ掛から無いかな~と頭で考えるくらいだった。
俺は走りに走りかなり額に汗を流しながら、学校へ到着した。
「はあはあさっさあ階段だ」
ここからは精神との勝負である。
俺が死ぬのが先か、俺が教室に入るのが先か、さあ勝負だ。
ふっ俺の必殺技を見せてやる。
『ライジングダッシュ』
……………だっだせぇー。
俺は階段を駆け上がる。
あとちょっと………………到着!何だろうこのエベレストでも、登ったような感動は。
さあ教室に入ろう。
俺は白いろの俺より少し高めの扉を横にスライドした。
ガラガラ
「はーい坂神君遅刻ね~」
俺の扉を開けると同時に先生が緩い声で言ってきた。あんたは超能力者かよ。一瞬怖かったぞ。
俺は、今日もクラスメートの熱い視線を浴びながら席に着いた。
隣を見ると萌乃がニコニコしながら、
「おはよう!斗真君!」
やばい!可愛すぎる。
俺は、笑顔を返すようにして言った。
「おはよう!萌乃!」
俺の朝の挨拶に返ってきたのは、萌乃の可愛い笑顔と男子からの殺人予告の視線だった。後者全くいらねぇー。
・・・
・・・
・・・
そして、休み時間に男子から有り得ない程の笑顔で話し掛けられたりといろいろ有りながらも昼休み。
俺は、もう相棒と呼んでも良いくらいの愛する屋上に来ていた。
本日の告白相手は、後輩か、中々めんどくさいぞ。
今まで後輩が告白して、フラれたあと、絶対に俺のせいにして、すれ違う度に舌打ちやら何やらとされて来た。
やだな~後輩やだな~。
中々来ないな。
正直屋上は今冬よりの天気のため、風が吹き抜け非常に寒いのである。
屋上の地盤も太陽の日差しをずっと浴びていたはずなのにとても冷たい。
地盤よ、お前達は光合成するわけじゃ無いんだからせめて俺のために地盤を温めてくれ。
すると、ドアが勢い良く開いた。
バンッ
ビックリした~。突然そんな勢いで開くなよ。泣くところだったぞ。
スタスタという規則正しい足音を鳴らしながら、俺の元に近づいてくる。
その女子生徒は、艶のあるピンク色のショートカットで顔も小さい上にとても可愛いし、背も女子にしては高い。
一瞬モデルか何かですか?って敬語で喋ってしまいそうになる。
すると、女子生徒が俺と視線が合わないくらいに目が泳いでいる。
こういう時の対処法テクニック
その一・優しく「どうしたの?」って言う。(イケメン限定)
くそー俺は言ってはいけないらしい。
イケメン限定って全然対処法として使えないだろ。
すると、女子生徒が柔らかな感じで口を開いた。
「あの!告白………しても…良いですか?」
その上目遣いを使われても俺にするわけじゃ無いんだったら意味が無いんだが。
いや、まさかその上目遣いも俺が白夜にやらないといけないのか。男が男に上目遣いって想像しただけで病院行きたくなるな。
俺は安定なコミュ障ぷりを見せつけながら言った。
「あ……………ああ」
あなたはどこのコミュ障ですか?僕は、坂神斗真というコミュ障レベル10段階中の10の重症者です!
俺の自己紹介が終わったところで俺は、言った。
「で手紙は?」
俺が中々しなやかに言ったつもりが女子生徒はなぜかwhat?という顔を浮かべている。やめろその顔。何かいらつく。
すると、女子生徒が大きく口を開いた。もっと女子らしい口の開き方をしなさい!
「坂神先輩!私と付き合って下さい!」
オーマイゴッド……………。
「・・・は?」
えっえっ何言ってはるん?大丈夫この子?頭の方で。
「アノ、ナゼニオレナンデスカ?」
いきなりのこと過ぎて、頭が混乱してか言葉が宇宙人風になってしまった。
そのことをキモがることもなく、女子生徒はクスっと笑って見せた。
彼女の笑顔は、純粋で一瞬見とれてしまうほどだった。
すると、彼女は口を開いた。
「先輩がとてもやさしくしてくれたからです」
「えっ?」
俺には、この子との接点があるのか。
俺は、記憶をたどりにたどった。いや、無いな。だって、こんなに美人なら俺が頭の中で作っている『すれ違った美人名簿』に載っているはずだしな。………俺キモすぎるだろ………。
多少ひどいかと思ったが仕方がないので聞いてみた。
「君はいつ、俺に優しくしてもらったの?」
すると、案の錠彼女の顔は少し悲しそうになった。
「やっぱり覚えていませんよね………」
彼女のしゃべり方は、とても深い深海に沈んだような声だった。
やばい!この流れは、長年ギャルゲーをやってきた俺にはわかる。泣く流れだ。
泣かれるのだけは何としても避けたい。思い出せ~思い出せ~。
俺は、頭の中で痛いの痛いの飛んでイケー風なおまじないを唱えたが三歩前の記憶しか思い出せない。………俺の記憶力ニワトリかよ。
すると、女子生徒は暗い表情で俺との出会いについて、語り始めた。
「私と先輩の出会いは、私が街中でヤンキーたちに絡まれているところをカッコよく助けてくれたことです」
何を言っているんだこの子は。俺のIQ200ほしいと思っている頭では理解ができないんだが。
だって、俺は基本的に女だろうと男だろうとヤンキーに絡まれているのを見かけてもドンマイまあ頑張れ!と心の中で応援しながら、見つからないようにその場を逃げるような人間だぞ。………俺がくそ過ぎてやばい。
まあこういうときは俺の会話テクニックでうまく切り抜けよう。
「そんなことがあったんだ」
なんか、第三者みたいな反応みたいになってしまったんだが。
すると、彼女は笑顔を作り言ってきた。
「やっぱり先輩は、たくさんの人を助けているから。たかが一人のことなんて覚えてないんですね」
なぜだろう。すごくポジティブな解釈をされたんだが。
この状態だったら、「なんで生きてんの?」とか言ってもいいように変換してくれるんじゃないか。
まあ俺には、そんなことを言えるほど高いコミュ力はないがな。ドヤァ。……………悲しい。
すると、女子生徒は自分の右腕の腕時計を見るや否や焦ったように言ってきた。
「そろそろ昼休みも終わるので答えは放課後に聞きに行きます」
彼女は、笑顔でそういうとくるっと後ろを向いた。
「…………なんで、私がこんなことをしないといけないのよ………」
走り去る間際、よくは聞き取れなかったが彼女は、さっきよりも二オクターブくらい落とした声で何かをつぶやいたような気がした。
冬という何もかも枯れ、冷たくなる悲しい季節に俺は、モテキが到来する予感がして一人冷たくなる屋上で天を仰ぎながら、テンションをあげていた。
「………俺って美人にはモテるんじゃねぇの」




