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なろうテンプレが滅びる日

作者: 赤ポスト

 滝川末次郎 (69歳)は、年金生活をしていた。

 自由に使える時間が多いので、久しぶりに市の図書館を訪れた。



 すると。

 目に入ってきたのは見慣れぬ広告。


『本パソコンでは、「小説家になろう」をご覧になれます。お一人1時間までです』



 小説家になろう?

 聞いた事がない。

 それはなんだろうか?



 末次郎はパンフレットを読む。

 

 なになに。

 

 ・パソコンで様々な小説を無料で読めるサイトらしい。

 

 ほほー。

 なんだか面白そうじゃの。

 試しに見てみるかな。


 席に座ってパソコンを操作すると。

 画面に映るのは「ランキング」と書かれたページ。


 たくさんの小説が並んでいるようだ。

 しかし・・・

 どれを読めば良いのか。



 すると。

 目に入ったのは往年の名作ランキング。

 ※著作権期限が切れた作品


 そこを覗くと。


・坊ちゃん 夏目漱石

・痴人の愛 谷崎潤一郎

・羅生門  芥川龍之介

・点と線  松本清張


 往年の名作が並んでいた。

 昔読んだことがある小説だ。

 しかし、どんな小説だっただろうか?

 思い出せない。

 


 画面を見ると。

 「感想」というタブ。

 開いてみると、どうやら読者の感想がたくさん書かれている。



『さすが、名作。めっちゃ面白い』

『これが数十年前にかかれたなんて、信じられない。今読んでも面白い』 

『この一冊あれば十分。他はいらない』


 

 絶賛の嵐だ。

 皆がとても面白いと書いているので、多分面白いのだろう。

 

 

 それに、感想を読んでみると。

 ふむふむ。

 だいたい内容を思い出してきた。

 


 さっそく読んでみるかのう。

 ぱっと画面を開くと、かなり大きな文字で表示されている。



 助かった。

 最近は目が悪くなって、小さな文字を読むのがきつくなっていたのだ。






【読書中~】






 さっと読んでいると。

 

 ピコーン!


 ぎょ!

 ビックリした。

 いつのまにか1時間経っていたようだ。

 パソコンからアラームがなった。






 末次郎は家に帰り。

 家のパソコンで「小説家になろう」にアクセスした。















 それから末次郎は、「小説化になろう」で往年の名作を読み込んだ。

 ついつい嵌ってしまったのだ。

 作家事に全作品を読み。

 関連する作家の作品を読んでいった。

 

 そして感想を書いた。






 だがいつしか・・・

 自分の作品を書いてみたくなった。

 読んでいるだけでは満足できなくなったのだ。


『自分ならこの部分をこうしたい』

『こういうキャラをだしたい』

 と思ったのだ。

 

 それになにより。

 めぼしい作品は読んでしまったのだ。

 読みたい作品がないのであれば、自分で書くしかない。



 しかし・・・

 ここで一つ困った事があった。

 名作コーナーは面白かったのだが。

 他のランキングは意味が分からなかったのだ。



◇月間ランキング

1位『異世界転生~飯を食うだけで世界最強』

2位『悪役令嬢の恋』

3位『オーク転生~魔王になってチーレム無双』

4位『勇者ステータスMAXですが、何か?』

5位・・・・・・



 異世界?勇者?オーク?エルフ?

 なんじゃそれ?


 魔法?ステータス?ゲーム?

 なんぞそれ?


 乙女ゲー?悪役令嬢?チート?

 これは日本語か?




 いや、待てよ。

 確か・・・

 孫がそんなこといっておったかのう。

 乙女ゲームとか、ステータスが高いとか。

 でも・・・

 ワシはまったく分からんのじゃ。



 なら。

 自分で好きな小説でも書いてみるかのう。

 時間もあるし。

 


 やはり普通の小説、慣れ親しんだものが一番じゃ。

 この年になると新しいものは無理じゃ。

 おっくうで手がでん。



 




 カキカキ




 カキカキ














 1ヵ月後。


 

 おっ。

 作品を投稿してみたが。

 中々感想をもらえたようじゃ。



◇感想欄

『こういうのを読みたかった 70代男性』

『作者様はわたしと同じ年代かもしれませんね。 60代男性』

『やはり、普通の小説がいいです。 60代男性』


 よし。

 感想返しをしておこうかのう。


 この年になって、家でとじこもっておったので。

 新しい人と交流をとることは中々ないからのう。

 楽しいわい。























 3年後。

 某編集部。


 二人の社員が『小説家になろう』を見ていた。

 だがそこに・・・

 様変わりしていた。




「一体、どうしてこうなったんでしょうか?先輩。

 小説家なろう総合ランキングから、なろうテンプレが消えてしまっています。

 今じゃ、普通の一般小説ばかりですよ。数年前はあんなに人気だったのに・・・」


「それは当たり前だろう。

 時間に余裕のある方は、高齢者の方が多い。

 そもそも人口が多い。

 それに、読書が大きな娯楽だった世代だ。

 今の若者の様に、漫画やゲームやSNSなど、競合する娯楽が多いわけではない」


「はい・・・」


「なろうテンプレを求めるユーザーは世間ではごく一部。

 売れていた時でも、本の総合売り上げ上位は一般文芸だ。

 昔はなろうのユーザー層は20,30代が中心だったろうが。

 高齢者が入ってこれば、数で駆逐される。選挙の高齢者票みたいなもんだ。

 数も多いし、参加率も高いとなれば、強い!」 


「ほう・・・」


「それに加え、年をとると視力が落ち、体力も落ちる。

 出歩くのも億劫だし、小さい文字を読むのは苦痛だ。

 ネットの場合、家で読めるし、文字の大きさも自由に調整できる」


「なるほど」


「さらに、家にいても寂しいだろう。誰かとコミュニケーションをとりたいはずだ。

 そこで作品を発表して交流を図るんだ」


「ほーう」


「また、高齢者は資産を持っており、TVを見る人が多い。

 だから人気が出た原作は、テレビドラマ化や、商品化にする可能性が高い。

 皆、高齢者の財布を狙ってるんだ」


「さすが先輩、するどい分析です」


「内も、高齢者を狙ったレーベルに鞍替えするぞ!

 なろうテンプレは終わりだ!オワコンだ。売れるものを売る」


「はい先輩。これで成功間違いなしですね!」





  


 読者層が変われば、なろうも変わるのだー!

 色々ご都合主義ですので・・・SFエッセイその他かな。


 ◇以下の前提条件っぽい話です

 ・「小説家になろう」が全国の図書館に宣伝&提携。高齢者への告知運動のため。

 ・著作権切れの作品&権利者から無償閲覧を許可された作品を掲載。

  宣伝目的でシリーズの1巻公開も含む。(青空文庫の拡大版)


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― 新着の感想 ―
[一言] マジレスすると、なろうで小説を書いてる高齢者っぽい方は割といるようです。 ランキング入りしないから気づかないだけで。 また、youtubeで、どこぞのブログとかを勝手にコピペした、字が流れ…
[良い点] SFで投稿されても良かったんじゃ、と思います ガジェット足せばランキング上位取れそうですよね [一言] 実際のところ、老眼や白内障は若い人にはわからんレベルできついようで 新聞読み終わると…
[一言] 実際に高齢者が増えれば確かにこうなる可能性は高いと思います。 とはいえ、高齢世代とインターネットの、生活に付加買う関わる部分(特にSNSでのネットだけの付き合い等)での関係の弱さや、特に長く…
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