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ミナトとミサキ   作者: トマトケチャップ
第三章 日常
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第一話 プレゼント選び

 日曜日。時刻は1時。


 壁に体重を預け、盛大に湊は溜息を吐いた。待ち人がそろそろ来る頃だ。そう考えていた時、


「やあ、待った?」


 湊は声をかけて来た人物の方へ振り向いた。


「ああ。待った」

「もう、そこは今来たところだ。とかって言うのがお決まりじゃないの?」


 そこには安藤玲奈が立っていた。玲奈の横にはゆいもいる。


「それにしても、九条くんモテるのね」

「は?」


 急に玲奈が湊にそう呟いた。


「何言ってんだ?」

「だって君、いろんな女の子に見られてるじゃない。私とゆいが来る前に、声もかけられていたようだし」

「お前……、見てたのか?」

「偶々よ、偶々。私たちが湊くんを探してたら、ざわざわしてたところがあって、何かなって見たら、数人の女の子が君に話しかけてるのを目撃したのよ」


 湊は舌打ちしたい気分に晒された。玲奈にだけは女子に話しかけられている所を見られたくはなかったのだ。


 だからキツい言葉で追い払ったというのに台無しだ。いつもは鬱陶しいとは思うが、もう少し言葉に気を使うから、彼女たちには申し訳なさを感じた。


「そんなに話しかけられるのが嫌なら、学校にいる時のような格好すればいいじゃない」

「あんたらといる時に、そんな格好で学校のやつらに会ってみろ。火曜日に学校行ったらどうなるか想像しただけで寒気がするっての」


 こうして、玲奈とゆいといる人間が誰か分からないように、学校にいる時のような地味な学生とは打って変わった服装をしている。


 玲奈やゆいからしても、贔屓目なしに湊は美咲の男版のようなくらい顔が整っていて、とても美形だと思っている。そんな湊が服装に気をつけてお洒落しているのだ。そのお洒落の理由はどうあれ、女の子が湊に注目するのは分かる。


 ちなみに明日は海の日で学校は休みである。


「とにかく、さっさと済ませようぜ」


 早く、この視線から解放されたい。率直にそう思った。こういう女子からジロジロ見られるのは良くあることだが、別に慣れたという事ではない。


「そうね。じゃあ行きましょうか」







 どうして湊が玲奈たちと日曜日に一緒にいるのかというと、美咲へのプレゼントを買うためだ。


 今日は7月15日。そして美咲の誕生日が7月18日。


 生憎と今日は珀はいない。どうしても外せない用事があったらしい。湊がそのことを聞いた後に、じゃあ俺も、と言おうとしたが、


「湊くんは強制ね」


 そう玲奈に釘を刺され、仕方なく湊が玲奈たちの買い物に付き合っているのだ。


 あらかじめ何を買うのかは決めていたのか、玲奈とゆいはすぐに買い物を終わらした。


「さ、今度は湊くんの番ね」

「……俺も買うのか?」

「当たり前じゃない。そのために来させたんだから。まあ湊くんと珀くんも合わせた、4人で一つのプレゼントを買うっていうのも案にあったんだけど、それだと君、私たちに任せて考えようとしないでしょ? だから別に別に買おうかってなったのよ」


 確かに湊は4人で一つなら任せるだろう。さすがに2ヶ月近い付き合いをしているだけのことはある。よく湊の性格を分かっている。


「それにさ、考えてみて。君が選んだプレゼントで美咲が喜ぶのよ。……どう? 悪くないでしょ?」


 そう言われ、美咲が自分で選んだプレゼントで喜ぶ姿を想像する。


 確かに悪くない。


「……そうだな」


 仕方ない。なら、買おう。そうと決まれば早速物色だ。玲奈とゆいとは被らないような物がいいだろう。それでいて、どうせなら形に残る物がいい。


 と、なれば──


「あれにするか」


 目的の物がありそうな所へと歩き出す。


「もう決めたの?」


 湊の後を追いかけてきた玲奈が少し驚きながら聞いた。


「ああ。前にあいつ、欲しいとか言ってた物があったからな。それにする」

「へぇー」


 そんなことを言ってたんだな、というような顔をする玲奈。そういえば、その言葉を耳にした時は玲奈はいなかったな、と当時のことを思い出した。


「あ……」

「そ。たぶんゆいが思ってるやつと同じ」


 そう口にすると、湊はぴたっと止まる。目的地に着いたのだ。


「ここ?」

「たぶんここにあるだろ」


 そして湊は、ある店の中へと入っていった。


「ポーチ?」


 玲奈は湊が物色していた物を見て呟いた。そう。ポーチだ。


 数日前、美咲は今使っているポーチが擦り切れて、「新しいのを買わなくちゃねぇ」と呟いていたのだ。その場には湊とゆいしかいなかった。


 少し悩んだ挙句、湊は美咲にプレゼントするのなら一番しっくりくるものを手に取った。チャック式で、色は白。浮き出るように白い花が何枚も描かれている。


「お〜、いいんじゃない? 可愛いじゃん。うん、美咲に似合ってるよ」

「わたしもいいと思う」


 ゆいが可愛らしく、うんうんと首を縦に振っている。


 何となくこれがいいかな、と選んでみたのだが、二人からなかなかに高評価を得ることが出来た。


「決まりだな」


 少し驚いたのは、値段だ。物色して気付いたのだが、どれもこれも思っていたよりも値段が高かったのだ。ポーチの相場を湊が知らなかったので、この店にある物が平均的なものなのか、それとも少し高いのか分からなかった。


 実際は、この店が相場よりも高かったのだが、そこまで懐が痛まなかったので、そのことはすぐに頭から消えていったが。


 だが、玲奈とゆいはポーチの相場を知っていた。だから湊が選んだ品の値段を見て、少しギョッとしたのだが、そんなこと湊が知る由もない。


 それゆえに二人は湊に感心した。最初こそ、その店にあるポーチの値段に驚いていたが、いざ品を選ぶと、何の躊躇いもなく、ポイッとレジに、選んだポーチを置いたのだ。普通なら少し躊躇うと思うのだが……。少なくとも二人は少し逡巡したかもしれない。


「なかなかやるわね。さすが、隠れイケメン」

「うん。大人だね……」


 やはり、美咲が惚れただけの事はある。二人は改めて、湊の大人さ?に気付かされたのであった。






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