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ミナトとミサキ   作者: トマトケチャップ
第二章 遥かな高みへ
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第九話 噂の真実

「えっと……、九条くん。いったいこれはどういう状況……? なんで姫百合先輩が……?」


 目の前には高嶺の花の如き存在。姫百合美咲が立っている。


 何の説明もなしに連れて行かれて、連れて行かれていた場所に美咲がいたのだ。この反応は当然のこと。むしろ断然マシな方だ。


「何でって、これから帰るからに決まってるだろ」

「いやいやいや、え、おかしくない? 絶対おかしいよね? あー、そうか。僕の眼がおかしいんだ」


 ゴシゴシ。チラッ。


 ゴシゴシゴシ。チラッ。


「………」


 眼がおかしくない事に気付いた新庄は、愕然とした。


「おい、なにやってんだよ。帰るぞ」


 湊が何やってんだと、横目に新庄を見ながら呟いた。


「帰るぞ、じゃないでしょ! ちゃんとわたし達を紹介して! わたし何も聞いてないわよ?」

「当たり前だろ。言ってないんだから」

「そうやって揚げ足取らないで、ほら!」

「あー、めんどくせー。こっちは姫百合。こっちは新庄。以上」


 パシンッ!


「痛ぇな。……はぁ。こっちは俺のクラスメイトの新庄……、おい、お前下の名前なんて言うんだ?」

「えっ、名前知らないの? 友達なのに?」

「友達じゃねえよ。今日ちょっと関わりを持っただけだ。で、新庄。なんて言うんだ?」

「……ハク。新庄珀、です」

「ふーん……、珀くんか。なんだかカッコいい名前だね!」

「……悪かったな。俺はかっこ悪い名前で」

「えっ!?  別にそんな事言ってないよ!」

「お前、俺の名前聞いた時、何も言わなかっただろ」

「だってあの時は、そういう雰囲気じゃなかったじゃない」

「そんなこと知るか」


 そんな他愛もない会話をしていたが、新庄──珀が置いてけぼりにされているのに気が付いた。


 わざとらしく美咲は咳払いする。


「九条くん。新庄くんにわたしのこと紹介してよ」

「別にお前のこと紹介しなくても良いだろう。知らない奴なんていないんだし」

「ダメよ。そこはきちんとしなくちゃ」

「はぁ。……知ってると思うが、新庄。こっちは生徒会副会長を務めている二年生の姫百合美咲だ」

「姫百合美咲です。よろしくね。新庄くん」

「こ、こちらこそ!」


 美咲が笑顔で挨拶したことで、珀は頰を赤く染めた。目を合わせられずに目線をずらして挨拶を返す。


「もう挨拶は済んだな。じゃあ帰るぞ。今日もだいぶ遅くなったからな」

「うっ……、ごめん」

「いや、気にするな。それに間接的に新庄を助けた事にもなるからな」

「え?」


 これには新庄の方が驚きを露わにしている。美咲は頭上に?を付けているだけだ。


「俺はこの女が今日は遅くなるって聞いて、なら時間潰しにとお前に連いて行ったんだよ」

「そうだったんだ……」

「そんなこと言っちゃって。本当はわたしが遅くならなくとも連いて行ったくせに」

「あ?」

「もう一ヶ月キミといるんだよ? そのくらい分かるよ」

「一ヶ月も俺といるのに、俺のことなんも分かってないんだな」

「ううん。分かってる。キミが意外と優しいってことくらい」


 そう言われ、湊は美咲を見る。彼女は微笑んでいた。


「俺は優しくなんか……」


 ただ美咲は首を横に振るばかり。湊は堪らず頭を掻いた。


「そろそろ行くぞ」


 話はここまでと湊は二人に背中を見せ、歩き出す。


「さ、わたし達も行こうか」


 と、珀に向け言ったのだが、その珀は何かを考えているようであった。


「どうしたの……?」

「もしかして……」


 珀はあることを思い出していた。それは、


「あの噂は本当だったんですか……?」

「あの噂……?」

「体育祭の後くらいから話題になった、先輩に好きな人がいるっていう噂です」

「なっ……!」

「その好きな人っていうのが九条くん……」

「い、いや! あの……、その……!」


 頰を赤く染め、手をバタバタと振るが上手く紛らわす言葉が見つからず、口をパクパクさせるだけになった。


「そうなんですね……」


 その美咲の反応で確信を得た珀。さらに耳まで真っ赤にさせて、こくっと頷く美咲。


「……お似合いだと思いますよ」

「えっ……?」


 珀の言葉に面食らう。


「だって九条くん、カッコいいですから……。僕なんかよりもずっと……。先輩も九条くんに助けられたんですね。だから好きになったんだ」

「……うん。……でもそれは好きになった理由の一つかな……」


 湊の背中を優しく見つめる美咲。そしてそれを横目で見る珀。


「本当に好きなんですね」

「う、うん。まあ……ね」


 この一ヶ月で美咲は自分のこの気持ちが恋なんだと気付いた。いや、気付かされた。色々と相談したのだ。玲奈やゆいに。妹にまで聞いた。そしてその誰もが恋をしている時の症状だと言う。


 美咲はそれで理解した。これが恋なんだと。自分は湊に惚れているんだと。


「もう二人は付き合ってるんですか?」


 首を横に振る美咲。


「彼って鈍感だから……」


 ふふっと微笑む。


 と、そこへ。


「おい、早く来い!」


 湊が二人を呼ぶ。


「行きましょうか」

「はい……!」


 二人は駆け足で湊の下まで向かったのだった。

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