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ミナトとミサキ   作者: トマトケチャップ
第二章 遥かな高みへ
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第五話 体育祭の終了後

 結局あれから湊は自分のクラスに戻り、一人で色んなクラスの競技を大人しく観戦した。競技に参加することは無かったが。


 強制参加のやつがあるのではなかったか、そう思うかもしれない。湊も美咲から聞いていたからてっきりあるのかと思っていた。しかし、結局参加しなかった。サボったのではない。断じてない。湊の威信のためにこれだけは言っておく。では何故出なかったのか。理由は簡単。


 忘れられていたのである。


 まず競技に参加するためには、めんどくさいのだが、参加申込書という紙があり、その紙にはそれぞれのクラスの競技の名前が左端に書かれており、右側に名前を書く欄がある。そこに名前を書かなければ競技に参加できない。


 そして、ここで問題が生じたのだ。


 湊はそのことを説明された時寝ていて、放課後に名前を書くことになっていて、聞いていないものだから、とっとと教室を出て帰ってしまったのだ。で、クラスメイトはクラスメイトで湊のことを忘れていて、結局湊は名前を書かずに提出してしまったというわけだ。


(やっと終わったか……)


 閉会式も終わり、退屈だった時間は終わった。何時間もただ見るだけは暇で暇で仕方なかった。かと言って、屋上で寝るとまためんどくさいことになりそうだから行くわけにもいかなかった。だから、憂鬱だったが大人しく見ていたのだ。


 因みに、結果は見事に赤組が優勝である。まあこれはどうでもいいことだが。


(さて、帰るか)


 もうここに用はない。首をポキポキ鳴らしながら、湊が帰ろうとしていると、妙に人が集まっていることに気がついた。一体何の騒ぎだ、と思ってそこに目を向けると、その騒ぎの中心に美咲がいた。


(またなんかめんどくさいことに巻き込まれているのか、あいつは……)


 しかし、どうも様子がおかしい事に気付いた。美咲を囲っていた男どもが何故か、意気消沈しているのだ。その中には泣いている奴もいる。


 一体どうしたというのか?


 そう思って、しばらく凝視していると、ある事に気がついた。美咲に群がっている男どもは全員ハチマキを手に持っている。そして、一人がそのハチマキを美咲に渡そうとしていた。


(おいおい……、まさか……)


 湊は自分が持っているハチマキを見つめる。


「ま、そういうことね」


 突然後ろから声がした。聞き覚えのある声だ。後ろを向くと、やはり湊が思った通りの人物がいた。玲奈だ。横にはゆいもいる。


「……おい、こんな人が大勢いるところで俺のところに来るな……」


 湊は小声でそう告げる。


「いいじゃない別に」

「よくねーよ。誰かに見られたらどうすんだよ。問い詰められんだろ」

「私たちのことなんて誰も見てないわよ。男子はほとんど美咲の方見てるし、女子は呆れてさっさと帰ってるしね」

「それでもだ。用心に越したことないだろ」

「はあ……。ほんと面倒くさいなあ」


 玲奈は呆れたように溜息をこぼす。


「まあこれだけは言っておくわ。別に美咲はあなたを利用したんじゃないから」


 異性と自分のハチマキを交換する風習。そんな風習があるのなら、必ず体育祭が終わったらバカな男どもが自分に群がる。それで、それを防ぐには誰かに自分のハチマキをあらかじめ渡しておけばいい。誰でも思いつく方法だ。自分が美咲の立場でも必ずそうするだろう。だから別にそれを咎めようとは思わない。だが、利用していないとはどういうことか。


 美咲にはそういう意図がなかったから?


 ならどうして自分にハチマキを渡すのか、湊には分からなかった。


「おい、それはどういう意味だ……」


 そう問い掛けたのだが、


「じゃあ、迷惑がられてる私たちは帰るとします」

「おい! 待て……!」


 湊の制止を聞くことなく、この場を去っていく二人。


「なんなんだよ……、意味が分からん」


 湊は、男にハチマキを渡そうとされ、笑顔で断っている玲奈たちをしばらく見ていた。そしてそこに、湊とのハチマキを交換したのが功を成したのか、早々に男たちから抜け出した美咲が合流した。


 結局分からぬまま、湊はここに突っ立っていても仕方ないと首を振り、自分の教室へと戻るために歩き出した。

 

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