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ミナトとミサキ   作者: トマトケチャップ
第二章 遥かな高みへ
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第四話 ハチマキの交換

 いったいあれは何だったんだろう。


 湊は首を傾げながら掌に収まっている、ハチマキを見る。それは湊と美咲が屋上から出て、しばらくしてからだった。


『そ、そうだ! わたしのハチマキと九条くんのハチマキ交換してくれない?』


 さも今思い出したかのように、自分のハチマキと湊のハチマキを交換した。


 ハチマキを交換して何の意味があるんだ?


 そう思い、聞いてみたのだが、


『えっ!? べ、別に理由なんてないよ。うん。ただ、何となく、ね』


 と言っていたが、目が泳いでいたことを湊は見逃さなかった。何か理由があるのだろうが、追求はしないでおいた。まあ、理由ならすぐにわかることになるのだが。


 湊はやれやれ、と吐息をこぼして苦笑いする。


「まだ競技残ってるだろうに」


 運が良かったことに、湊と美咲のハチマキの色は同じで赤色だ。


 桜ヶ丘高校。ここの体育祭はハチマキを用意しなければならない。色は学年ごとに赤、黄、緑、白で分けられる。一学年、八クラスもあるため、二つのクラスが協力して、行う。もちろん、クラス別というのもあるが。


 湊のクラスは今年、赤色を獲得した。そして、美咲のクラスも同様、運がいいことに赤色を獲得したのだ。


「これ、誰かに見られたらまずいよな。名前書いてるし……」


 目立たないところに『姫百合美咲』と書いてある。


「まあ、いいか」


 極力ハチマキはポケットに入れておこう。


 それにしても、と頬に触れる。


「まだ少し熱いな」


 美咲に叩かれた場所には、未だにその時の熱が残っていた。これではまだ人前に出れそうにない。


 湊はもう遠くに行っている美咲の背中を見て、その後ろ姿にある少女を重ねる。


「なあ綾瀬。俺は彼女を護ることに決めたよ……」


 ここにはいない少女に自分の誓いを語る。必ずなんていう不確定な要素は使いたくないが、もう決して失わないように、今回だけは使わせてもらう。


 何があっても必ず護ると。


「なんて……」


 ふっと笑って首を振る。


「これも罪滅ぼしなのかもな……」


 これ以上考えるのは止めだ。そろそろ顔の熱も冷める頃だ。もうクラスのところに戻ってもいいだろう。競技をすることになるか分からないが、また美咲が呼びに来ても堪らない。今度は三人で来る可能性もある。


 湊は、美咲から貰ったハチマキをポケットに入れて、クラスの場所へと歩き出した。




⚫️




「九条くん、やっぱり屋上にいた?」


 美咲が自分のクラスに戻ると、すぐさま玲奈が聞いてきた。生憎と彼女は競技に出ていて、一緒に探しに行くことは出来なかったのである。それはゆいも同様。


「うん。やっぱりいた」


 ふふっ、と微笑みながら答えた。


「ほんと、すぐにさぼろうとするから困っちゃうよね」


 言葉とは裏腹に、心底楽しそうに喋る美咲。勿論、玲奈はその美咲の仕草や顔を見ていた。しかし、美咲を見ていたのは玲奈だけではない。美咲と同じクラスの男子、女子。そして、違うクラスではあるが、通り過ぎて行く生徒。


 その誰もがこう思った。


(((か、可愛い!!)))


 いつもの玲奈なら携帯で写真を撮るだろうが、今回は何か違った。ムスッとしている。


「なーんか、嫉妬しちゃうなー、九条くんに。そこまで美咲を笑顔にさせる彼に勝てる気がしないわ」

「い、いきなり何を言い出すのよ」

「もうさー、そんなに好きなら告白すれば?」

「なっ……、ほ、ほんとにどうしちゃったのよ。変よ、玲奈」


 急に訳のわからないことを玲奈が言い出して戸惑う美咲。玲奈からしたら、自分では美咲を今のような笑顔にさすことが出来ないと分かって、湊に羨ましいという気持ちが湧いたのだ。


「べっつにー。変じゃないわよ。そんなことより、そろそろ私たちの出番よ」

「あー、そうね。準備しなくちゃ」


 手に持っていたハチマキを額へ巻こうとする。


「あれっ? それ美咲のじゃないでしょ」

「ギクっ……、な、何のことかなあ〜」


 目を泳がし、惚ける。しかし、嘘だとバレバレである。


「ふーん、なるほどね。もう手は打ってあるんだー」

「だから……」

「はいはい、分かってるわよ。別に彼を利用したってわけじゃないんでしょ?」

「そうだけど……」

「まあでも、彼は利用されたと思うでしょうね」

「や、やっぱり?」

「そりゃーそうでしょう。彼って鈍感そうだし」

「ま、まあ、後で説明すれば大丈夫でしょう!!」


 これはただ、考えるのを放置しただけである。


「ささ、もうすぐ私たちの競技が始まっちゃうから行きましょ!」


 美咲は玲奈を引き連れて、近くにいたゆいも連れ、次の競技の控え場まで行くのだった。

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