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キミを待つ10分間。

作者: ウタコ

暑い日だ。


じわじわと照り付ける太陽熱の、突き刺すような紫外線を身に浴びて、私の頭の中は塗り忘れた日焼け止めのことでいっぱいだった。

時間は正午を少し過ぎたくらい。

せわしなくスマートフォンの画面の着けたり消したりを繰り返しながらときたま斜め横のバス乗り場をみやる、待ち合わせは12時21分。東京駅着の白い車体のバスだと聞いている。



トークアプリの返事は途切れている。


じかんまで後もう少しなのに、彼は寝てしまったのか。

起きてくれると良いけど。

二ヶ月振りに会う恋人の困った顔を思い浮かべて自然に小さなため息をついた。

会ったらまず一言目はなんと言おうか、久しぶり?なんだか違うな。

お疲れ様!これもちがう。

いらっしゃいませ、なんかズレてる。


口元はにやけている。

なんとなく分かっている、引き締めなければ、でも止まらない。



そんなことよりも服装は乱れてないだろうか?


寄りかかっていた柱から身を起こすとそのまま鏡面の柱を利用して身だしなみを確認する。

前髪に変な癖、これはもうどうしようもないな。

あ、スカートが右側だけちょっと高い、直そう。

そんなあたりでなにやら騒がしくなって入ってくる、一台の白いバス。

スマホはぴったり21分を指している、そして新しい通知。


『もうすぐ着きます!』



あわてて降り場前を見ればちょうど人ごみの中にひとつ頭の飛び出た人影が見える。

ちょっと長めの無造作な髪、眠そうな顔、少ない荷物、薄着のTシャツ。


彼だ。


彼がこっちを向く。

気付いて、そっと目線だけを合わせるとにっこりわらってこっちまでゆっくりと向かってくる、気付いた。

「おまたせ」

そういっておでこを人差し指で二回つつく。

彼の癖のいつもの挨拶。

本人は気付いてないんだろうな、私はにっこり笑っていつもどおりのちょっと生意気で可愛くない返事を返した。



「待たせすぎ、干物になるかと思ったんだから」


するりと絡ませた指はほんのりとひんやりしていた、でもだんだんと熱が灯る。

私の熱が移ったのか彼が暑くなってるのか。確かめる方法はないけどただぎゅっと、今はぎゅっとだけしていた。

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