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淡恋  作者: 縣.
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卒業式は無事終わり、卒業生は皆高校生最後のHRを迎える。

私たちの担任で、厳しくも優しい男の英語教師は、涙をこらえて

私たちの背中を押す力強い言葉をくれる。


「みんなは卒業したら離れ離れになる。

 でも、ここで過ごした3年間は離れることのない大事な宝物だ」


先生の頬に、涙が光る。

知らず知らず、クラスメイトにも同じ光が宿る。


なかなか進路が決まらず、職員室によく呼ばれたあの子も。

英語が大好きで、先生に気に入られていたあの子も。

授業中よく寝て、辞典で小突かれていたあの子も。


そして、私も。


それから、皆で高校生最後の集合写真を撮った。


今見ても分かるほど、私も、そしてユウヤも目が真っ赤で。

すごく泣いたんだな、ってすぐに分かる。


クラスに入るのが最後なので、私たちは皆思い思いに写真を撮りあった。


私が軽々しく会えるところにいないことが分かっているクラスメイトに、

写真に写って、とひっぱりだこになってしまった。


どさくさにまぎれて、ユウヤともツーショットを撮った。

今でも、私の宝物になっている写真。


後ろ髪を引かれる思いで校舎を出た。

3年間の思い出がぎゅっと詰まった校舎は古くボロいものだが、

今日だけは立派できれいにそびえ立つように見えた。


突然、前から声がした。


「先輩、今までありがとうございました!」


後輩たちが、私と、同い年の部活のメンバーを迎えてくれた。

手には、色とりどりの花と色紙が握られている。


私に色紙と花束を渡してくれたのは、部活で一番仲の良かったマイだった。

泣き虫だががんばり屋で、私も元気になるかわいい後輩だった。


マイの目は真っ赤で、私の前で卒業しないでください、と止まることなく

泣いていた。


私はマイに抱きつき、同じように涙を流した。


いい後輩に恵まれた、素晴らしい部活人生だった。

私はマイからの花束と色紙を手に、早足で家へ戻った。


私は、クラスの誰よりも先に家へ帰った。

まだはれが引かない目で、海外へ行くための準備にとりかかった。

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