表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡恋  作者: 縣.
1/5

あの日に戻りたい、という日はないだろうか。


あの人は、部活に打ち込んだ中学生のあの頃に。

あの人は、優しい彼氏と付き合っていたあの頃に。

あの人は、今は亡き人がまだ生きていたあの頃に。


私は、高校生最後のあの日に。


卒業式。

3年生が高校生活を終える日。


そして、私、花と彼が会える最後の日。


卒業生代表で、3年連続同じクラスの親友、雪が壇上へ上がり、

ずっと前から考え、練習してきた作文を読み上げる。


彼女の思い出と共に、私の思い出も浮かび上がってくる。


緊張し、うまく話せなかった私に優しく話しかけてくれた雪。

今は壇上で涙をこらえ作文を読んでいる。

高校生になって初めての校外学習で助けてくれたアキラ。

今は少し前のほうで黙って作文を聞いている。

2年生になって部活のキャプテンになったさつき。

今は隣の子に抱きついて泣きじゃくっている。


そして。

はじめての文化祭からずっと気になっていて。

文化祭の後夜祭でも。

修学旅行で2人きりになったときも。

今でさえも。


想いを伝えられなかった私の思い人ユウヤは。

私の隣で小さく寝息を立てて寝ていた。


彼を見るのをやめ、壇上の雪を見る。

綺麗な黒髪は後ろで団子状にまとまり、名前のとおり白い肌には

隠しきれない涙がそっと伝っていた。


知らず知らずのうちに、私の顔にも涙がつたう。


ユウヤが行くから、と私も苦手な理系を選択した。

もちろん勉強は日に日に分からなくなり、テストは赤点ギリギリばかり。


でも。

ユウヤが笑って。

バカだな、って言うのが嬉しくて。


それがなくなるのが、怖い。

ずっと、このまま。

このまま、高校生のままでいたい。


他人と違わずとも同じでない涙が、頬を撫でる。


花は、卒業したら海外の芸術大学に。

ユウヤは、地元では割と名の通る理系大学へ。


絶縁状態になっちゃうんだ、わたしたち。

そう考えるのは、今だけじゃない。


私に勇気があったら。

もしかしたら。


胸に想いを封じ込める。

雪は、壇上から涙をこらえずに戻ってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ