村娘Cの苦悩
ある村に人々と魔族の国交回復を願い奔走した男と男を師と仰ぐ娘がいた。
魔族と人間の対立。互いが啀み合い、些細なことで争い、長年積み重ねた負の数々。
二つの異なる種族が手を取り合うことなど、叶わぬ未来であると誰もが口にしたが、男の願いは多くのものを引き換えにして叶った。たとえば、男は死を。娘は自身が歩む筈だった生を贄として。
男の死後、娘はユエ・リュカスと名を改めた。
ひっそりと名も無き村娘Cのように生きることを選択したのである。
しかし、それから数年後────。
ユエを含めた4名の村娘は村と国で交わされた約束事により村を離れ王の元で5年間働くことを命じられる。
行き先は王都、ディレット。
少女たちの過去を知る人々はみな躊躇いの色を見せたが、意外にも彼女たちは恭順の意を見せた。ユエ・リュカスさえも。
ただ、彼女たちにとって国はどうでも良かった。
全ては自分の為にと彼女たちはそれぞれ口にする。
冒険者兼従者として水帝リヴと契約を交わした4人はどんな仕事も引き受けるつもりであったが………。
リヴの配慮により、王都直営の学園を卒業するまでは依頼として小さな仕事を受けつつ、一般市民兼学生としてとして生活することに。
とはいえど王都で生活することになれば嫌でも面倒事()に関わるのがお約束というもの。
悪辣貴族共に利用されるのは御免だ、どんな手を使ってでも三人に手出しはさせない。そう決意したユエを嘲笑うかのように皇族や魔族、勇者が次々と現れて─────。
ああ、師匠(せんせい)、今日もこの国は平和です。先生のいない世界は
これは死に損ないの村娘Cと3人の少女たち(ワケありむすめ)をめぐる物語。