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ククク。ヤツは四天王の中では最弱……。  作者: 鴉野 兄貴
ククク。ヤツこそは四天王が一角。『水のウンディーネ』
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大将は一番前に立つ人です

 こわい。


「報告! 勇者率いる軍団がバルラーン絶対防衛圏を突破! 今尚進撃中!」


 怖い。


「負傷者多数! 防衛隊はほぼ全滅!」

「押さえ切れません。魔都に攻めてきます」


 怖い怖い。怖いよ。たっちぃ。


「女子供は魔都の中へ! 魔王様の安全を確保せよッ! 男は全員討って出ろッ!」


 でも、もっと怖い事があるの。


「第四軍団残存部隊は一般人の保護を。済まぬが一時的に指揮を任せてくれ。我ら第一軍団は私に続けッ!!!!!」


 串刺しにされた小さな子。

 目を背けたくなるほど酷いことをされた女の人。

 次々襲い掛かる『正義の味方』の人間軍。


「我が名は水魔将・『みずのウンでーネッ!』 われに続けッ!」

「うおおッッ!!」「水魔将様に遅れるな!」「反撃せよ」


 陸魚の戦車の手綱を引き、皆さんの前を駆け抜けます。


 御者を務める副官のニンフさん。

 ぼそっとつぶやかれました。


「何度も何度も申していますが。ウンディーネ様。でーってなんですか」


 鋭い指摘を入れてきました。今はそれどころではないでしょう。


(作者註訳:年配の鳥取県民はじゃじぃじゅじぇじょなどが発音できない)


 私の姿を確認した人間の兵士たちが一斉に襲い掛かってきます。魔将は常に最前線。それは魔族の掟です。


「ウンディーネが出てきたぞッ!」

「殺せッ! ヤツの首を勇者様に捧げろ!」


~ ひゅー。こわいこわい ~


「子供といえども容赦するなっ!」


 ぶち。


「だれが」


 いけないいけない。冷静に冷静に。


「子供? ……ですか?」


~ 胸と背丈。あと顔が完璧に子供。思いっきり変態好み。良かったなぁ。由紀子 ~


 ……たっちぃ?


「皆ッ?! 下がれッ!! ウンディーネ様の『魔法』が来るぞッ!」


「私は、はたちの立派な大人ですっ!」


 私は魔法の力を解き放ちます。


『水魔法・おーたーかったー!!』


 また水が出ません。


「コホン。ウォーターカッターです。ウンディーネ様」


 無視です。無視?!


 ノーム様曰く『呆れるほど魔法の才能がない』だそうですが。


「ぐああ?!」

「うおうぅっ?!」


 振り回した足を受けた人間軍の方々が吹き飛びました。結果よければ全てよし。


「水魔法・大海嘯だいかいしょう


 腕を思いっきり上に突き上げると、立派な格好をした人間軍の人が天に吹っ飛んでいきます。ひょっとしたら王族だったかもしれません。


 それより。また、水が出ません。


「チビだからと油断するなッ! 捕らえて犯せッ! 殺せッ!」


 ……。

 今。ちびとおっしゃいましたね。そして穢れ無き乙女になんたる蛮行をするつもりですか。


「退避退避っ?! 水魔将様がお怒りだぁ!」


 すうと息を吸って落ち着いて。


「貴様らそれでも男かァァ!!? この獣どもめッ! 矯正してやるッ!」


 なんでも勇者召喚されるととんでもない身体能力がつくといいますが。

 私の場合たっちぃのお陰で。


~ あんまりパワー全開でやられると力を貸すこっちが辛いんですけどぉ。まぁ思いっきり暴れたからスッキリかな ~


 通常の勇者さんたちの二倍だそうです。ニ倍。

 乙女なのに怪力。複雑な思ひが止められません。


 ~ ところで、勇者って月光仮面か? それともアラーの使者か? ハリマオ? てか、蹴り一発で人間が沢山ぶっ飛ぶって、勇者じゃなくて鬼とか化けモノじゃね? ~


 追い討ちをかけるな。たっちぃ。

 あと、たぶんナショナルキッドに近いんじゃない?


 気がつくと、人間軍の皆さんが撤退しておりました。


「流石です。ウンディーネ様」


 ぱちぱちと手を叩いてくださるニンフ。


 うううううう。


「これ、絶対お嫁にいけない」

「今更何を」


 虫の息の人間軍の皆さんを見てニンフさんが鋭い指摘をくれました。

 穴に入りたいです。肩をすくめてほほ笑んでくれるニンフさん。

 自然と笑みが戻ってきました。ありがとう。ニンフさん。

 でもまだお仕事が残っているので気も顔も引き締めて。


「敵全員。捕らえて契約祈祷で婦女や子供への暴力暴行を禁止。絶対防衛圏の再構築を担当させよ」

「了解」


「水、食事は可能な限りちゃんと与えるように。最低でも休憩は入れさせろ」「仰せのままに」


「食事が物資不足で与えられない場合、休憩時間は三倍とせよ」

「わかりました」


 皆さんが私を見ています。

 うううううううううううう。やりたくないのに。

 腕を振り上げます。皆さんがそれに応じてくれました。


「我ら、魔王様の御身を護るため!!」

「我ら、魔王様の御身を護るため!!」

「我ら、魔王様の御身を護るため!!」


「魔王さま万歳!」「ウンディーネ様万歳ッ!」


 口々に魔王様と私を讃える皆さんを右手で制し、そして作り笑い。


「酒を持てッ! 今宵は飲み明かせッ!」

「おおおおおおおっ!!」


「今宵、魔王の民も人の子も無いっ! 階級もだッ! 無礼講と心得よッ!」


「流石ウンディーネ様だっ!」

「我らのウンディーネ様は一味違うッ!」

「ドワーフどもッ! 酒だ酒だッ!」

「人間どもは調子乗りすぎっ!」「いいじゃん!」


「ヒャッハー。捕まって良かったぜッ! 酒は美味いし姉ちゃんは綺麗ッ!」

「調子に乗りやがって人間めッ! 今日は足腰立たなくなるまで飲ませてやるッ!」


 はぁ。


 そしてお酒の呑めない私は、ニンフさんたちや精霊さんたちと見回りに行くのです。

 中間管理職は辛いのです。


~ いいなぁ。俺も酒のんでみたい ~


 たっちぃ。不良になりますよ。


~ 不良だも~ん ~


 もう。暢気なんだから。

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