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ククク。ヤツは四天王の中では最弱……。  作者: 鴉野 兄貴
エピソード でろ(ゼロ) 大いなる『土』のように抱きしめて
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『水のウンディーネ』。来訪

「ふふ。楽しんでいるわね」


 この水音と足音は私の知る女性です。子供たちやウサギさんたちが一斉に立ち上がって挨拶します。勿論私も。


「こんにちは。『水のうんでーね』さんッ」

「ウンディーネ。よ。由紀子さん」


 そうでした。でも上手く発音できないんです。そういって笑う私に彼女も微笑んでくれました。



 こんにちは。私の名前は『西尾(にしお) 由紀子(ゆきこ)』と申します。

 鳥取県立由良育英高校二年。女子一番。別に身長が低いから。ではありません。ホントですよ? ちょっと。低いかも知れませんけど。ええ。


 ある日、親友の武田彰子。

 たっちぃと神社で遊んでいたところ、古井戸に落ち、気がついたら御伽の国にいました。いわゆる神隠しです。

 由良に帰れずに困っている私を保護してくれたのは『まおーぐん』は『土のノーム』さんです。

 なんでも将軍さんらしくてすごく偉い人らしいのです。彼は私を自分の娘だということにして、この砦に居候することを許してくれました。

 鳥取に戻る方法が見つかるまでお世話してくれるとおっしゃる彼に感謝のあまり涙が出ました。いい人って何処の国にもいらっしゃるんですね。



「ええと、『土のノーム』様に用ですか」

「『あいつ』には用は無いけど」


 そういって彼女はまた綺麗な花を持ってきてくださいました。


「『娘』には用があるかなぁ」

「ううう。やめてください」


 私のとおちゃんは一人だけなのです。ノームさんには悪いのですが。これは事実なのです。

 そういいかけた私に襲い掛かるように彼女は抱き付いてきました。


「由紀子ちゃん。元気にしてたっ?!」

「きゃっ」


 じゃれあう私たちに反し、何故か私とうんでーねさんを遠巻きに眺めているみんな。もっと近づいてきてくださって大丈夫なのですが将軍さん相手だからご遠慮されているのでしょうか。

 ひとしきりはしゃぎ合った私たちは服の埃をはたき、あるいは『うんでーね』さんの魔法で綺麗にします。


「由紀子。また遊びましょうか」

「将棋はこの間負けちゃいましたね」


 駒を作ることから始まった遊びですが、今では『うんでーね』さんのほうが強いのです。


「『イゴ』はまだ負けるけどね」

「これだけは負けるわけには」


「明日には勝つわよ♪」


 そういって、彼女は私の髪にまた触れます。


「ふふ。いい手触り」

「もう。触らないでください」


 けたけたと笑う私達をみんなは遠巻きに眺めています。


「由紀子ちゃんの髪に触れていると帰ってきたなあって思っちゃう」

「こっちはいい迷惑ですけどね」


「あら。嬉しそうに見えるけど?」


 彼女は時々ふらっと消えて、しばらく帰ってきません。


「もっと、近くで遊びましょう」


 他のみなさんを誘ってみるのですが。


「い、いえ、魔将様の邪魔は」

「いえいえ。由紀子さま」


うんでーねさんは優しい人なのに。


 『人』といいましたが、彼女はちょっと不思議な人です。水で身体が出来ているそうです。不思議ですよね。それから。すっごく美人ッ! カッコイイです。


「ノームに娘がいたなんて言うからビックリしたわよ」

「そうですか。普通ですよ」


 私がそういうと彼女は謎めいた笑みを浮かべます。ちょっと解りませんが。


「もうちょっとしたらノームに用があるの。悪いけど由紀子は」

「わかりました」


 このときの私は『四天王』と呼ばれる魔将四名の仲が最悪であることなど。思いもよりませんでした。

 それどころか、今が戦時体制中であり、『勇者軍』と激しく戦っている最中で、この瞬間にも多くの将兵が戦場で散っている事実も存じておりませんでした。


 私は。義父であるノームが言うところの『子供』だったのです。

 ノーム自身は私を『子供』のままでいて欲しいと願ったのですが。運命はそれを許してくれませんでした。


 ですが、この時点の私は、ノームやウンディーネさん。ガイアさんが血の中から拾ってきた花に包まれてそれなりに楽しい日々を送っていたのです。


 『知らない』って。罪ですよね。

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