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ククク。ヤツは四天王の中では最弱……。  作者: 鴉野 兄貴
ククク。貴様が勇者ヒサシか……
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あなたは何者ですか

「調印式に魔王は出ず、出てきたのは『水のウンディーネ』のみか」

「勝者はこちらだ。私が代理人を勤める事に不満があるのな」


~ うーん。由紀子。舌噛むな。もっと堂々と ~


 うっさい。たっちぃ。魔族の未来がかかっているのです。緊張もします。

 私と『子供達』のみで、私は調印の場にいます。なんでもサラマンダーさんやシルフィードさんはまどろっこしい交渉は苦手だそうです。

 魔王様に関しては「お前に一任する」との一言だけでした。

 失敗は絶対に許されません。



 各国の王様や貴族の生き残りと『神聖皇帝』がいます。

 と、いっても彼らの多くは略奪に参加したので生き残っているほうが珍しかったりします。


~ うわ。趣味悪い仮面 ~


 ぷ。言わないの。もう。たっちぃ。

 神聖皇帝さんの金色に輝く仮面を見たたっちぃが余計なことを言います。


 黄金バットにちょっと似ているよね。


~ ああ! 似とる似とる! そっくりじゃ ~


 すこし、緊張がほぐれました。親友よ。ありがとう。


「久さ……タケダ王は何処だ」

「連日の不貞魔族の目に余る行動の対処で彼は体調を崩したようでね」


 普通はこういうこと、負けた側は言わないのですが。この皇帝さん中々の胆力ですね。


「時間が惜しい。甲案と乙案を持ってきた」


 甲案は人間に優しい内容になっています。これを受けてもらって和平交渉を開始します。

 乙案はサラマンダーさんとシルフィードさんや他の過激な魔族の皆さんの意見を集約したものです。


「ふむ」


 神聖皇帝は二つの書類に目を通し。


「なんと残虐非道な案。これは徹底抗戦しかないな」


 甲案を破り捨てました。

 え。


~ あれ? 破る紙違うぞ ~


「魔族の要求はこうだ。諸君」


 我ら諸侯、王族、神聖皇帝。勇者ヒサシを人質にし、毎年100名の処女を生贄に要求。

 今回の戦役の参加者は魔族の奴隷、もしくは魔力補給用の『血袋』として従事し、『魔都』の復興に当てると。

 恐怖と憎悪の視線。飛び交う非難と悲嘆の声は怒号となって私達を包みます。


「ち、ちがう」


 思わず破り捨てられた甲案に飛びついた私は「こっちを見てくれっ! 君たちに悪いようにしないっ!」と叫んでいました。


「奴隷になんかしないっ! 確かにヒサシを迎え入れるが、それは賓客としてだっ!

『血袋』もあらゆる快楽を目的とした拷問も禁止する! 捕虜や戦役参加者は速やかに故郷に帰っていただくし、負傷者の治療も行うッ! 其の上で魔都に残り、復興作業に当たってくれるものがいるなら多額の給料を支払う手続きも済んでいるッ! 信じてくれッ」


 しかし、誰も私の言葉を信じてくれません。


「嘘だ」「悪魔の女のいうことだ」「恐ろしい」「もう終わりだッ 俺たちは帰れないんだッ 」

「略奪に参加できなくて良かったと思ったらこんな終わりとは」「おかあちゃん。オラ帰れねぇ」


 パニックを起こした群衆を鎮圧しようと攻撃魔法を使おうとする魔族の兵たち。いけない。


「『眠りの雲』『気絶の雲』以外の術の使用を禁止するッ!」


 間一髪。電撃は食い止めましたが。


「ぎゃあああぁっ! テッドが殺されたぁ!」


 死、死んでいません。寝ているだけです。


「見たか、魔族は無抵抗な民に即死魔法を使ったぞ」

「つ、使っていないッ!」


 『神聖皇帝』さんに掴みかかる私を、他の諸侯さんは脅えながら見ています。


「この悪魔めッ!」「悪魔だっ!」「魔女だっ」「十六万の軍を焼き払った」

「落ち着けッ 『眠りの雲』は無害だッ」


 『子供達』が私の周りを取り囲みます。


「へ? 皆どうしたの?」

「ウンディーネ様を御守りするよう、魔王様より」


「我らは、終わりだ。だが私は、私の心は魔族に屈さない」


 大仰な声で群集を煽る『神聖皇帝』の襟首を掴みます。


「黙れッ! 何を言っているッ!」


「魔族が滅ぶか、人間が滅ぶか。世界が滅ぶか」


 そう。小さく仮面の奥でその人は笑いました。確かに嗤いました。


「悪魔めッ」「もはや死ぬしかないのかッ」「悪魔めッ」「おがあちゃん怖ぃ」「もう、夢も希望もない」「人間は滅ぶのかっ」「もうダメだ」「うああああ」


 絶望の声をあげる皆さんの中を『子供達』が先導し、私を引き摺ろうとします。


「あ。あなたは。何者ですか」


 辛うじて。其の言葉を放てました。


「ウンディーネ様。危険です。ここは引きましょう」


 ぐいぐいと私の『水の羽衣』を引く『子供達』の少女を無視して私はその人を睨みつけます。


「あなたは、何者なのですか。人間の指導者では。ないのですか。和平を。平和を望まないのですか」

「魔族と和平? それだけはありえぬ」


 怒号の中、私の意識と言葉はその人との会話に集中していました。


「私は、魔族の殲滅を願う。そのためには人間が全滅しても。かまわない」

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