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ククク。ヤツは四天王の中では最弱……。  作者: 鴉野 兄貴
ククク。四天王の力の一端。見たいか。ヤツこそ『土のノーム』よ
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絶対防衛圏。消失

「引くなッ! ここが正念場ぞッ!」


 半壊した絶対防衛圏の防壁に取り付く人間軍の兵士さんに排泄物を流し、残り少なくなった石を投げます。


「ウンディーネッ! 埒があかぬっ! 我らが人間どもを叩き潰す! その隙にッ」

「サラマンダー殿ッ! シルフィード殿ッ! 自重されよっ! それではノームと同じではないかッ」


 暴風を纏って飛び出そうとする男の腕を必死で掴もうとしますがすりぬけてしまいます。でも諦めません。

 彼の手に握られているのは魔王さま直々に打たれた魔剣。『銘刀・風鳴かざな』彼の身体をすり抜けた私の手は、その刀身を握りました。


「っ!」「……」

~ あ。これは傷を癒さないと ~


「すまない」

「いえ。私が不用意だった」

~ ひゅーひゅー ~


「だが、これでは埒があかない。俺が出る」

「ダメ。絶対ダメ」

~ そうだよ。オカマな名前の兄ちゃん ~


「大精霊殿ッ?! 名前のことは言うなとッ?!」


 冷静さを取り戻したシルフィードさん。なんでも女の人の名前だそうで。

 たっちぃの声は魔王さまやその直属の人には聴こえるっぽいです。


 たっちぃ。よくやった。褒めてあげる。でも饅頭を食べたのは。許さん。


~ そういうこと言う状況じゃない…… ~


 魔族は個人の武勇と誇りを重んじます。基本的に戦術にたよって闘うことはありません。勇者達、『人間』とは明らかに違う点です。

 そしてノームさんが臆病者と呼ばれていた理由でもあります。


「地形と風向き、炎を自在に操る我らの利点、何度説明したッ?!」

「人間のような卑劣な手を使えるかッ! もう限界だッ!」


「その人間に、攻められているのは誰だっ!」


 炎弾が、矢が、石が、死体が落ちてくる中、私たちは時が止まった世界にいました。


「すまない」

「いや、俺も冷静になれた」


~ ただでさえスカートめくりでもてないんだから、ちょっとは自省することを学んだら? ~


「大精霊殿……」

「くす」


 肩を落とす彼に思わずほほ笑んでしまう私。


「シルフィード。いい雰囲気のところ悪いのだが、風をもう少し」

「すまぬ」


「というか、ウンディーネ。風のの言い分は私も同じなのだが」

「ごめんなさい。耐えて」


 炎に包まれたお兄さんが話しかけてきます。

炎の将軍。四天王の一角『炎のサラマンダー』さんです。彼は私に問いかけました。


「ここで。散るのか?」

「誰かが残らないとダメですから」


「莫迦だ。貴様は。貴様は『人間』なのに」

「……」


 サラマンダーさんは燃える身体を揺らしています。


「流石。『勇者』殿だな」

「シルフィードさん。その話は」


「すまん」


「この身でなければ、おぬしを抱いてみたかったが、炎神の末裔ならぬ貴様と私は結ばれぬ運命」

「風の身体では、生身の人間は抱けぬ。とても残念だ」



「なんどもなんどもいいますが、お断りします」

「ひどい……」

「ひどい……」


 魔将二名。情けない顔をみせないで下さい。志気に関わりますよ?


~ いや、これは二人に同情する ~


 無視。無視。


「夜を待って、絶対防衛圏の放棄とする。撤退は気取られぬこと。シルフィード殿の力は必須だ。

逃亡を助けるには風の力を受けた炎は絶大な力を持つ。サラマンダー殿をここで喪うわけにもいかぬ」


 私は言葉を一度切り。


「魔法が使えぬのは私だけだ」


 こわい。こわい。こわいよ。


「お前は、女だ。殺されるだけでは済まぬ」

「存じている」


 こわい。こわい。こわい。まだ見ぬ好きな人でも。こわいのに。


 

「あとは任せた。二人とも」


 さようなら。


 排泄物と血にまみれた城壁に取り付く人間軍を眺めながら、私は激を飛ばします。


「我らは決死ッ!」

「我ら決死にて魔族の礎となる!」

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