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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
帰宅したら、人生が終わって異世界が始まりました。

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異世界人は勇者と聖女と相場が決まっているようです。

「シャンティア団長。どこに行っていたんですか。」


「セナか……なに……ちょっと散歩をしてきただけじゃ……それよりも、あの二人はどうじゃった?」


幼子を森の中に置いて、俺は急いでフランシア国へと戻った。


(しかし……あの幼子は変な魔力を感じたな……)


「はぁ……いつまでその話し方をするつもりですかぁ。二人の時はいつも通りに話してくださいよぉ。」


セナは溜め息をつきながら、一枚の報告書を差し出した。


セナ・ニャードラ。


魔道士団副団長であり、フランシア国で唯一、俺の正体を知っている人物だ。


「団長が仰った通り、男は勇者の適性、女は聖女の適性がありましたよぉ」


「二人ともジタバタと暴れて大変だったんですからねぇ……」


「そうか……」


報告書に視線を向ける。


―――――


ユータ・ウラヤマ


勇者適性あり


リリカ・カラスマ


聖女として認定する


―――――


「いや、これだけか?」


俺は記載されている内容を思わず二度見した。


それもそのはずだ……


報告書には、たった四行しか書かれていない。


しかも、勇者と聖女として認めたことしか書かれていないのだから……


「……これだけとは?」


セナはこの書類に違和感を覚えていないのか、首を傾げる。


「いや、普通もっと色々あるだろ?属性の適性を見るとか……」


「そうですかねぇ。でも異世界から来たら勇者、聖女と相場が決まってますしねぇ~」


語尾を伸ばしながら適当に話すセナ。


まるで、それ以外の答えはないのだと信じて疑わない口ぶりだ。


その姿は逆に違和感すら覚える。


(この国では……“初めから決まっていること”なのか)


「異世界召喚か……」


「はい。もうすぐ魔災が起きますからね。」


セナはニヤリと笑った。


(なんだか……楽しそうだな……)


この世界では数百年に一度、大きな災厄が訪れると言われている。


普段は人の手で対処できる程度の脅威だ。


だが周期的に、魔物が異常なほど増殖する時期がある。


それが――


“魔災”と呼ばれる現象だ。


「まさか、節目の歳に生まれることができるなんて、親に感謝しかありませんよ。」


セナの緊張感のない言葉。


人族の寿命は長くて百年と言われている。


そのため、“魔災”のある時代に生きているかは分からないのだ。


「魔族とは一体どんな種族なんでしょうねぇ。団長は会ったことがありますか?」


セナはかけていた眼鏡を持ち上げた。


(……好奇心が勝っていると言ったところか)


魔災の時代には、必ず“魔族”が現れると言われている。


それを統率するのが魔王だ。


「俺もまだ魔族に会ったことはないな……」


「そうですか……」


あからさまに肩を落とすセナを横目に、俺は深く息を吐いた。


そして、話を戻す。


「異世界から来たから勇者と聖女だというのは安直すぎやしないか?」


「そうですか? でも本にはそうやって書いてありましたから。」


「いや、あの時もう一人いただろ?」


「もう一人……ですか?」


セナは首を傾げて、少し考える。


「いましたっけ……?二人しか見えなかったですけどねぇ……それに、異世界召喚は勇者と聖女、二名だけのはずですから。」


先ほどと同じように例外はないというような言葉。


「はず、ね……」


所々違和感のあるセナの言葉に、俺は口を閉ざした。


(じゃあ、あの子供は……一体なんだったんだ?)


「団長も一応聖女様と勇者様に会っておいてくださいねぇ。」


書類を渡しに来ただけなのか、セナはそのまま別の方へ歩いていった。


***


「んぅ……」


「起きたか……」


「あしゃ……?」


「あぁ、朝だ。」


覚醒していない頭をゆっくり起こす。


「全く、何度か声をかけたんだが、起きる気配もなかったぞ。」


「ふみゅ……」


「女がこんな所で寝るなんて危ないじゃないか」


「もしゅこし……ねちゃい……」


「って、寝るな!朝だと言っているだろうが!!」


眠たい目を擦りながら、なんとか隙間から這い出る。


その時――


「えっ……こえ……?」


声……?


森の中で、誰かの声がした。


しかし――


何度周囲を見渡しても、人はおろか動物すらいなかった。


「んぅ~……」


こてんと首をかしげる。


「だぁ~かぁ~らぁ!ここだと言っているだろうが!何度言えばわかるんだ!」


先ほどよりも声が少しずつ大きくなっている。


私は恐る恐る、声のする方を見た。


するとそこには――


狐のポシェットが、ふてくされたようにこちらを見ていた。


「みぇ、みぇ、めがぁぁぁ……う、う、うごぉぉぉぉ!!」


言葉にならない声が、森の中に木霊する。


その声に驚くように、木に止まっていた鳥たちがバサバサと飛んで行った。


「お前……本当に失礼なやつだな!」


「しゅ、すみゃみゃしぇん……」


「言えてないぞ。」


「うぅ……」


口をパクパクさせるが、うまく言葉が出てこない。


それからしばらくして――


何とか気持ちを落ち着けた私は、気づくとポシェットの前で正座をさせられていた。


「昨日から何度も話しかけているというのに、寝てしまうし、寝たお前は重たいし、挙句の果てに化け物扱いされるし……本当に最悪だ。」


狐の形をしたポシェット曰く、昨夜から何度も話しかけていたらしいのだが、眠さと空腹でいっぱいいっぱいだったこともあり、何も覚えていなかった。


(狐の形をしたポシェットって……長いな。もう狐さんでいいか。)


「おい、聞いてるのか。お前に話してるんだぞ。」


ポシェットをなんて呼ぶか考えていれば、それが顔に出ていたのか、目を細めてこちらを見てくる。


その時――


ぐぅぅぅ~~


返事をするかのごとく、盛大に腹の虫が声を上げた。


「えへへ……」


顎を下げて上目遣いで見上げる。


首を斜め三十度に倒す。


これで大体の大人は落ちる。


「ぐっ……」


(ふふ……知ってるのよ。姪っ子たちに何度もこの顔で騙されてきたんだから!)


狐は一瞬動きを止めた。


それからゆっくり深呼吸をする。


「はぁ……仕方ない。お前のスキルについて教えてやろう。」


「スチル……」


「いや、違う。スキルだ。」

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