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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
犬小屋からの拠点づくりは三歳には無理ゲーでした。

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どうやら白夜は口だけのようです。

「まりか……聞こえているか?」


「はぁ……また倒れたか……。」


バタりと倒れてしまったまりかを抱き抱えると、木陰に移動する。


ポシェットはやれやれと言った顔で、ため息を吐いた。


(そう言えば……びゃくとか呼ばれていたか。)


「びゃく。」


「あ?」


(ガラが悪いな。)


ポシェットはジロリと俺を睨みつけた。


「我はびゃくではない。白夜だ。」


「ふむ……白夜か。」


恐らくまりかは白夜と言うのが大変だったのだろう。


白夜とまりか……


二人は気づいていないようだが、二人には何か契約のような物を感じる。


「お前、まりかのなんなんだ?」


白夜は一瞬だけ黙ると、「ふんっ」と鼻を鳴らした。


(なんだか腹が立つな……)


「なんなんだ?とは随分と雑な聞き方だな」


「答えられないのか?」


冷静に、言葉を重ねる。


感情を乗せてしまえば、こいつの思うツボだ。


「ふん……答えられないんじゃない。答える必要がないだけだ。」


白夜は目を細めてから小さくため息を吐いた。


(くそっ……この顔……妙に腹が立つ)


「その顔……さてはお前……」


二人の間の空気がピリっと張り詰める。


「……」


俺の言葉に、白夜は一瞬だけ視線を逸らすと、鼻で笑った。


「ふっ……何の話だ」


(誤魔化せてないぞ……)


だが、その行動のおかげで疑念が確信に変わる。


白夜は何も言わない。


その沈黙が何よりの答えだった。


(こいつは知っている……)


(フリをしてるだけで……)


「何も……」


そこまで言いかけた瞬間――


ぴゅ~、ぴゅ~


白夜は口を尖らせたまま、どうでもいい音を鳴らしていた。


「……やはり、そうか。」


俺は呆れたように息を吐き、そのまま白夜を掴みあげた。


――が、しかし


「いだだだぁぁぁだだだ……」


「は?」


「だから痛いってぇぇぇ。離せぇぇぇ!!」


次の瞬間――


まりかの身体がそのまま宙に浮いた。


「ひっ、ひっ、引っ張るなぁぁぁ……」


「……」


どうやら、まりかから取れないようになっているらしい。


(いや……違うか)


(これは“外せない”のではない)


(繋がっている……と言った方が正しいか)


まりかをゆっくりとその場に下ろすと、白夜も痛みが消えたのか、息を整えた。


「……で?お前とまりかの関係はなんだ?」


「……」


まだ話す気にならないのか、ゆっくりと手を白夜に伸ばすと、何かされると思ったのかビクリと目を閉じた。


「ひ、ひぃ……わ、わわわわわ我は……ま、まりかの一部のようなものだ……」


「一部?」


「そ、そうだ!」


俺のことが怖いのか、白夜は、噛みながらも必死にまくし立てた。


(噛んでて何が言いたいか分かりにくいな……)


「も、元は土地神に仕える狐だったのだぁぁぁぁ!!」


「ま、まりかがこの世界に来た時、なぜかポシェットとなって一緒に召喚されたのだ。」


「た、頼むから食わないでくれぇぇぇ!!」


俺が話す隙を与えないようにしているのか――


白夜は大事な情報を次々と話していく。


その様子を見て、言葉を失った。


「……いや、食わないが……」


そもそもポシェットなんか食って何が美味しいというのか。


「いなり寿司にしても上手くないぞぉぉぉ!!」


「……」


(イナリズシ?……ってなんだ……)


一人……いや、1匹が騒いでる姿を遠目に眺めていれば、


「……って……え?」


やっと俺の言葉を理解したのか、動きを止めた。


「……食わない、と言ったのか?」


(忙しいやつだな……)


さっきまで涙を流しながら騒いでいたはずが、今度は目をパチパチと動かして驚いている。


ポシェットのせいで、表情だけは妙にはっきりしていた。


「お前のどこに食う要素があるんだ。お前を食うくらいならスライムを食った方がマシだ。」


「な、なんだと!?」


コロコロと表情の変わる白夜を片目に、その下ですやすやと眠るまりかを見た。


(普通だったら、親元を話されて泣いてもおかしくないはずなんだがな……)


三歳くらいの見た目にしては、理解力も高く適応力も高い。


それどころか泣き言一つ言わない。


そんなまりかの頭をそっと撫でる。


(他にも隠していることは多そうだが、これから話を聞いていけばいいか。)


本人は気づいていないだろうが、無意識のうちに魔力を使ってしまっていたのだろう。


話を聞いている限り、まりか自身は魔法を使うことはできないようだが、他の媒体を通せば魔力を使うことができるようだ。


(聖女や勇者とは違う能力か。と、言ってもあいつらは何もしないだろうがな……)


昔から聖女や勇者は存在するが、人間国以外で大切に扱われることは少ない。


それは人間国が匿ってしまうというのもあるが――


自分たちで戦った方が早いという概念があるからだ。


(まぁ、戦いに慣れているというのもあるが……)


「白夜。まりかは他にも能力を持っているはずだ。そのことは誰にも他言するなよ?」


「な、なんだと!?お、おま……まりかのスキルを知っているのか!?」


「いや……ただの推測だ」


俺は肩をすくめる。


(こいつ……すぐボロが出そうだな。)


「だが、今の話だけでも十分だ。魔力を“分け与えることができる”――それだけで厄介だ」


「う、うぐ……」


白夜はぐっと言葉に詰まる。


「まりか自身は使えない。だが、お前を通せば使える。」


「つまり――白夜、お前以外にも魔力を分け与えることができるということだ。」


その言葉に白夜もなにか気づいたのか、真面目な顔をした。


「魔力を分け与える。」


「あぁ……今はまだ魔力が少ないからいいが、もし魔力が多くなれば狙われる可能性だってある。」


静かに告げると、白夜の顔が強張った。


「狙われる……って……」


「異世界人であるまりかにどれだけの魔力が増えるかはわからん。だが……魔力を人に与えることはできないんだ。そこまで話せばわかるな?」


「なっ……!?」


白夜の声が裏返る。


「まぁ、今すぐどうこうなる話ではない」


そう言って、まりかを見下ろした。


呼吸は安定している。


顔色も、さっきよりはいい。


「対処すればいい。それだけの話だ。」


「か、簡単に言うなぁぁぁ!!」


(騒がしいやつだな……)


その時だった。


「……ん……」


小さな声が漏れる。


「まりか?」


腕の中で、まりかのまぶたがわずかに震えた。


「……んぅ……」


ゆっくりと目が開く。


焦点の合わない瞳が、こちらを捉えた。


「……とと……?」


「気がついたか」


思わず、安堵の息が漏れる。


「お、おきたぁぁぁぁ!!まりかぁぁぁ!!」


白夜が飛び跳ねた。


「う、うるしゃい……」


まりかは弱々しく手を伸ばし、白夜を軽く押し返す。


「し、しぬかとおもったぁぁぁ……」


「しにゃない……」


ぽそりと呟くと、まりかは再び目を閉じた。


だが、今度は穏やかな寝息だった。


(……問題は山積みだな)


それでも――


腕の中の温もりを確かめるように、まりかを見下ろす。


生きている。


それだけで、今は十分だった。


「ここにずっといる訳には行かないか……」


俺はまりかを抱え、森の奥に視線を向ける。


その先には――人の気配。


確か近くに街があったはずだ。


一度だけ腕の中の温もりを確かめると、歩き出した。


「むっ……まりかをどこへつれていくつもりだ!?」


「……」


「なんだ無視か!?やるのかこのやろう!!」


白夜の怒鳴り声が響き渡っていたが、


「びゃく……うるしゃ…すぅ~…すぅ~」


まりかの寝言一つで、ぴたりと静かになった。

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