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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
犬小屋からの拠点づくりは三歳には無理ゲーでした。

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ポシェットVSイケメンエルフ

「ごちしょーしゃまでちた。」


手をパチンと揃えて挨拶をする私の姿を、トットールはニヤニヤした顔で見ていた。


(イケメンだから許されるけど、他の人がやったらただの不審者ね。)


呆れた顔で目の前の男を見る。


「腹が膨れたようでよかった。それでは話をしようか。」


「はなち?」


首をコテンと横に倒す。


大人の自分なら絶対にやらないあざとい仕草も、今ではごく自然にできてしまう。


どうやら、三歳になった時に羞恥心もどこかへ置いてきてしまったらしい。


「うっ……かわ……」


(また可愛いって言おうとしたわね……)


やれやれと首を横に振ると、トットールは話を戻すように咳払いを一回した。


「ゴホンッ……あぁ、そうだ。まりか。君はなぜここにいたんだ?」


「うっ……」


トットールの言葉に、肩がびくりと動いた。


自分のスキルについてはどこまで話していいものなのか。


この世界のことを何も知らない私には、どう答えるのが正解なのか分からない。


そんな私の動きに気づいたのか、トットールは目線を合わせると、私の肩をポンっと叩いた。


「君が警戒するのもわかる。だが、安心してくれ。」


安心……?


(……それで安心できる人がどこにいるのよ)


「この姿になれば、わかるか?」


トットールが小さい声でブツブツと呟いた瞬間――


「あ、あにゃたは……」


「ふっ……どうやらこの姿は覚えているようだな。」


目の前に現れたのは――


イケメンのトットールではなく、この森に連れてきてくれた老婆だった。


「トトがおばあちゃで、おばあちゃがトト?」


口元に人差し指を置くと、上目遣いでトットールをみた。


すると、老婆はポンっと音を立てると同時にイケメンエルフの姿へと戻る。


「そういうことだ。だから安心してくれ。君が異世界人だということもわかっている。」


なるほど……


ってことは……私が元々大人だってことも知ってる……


(いや、あの二人を両親と勘違いしてたしそれはないか……)


私は少し考えると、ポツポツと話し始めた。


「まち、めざちた。でも……むりだった」


トットールは私の言葉を聞いて眉を少し下げると、


「……そうか。」


と小さく呟いた。


(いや、行けると思ってた方がすごいと思うけど!?)


よく考えてみて欲しい。


見た目三歳の幼女が、行き先も距離も分からないまま、一人で街に辿り着けるわけだろうか。


いや、辿り着けるわけが無い。


(死んでなかっただけすごいと思って欲しいわ……)


「苦労したんだな……」


「くろー……ちた……」


異世界に来てから時間は全然経っていないはずなのに、生きていくのがやっとの毎日。


なんならローンまで背負わされて、家は犬小屋で、スキルは使えないし、白夜は眠りこけているし――


(浮気から始まって、本当に大変だったのよ……)


トットールに言われたことで現実味が増したのか、三歳児だからなのか――


気づいた時には、もう視界が滲んでいた。


「泣くな……」


トットールはポンっと私の頭の上に手を置き、軽く撫でると、ゴシゴシと涙を拭った。


「ぐすっ……にゃ、にゃいてにゃいもん……」


私は、恥ずかしさからか、寝こけている白夜をぎゅうっと抱きして、顔をうずめた。


そして、ぐすっと鼻を鳴らした瞬間――


「お、おい…く、くるじぃ~……!つ、潰れるぅぅ~……締めるな、死んでしまうだろうが~!!」


白夜の声が宙に舞った。


「えっ……」


急に聞こえてきた男の子のような声に、トットールは辺りを見渡す。


(しまった……白夜については何も話してないのに……)


「まりか……今声がしなかったか?」


「えっ?」


私はトットールと同じ方にゆっくり首を傾げた。


「なんだか子供のような声が聞こえたんだが…」


「まりはきいてにゃい……」


私は、白夜をぎゅっと抱きしめたまま、首を横に振る。


(お願い……黙ってて……!)


が、しかし……


「だぁ~かぁ~らぁ~!苦しいと言っておるだろうが!!頼むからやめてくれぇぇ~」


私の願いも虚しく――


持っていたポシェットから白夜の声が響き渡った。


(終わった……)


「……しゃ、しゃべったぁぁぁ~!!」


「だ、だれだ、お前はぁぁぁ~!!」


白夜と、トットールの声が木霊する。


二人の声の大きさにびっくりした鳥たちがバサバサッと飛び立った。


「ゼェゼェ……で?お前は誰だ。」


二人が驚き合うこと数分――


白夜は目の前にいるトットールに声をかけた。


「お前こそ一体なんだ……なぜポシェットが話している。」


「……我か?」


白夜はふんっと鼻を鳴らすと、得意げな顔でトットールを見据えた。


「我は白夜。この娘の保護者みたいなものだ。」


「保護者……だと?」


保護者という言葉に、トットールの眉がピクリと動いた。


(気になるのそこなんだ……)


「お前のようなポシェットに何ができるというのだ。」


「な、なんだと?」


「ふん。俺はまりかのトトだぞ。お前に保護者の地位はやらん!」


「……」


私は二人の会話を聞いて小さくため息を吐いた。


「……」


その時――


「まりか」


二人の声が重なった。


「にゃ、にゃに……?」


(……嫌な予感がする)


「保護者はトトだよな?」


「保護者は我だよな?」


「……」


(……やっぱり……)


片方はエルフのイケメンで、もう片方はしゃべるポシェット。


どう考えてもおかしい状況のはずなのに――


なぜか、その中心にいるのは私だった。


(……面倒なことになったわね。)


私は二人を見上げて、小さくため息を吐いた。


「まりは……どっちのものでもにゃいよ」


「「えっ……」」


寂しげな声が重なった。


(さっきから息ぴったりね……)


「まりはまりだもん。ものじゃにゃいもん。」


そう言って頬を膨らませると――


「「……っ」」


二人が同時に息を呑んだ。


(……ダメだこりゃ……)


私はそっと目を逸らした。


「めんどくしゃ……」

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