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異世界召喚の代償は三歳の身体と五千万円のローンでした! ~目指せ完済!スキル『我が家』で借金返済しながら成り上がります~  作者: ゆずこしょう
犬小屋からの拠点づくりは三歳には無理ゲーでした。

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12/26

システムが無情すぎて詰みました。

「起きろ!おい、茉莉花。朝だぞ!」


頭上から、耳に残るようなバリトンボイスが降ってくる。


(すごいいい声ね……いい夢見られそう……)


フサフサと揺れる毛深い何かを抱きしめると、私はそのままもう一度夢の中へと落ちていった――


……なんてことはなく。


バシッ!


「いちゃっ!!」


大きな肉球が、否応なしに茉莉花のおでこに直撃した。


「全く……もう朝だと言っているんだ。別にお前がそのままでいいなら寝かしておいてやるが……」


白夜は一度、黙って犬小屋へと視線を向けた。


「これからも、その犬小屋に住むつもりか?」


その言葉を聞いてハッとする。


(……すっかり忘れてたわ……)


「それはいや!」


ゴンッ!!


私は慌てて飛び起きると、勢いよく天井に頭をぶつけた。


「うぅ……いたい……」


見た目に精神年齢が引っ張られているのか、目から水が流れてくる。


「うっ……うっ……」


そして――


耐えきれなくなって、ついに涙があふれた。


「うわぁぁぁ~ん……いちゃいよぉぉぉ~。」


「こ、こら泣くな。わかったから、泣きやめ。」


急に泣き出した幼女を見て、白夜は露骨に狼狽えた。


「あぁ……もう。我は子供のあやし方など知らぬぞ。どうしたらいいのだ。」


が、一度決壊した涙はなかなか止まることを知らなかった。


私自身、何とか止めようと息を止めてみたり、目をつぶってみたりしたが、なかなか止まらず……


ようやく涙が落ち着いたときには、お日様が地平線から顔を出していた。


「落ち着いたか……。」


「うっ、うにゅ……」


「まったく。子供はすぐ泣く。だから嫌いなのだ。」


「うっ……びゃくにゃ、まりのこときらいにゃにょ?」


せっかく止まった涙が、白夜の一言を皮切りに目に溜まっていく。


「はぁ?そんなこと言ってないだろ。あぁ~もう泣くな。いい歳なんだから我慢しろ。」


ふさふさの尻尾を巻き付けると、あやすようにリズムを刻んだ。


しかし……


「いいとしはよけい……」


私だって好きでしているわけではないのだ。


出来れば泣きたくないし、早く話を進めたい。


「わかった。それで?今日はどうするんだ?」


白夜は前足をぐいっと伸ばすと、私の顔をゴシゴシと拭った。


「うぐっ……いにゅごやだっちゃく。」


「それを言うなら、犬小屋脱却だ。」


「……」


私はきょとんと目を瞬かせた。


(犬小屋って言ったんだけど……)


鼻をズズッとすすりながら、白夜は体を伸ばしてから立ち上がる。


(手伝ってくれるのかな。)


「それで?やり方はわかってるのか?」


どうやら、そのつもりらしい。


私は“やり方”と聞いて、昨日の夜のことを思い出した。


「そじゃいあちゅめ……」


桜の木は、素材集めをするように言っていた。


(ゲームとかだと、作りたい物によって使う素材が違うよね)


「ふむ。で?何を集めるのだ?」


白夜の声に、私はトテトテと桜へ近づいた。


そして、桜の木に手をついた、その瞬間――


ブォン。


パソコンが起動するような音が、頭の中に響いた。


《おはようございます。ご要件をどうぞ。》


「おうちをおおきくちたい。」


まずは何を始めるにも拠点が必要だ。


そのためにも犬小屋を大きくしなくてはならない。


《かしこまりました。本日納品していただく素材はこちらです。》


――――――――――


《施設強化:犬小屋 → 小屋》


必要素材


・モススライムの粘液 0 / 5

・ホーンラビットの毛皮 0 / 3

・スプラウトの木片 0 / 10


必要魔力:不足


――――――――――


「……」


ボードに記載された素材を見て、私は固まった。


それもそのはずだ。


書かれていたのは――


元の世界では見たことのない素材ばかりなのだから……


(いや、ゲームかよ! ってか、魔力って何!?)


思わず心の中で突っ込む。


しかし、システムはそんなことなど気にもせず話を進めた。


《もう一つお伝えさせていただきます。ローンですが、毎日必ず返済が必要です。》


「……えっ!?」


《サイコロを振り、出た目の合計枚数の金貨を返済していただきます。》


「さいこりょ?」


私の言葉に反応するように、手のひらにサイコロがふたつ現れた。


「いっこじゃにゃい……!?」


《はい。二つの目を合計した数となります。》


「……」


いや、まてまてまて……


サイコロの目は六までしかない、普通のサイコロだ。


だが――


足すということは。


「さいだいで、にゅうに……」


《ふっ……そういうことになりますね。》


私が「十二」と言えなかったことを鼻で笑うと、システムはさらに残酷なことを言い放った。


《もし支払いができなかった場合、ローンは加算されます。》


「えっ……えぇぇぇえええ!?」


「ど、どうした……?」


思ったよりも大きな声が出ていたのか、白夜は私の声に肩をビクリと揺らした。


「にゃ、にゃんでもにゃ……くはにゃい……」


白夜にはシステムの声が聞こえていないようで、私の反応を見て首を傾げるだけだ。


《それではサイコロを振ってください。》


しかし――


システムは、私の気持ちなど気にもとめず。


淡々とサイコロを振るよう指示を出した。


ローン返済すればいいだけと、甘く見ていた。


けれど――


この世界は、そんなに優しくできていなかった。


《早くサイコロを振ってください。振らなければペナルティとして、金貨十二枚分のローンを追加させていただきます。》


頭の中に、システムの声が無機質に響く。


私は慌てて、手のひらに乗っていたサイコロを振った。


コロコロと転がり――


止まる。


「……」


目に入った数字は――


あまりにも無情で。


「にゅうに……」


《本日のローン返済額は、金貨十二枚です。》


「そんにゃ……ばにゃにゃぁぁぁ~」


幼女の声が、響き渡った。


(金貨十二枚って……)


そもそも金貨がどうやって手に入るのかすら知らないから、そこからだというのに……


(絶対無理だわ)

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