スライム娘③
無事、自己紹介を終えたアレンとスライム娘。
そして次に向かったのは、道具屋だった。
からんからん。
軽快な鈴の音。
それを響かせ、ドアを開けたアレン。
「いらっしゃいませ」
活発な声。
それが響き、二人を出迎えたのは、声のとおりの活発そうな黒髪のメガネ姿の人物だった。
「なにをお探しですか? この道具屋にはなんでも揃っていますーーって」
目を見開き、アレンとスライム娘を見つめる道具屋の主。
その顔に浮かぶは、驚き。
「や、やぁ。ミザリー」
「こ、こんにちは」
挨拶をする、アレンとスライム娘。
むぎゅっ
アレンの腕。
そこに、スライム娘は恥ずかしそうに胸を押し付けた。
ひんやりと冷たい感触。だが、それも人とソレと違いクセとなる。
「す、スライムさんに。勇者様。なんとも不思議なペアリングですね」
まじまじと、二人を見つめるミザリー。
「そ、その。お二人はどういったご関係で?」
「こ」
「こ?」
「こ、恋人同士の関係です」
はっきりと答える、アレン。
倣い、ぽっとスライム娘は頬を赤らめる。
対照的に、なぜかミザリーは涙ぐむ。
「つ、遂に。勇者様にも彼女ができたのですね。うっうっ。この、ミザリー。感無量です。どうかお幸せになってください。お、同じ男として、ぼくも。勇者様のことを気にかけておりましたので」
同じ男。
その言葉に、スライム娘は思わず声を発してしまいそうになる。
「そ、その。ミザリーさんって」
「はい?」
「お、男の子なのですか?」
「あっ、はい。よく間違えられるのですが、ぼく男です。中々、美少女でしょ?」
可愛くウインクをする、ミザリー。
「勇者様に嫁の貰い手がなければ、最終的にぼくが引き取ってあげる。って話。実は、勇者様としてたんですよ。勿論、勇者様はーー」
「み、ミザリー。その話はそこまでだ」
「はーい」
微笑む、ミザリー。
その姿に、スライム娘は、「ひ、人の世界は広いです」と、心の中でつぶやいたのであった。