スライム娘①
世界を救った勇者。
しかし恋愛経験皆無のその男は女性との接し方を忘れてしまっていた。
聖女と付き合うも、「勇者としては尊敬できます。ですけど、男としてはちょっと」と言われ敢えなく玉砕。
王女とデートをするも、「マナーがなっていませんわ。経歴は素晴らしいですけれど、わたくしのフィアンセとしては少々」と宣言され、破局。
女剣聖に至っては、「お前を男として見たこと等ない。剣を抜けッ、修行だ修行!!」と迫られ、それ以前の問題。
女賢者に相談した結果。「研究対象としては、ふむ。引き取ってやらんこともない」そう鼻息荒く、思い切り腕を掴まれてしまった。
そんな感じでかれこれ99連敗。
世界を救う程の力があっても女にモテない。
むしろ、逆に怖がられるか興味を抱かれる。
いっそのこと女魔王に頼みこむか?
いや、それだけは。
「我はもう世界に危害は加えん。これからは人と魔族。お互い手を取り合っていこうではないか」
そうやって和解した、女魔王。
そんな女魔王に、「女を紹介してくれ」などと口が裂けても言えない。
まっ、俺は一生独身でもいいか。
などと諦め、歩いていると。
「ぷるぷるぅ。あ、貴方は勇者様?」
「ん? あれ? スライム?」
「そ、そうです。ぷるぷる」
水色の身体。
それを揺らす、スライム娘。
「ど、どうしてこんなところに? ここ、街のど真ん中だぞ。しかも人の姿で」
「ぷるぷる。勇者様と魔王様が手を組んだ結果、街の中にも自由に入れるようになったのです。ぷるぷる」
「そ、そうなのか」
「はい。ところで、勇者様」
「なんだ?」
「ず、随分と浮かないお顔をしていてようですが。なにかあったのですか?」
「それがだな」
「は、はい」
スライム娘に相談しても良いものか。
まっ、いっか。
「結婚できないんだ、俺」
「けっこん?」
目を丸くし、頬を赤らめるスライム娘。
「そうだ。結婚は愚か、彼女さえできそうにない」
「そ、そんな。世界をお救いになった貴方様に。ぷるぷる」
「そうなんだよ。俺もいい歳だし、そろそろ」
「な、なら」
「ん?」
「ぷるぷる。わ、わたしを勇者様の」
「俺の?」
「お嫁さんに。ぷるぷる。なってさしあげます」
「えっ、いいの?」
「は、はい」
もじもじする、スライム娘。
その姿に、俺は人の女にはなかったしおらしさを感じてしまう。
「よし、まずは彼女からスタートしよう」
「かのじょ。からスタートですね。かしこまりました。ぷるぷる」
こうして俺は、初彼女としてスライム娘を手に入れたのであった。