秘密
仕事場に行くことになった当日の朝、今回は自分の部屋で朝食をとっているとドアがノックされた。
そこんは執事が立っていた。すんなりOkしたが、いまさらやっぱりだめだと言うのだろうか、と少し身構えた。
「雪様はすでに気づいておられると思いますが、旦那様は時々会話の流れがおかしくなることがあります。」
「はい、時々違和感を感じます。あれはどういうことなのでしょうか。」
これは好都合だ。いつも聞こうとするとどこかへ行ってしまう。自らこの話題をしてくるなんて。
「なに、少し心が弱っているだけです。ですが、これ以上弱った心を傷つけないように旦那様に話を合わせてください。」
心が弱っている、その言葉を自分に言われたかのように感じてしまう。そうか、彼も心を痛めているんだ。心を痛めている人には、様々な症状がある。私は、誰にも害を与えず静かに苦しむタイプだが、彼は違うのだろう。時々上の空になるのだ。
良いだろう。彼を邪魔しないように距離をとりながら関わればいいのだ。
違和感があるのは、たまになのだから構わない。
△△△△△
彼の仕事は薬の開発だった。家から少ししたところに大きな研究室があり、そこで働いていた。私は、そこまで執事に車で送ってもらった。前日に彼からもらっていたID証をかけると執事に言われた通りエレベータで6階まで上がった。
上がると優しそうな女性が仕事場まで案内してくれた。そのやさしさに感動しながらガラス張りの部屋を通り過ぎた時、イケメンさんを見つけた。
彼は、見たことのないほど真剣な表情で顕微鏡をのぞき込んだり、他の研究者と話していた。研究者は全員で8人ほどですぐに彼がリーダー的な存在だと分かった。いつも見ない姿に少し戸惑った。
私の仕事は実験器具を用意したり、片付けをしたりする簡単なものだった。人と関わることが嫌いな私にはちょうど良かった。
イケメンさんと同じ空間で働くのはなんだか妙な気分だったが仕事に集中しようと頑張った。
仕事中は向こうも仕事に没頭していてこちらにわざわざ話しかけてきた李、こっちを気にかけることはなかった。そのため、こちらとしても仕事しやすかった。
そして、ふと思った。ここにいる人たちは私とイケメンさんの関係を知っているのだろうか。一緒の家に住んでいるが、いまだにどのような関係かわかっていないことを知っているのだろうか。
もちろん誰に聞くこともできなかった。仕事終了の時間になって私は隣の部屋に置いてある自分の荷物を取りに行った。帰ろうとしたとき、声をかけられた。
「初めまして、僕は田村翔と申します。レオンと一緒に住んでいるんですよね?」
レオン、と言うのか。そこで初めてイケメンさんの名前を知った。まだまだ私は彼のことを知らない。
当たり前だ。干渉しなかったのだから....
私が頷くと田村さんは微笑んで今日は助かった明日もお願いします、と丁寧にそう言った。そして妙なことを口にした。
「苦しくなったら相談に乗りますから。」
愛されて苦しくなることはあるのだろうか、未だに食事を一緒にとるだけの関係なのだけれど。
レオンとの関係が大きく変わったのは次の日だった。
初めて小説を書かせていただきました、ぐんてねこです!アドバイスを頂けると本当にうれしいです。ただとても心が折れやすい性格です。優しいコメントをお願いいたします。




