憎悔
「レオン、話したいことがある。」
私の声は震えていた。
なんとか、レオンにこの話を否定してもらって、何でもなかった風にまた過ごしたい。
それは、もうこう知ってしまった以上できるはずがないのに、願ってしまう。
△△△△△
ニコニコメイドや執事に決して聞かれないように、レオンを私の部屋に招き入れた。
レオンは、私が今から話すことが微塵も想像できていないようだ。
バチっと目が合うと、そっと微笑んでいる。
「レオンはずっと忘れられない大切な人がいるんだよね?私じゃない、誰かが。」
言ってしまった。私が、私だけが黙っていれば今の関係を壊さなくて済む。
でも、裏切っていたのはレオンだ。
何度も何かを言おうとレオンが口を開ける。
私はじっと答えを待った。
△△△△△
レオンが目を閉じて大きくため息をついた。
「大切な人は雪、君だよ。話したい人、愛したい人も君だ。ずっと。」
熱い涙が頬を伝った。レオンがぬぐおうとした手を振り払った。
もういい。そうじゃない。
あなたに拭いてほしくない。あなたのために泣きたくない。
「夢薬。これで分かる?」
どうして、とレオンがつぶやく。
「どうして?今日研究室に行ったの。そこで全部見た。全部知った。だけど、どうしても信じることができなかった。」
レオンの顔が強張っていく。何であなたが泣きそうな顔になるの?
どうして、どうしてこんなにも苦しいの?悔しいの?
「薬を飲んでいたんでしょ?私と会ってからも。だから食事を一緒にとれなかった。それに、夢の中であった人と私が混ざってしまった。」
何とか言ってよ、と言葉が詰まった。
レオンは俯いて、聞いていた。
「君の言うとおりだ。ずっと夢薬の研究をしていた。やっと形になってからは、自分で試してみた。会いたい人がいた。話したい人がいた。現実では会えなかった。だから、薬を飲み続けた。夢の中ではいつも幸せだった。」
「でも、幸せを続けるには永遠に薬を飲む必要があった。僕は狂ったように飲み続けた。いつの間にか夢が現実で、現実が夢のようになった。」
涙が止まらない。
こんなに憎いのに、今まで騙されていたのが悔しいのに、
レオンが愛おしい。
「でも、君を見つけた。ずっと会いたかった、君に会えた。だから、薬はやめた。やめることができた。君を愛している。ずっと。分かってほしい。君を愛しているんだ。」




