SPICA-you-
あれから、もう何年たっただろう・・・
光・・・今、どこにいる?今何してる?私はここだよ。見えてるかな。
毎日、空を見続けてきた。
楽しいときも、苦しいときも。君だけを頼りに。
一番強く光る貴方の周りに、たくさんの小さな星がちらばっていると
お友達ができたのかな、って思います。
雲で隠れるなまぬるい風の日の空を見ると、何かあったのかなって心配になります。
でも、また照らしてくれるから、私は強く生きていくと決めたの。
光、私は精一杯前を向いていこうと思います。私のために。貴方のために。
───────────────────────────────・・・
「はい、起立してくださーい」
「「はーい」」
今日も晴れている。暖かい日だ。
「先生ー、名前呼ばんのー?」
「あぁ、そうやね!ごめんごめん、朝田さーん、石井くーん」
私は今、先生をやっている。
毎日子供達の笑顔を見ると、あの頃の私達を思い出す。
楽しかった日々を、この子達にも与えてあげたい。
そんな気持ちで教師という道を選んだ。
「優梨!教室で走ったら転ぶで」
「なんでーいけるって!空がゆっくりすぎるんよお!」
「もー・・・!待ってってば」
────────・・・!
どこかで聞いたことある会話・・
懐かしい。熱い気持ちがこみあげる。
光・・・会いたいよ
「・・先生!舞先生!」
「え?あ、うん。何?」
「先生どないしたん?ぼーっとしとるよ?」
「えへへ、なんでもないよ。どうした?」
「坂の上のグラウンドってどの道あがっていけばいいん?」
「もともと桜おばあちゃんのやってる駄菓子屋があったとこ、わかる?」
「わかるわかる!あ、あそこの横の細い道いけばいいんやね?!」
「そうそう!」
「ありがと先生!」
桜おばあちゃんは、一昨年亡くなった。
どんなにいい人でも、いつかはいなくなる。
人間は生まれては消えていく運命。
その現実は、どうしても受け止めたくないものだ。
悪い人だから死んでもいいなんて、思ってるわけじゃない。
だけど、どうして人が死ななければいけないんだろう。
それは本人さえ知らないで、突然やってくる悲しみ。
そんなとき、どうすればいいんだろう。
何年たっても消えない悲しみと絶望は、どこにぶつければいいのだろう。
会いたくても会えないこの愛しさはどうやって伝えればいいの・・・
坂の上・・・もうどれだけ行ってないんだろう。
あそこにいけば、きっとたくさん思い出がよみがえる。
嬉しいことも悲しいことも。全部。
だけど私には、まだそれを受け止める力はなかった。
だから、もう少し。もう少しだけ。待っててね。
────────────────────────────・・・・
次の恋。私に浮かんだものは皮肉にもそんなものだった。
教師になるほんの少し前。
お金をためるために、カフェでバイトをしていた。
バイトの先輩で、とても優しい人だった。
気を使うのが上手くて、いつも笑顔だった。
相談も真面目に聞いてくれて、その眼は自分のことのように
悩んでくれているようだった。
私はその人になら、光のことを話していいと思えた。
だから、話した。私のこと。光のこと。
彼は私の話を聞いたあと、言った。
「舞ちゃんは光くんのことを思っていたんだよな。今だって、彼を思ってるだろ?」
私はうなずいた。瞳から溢れる涙をこらえながら。
「だったら、同じだ。光くんは舞ちゃんを思ってる。今も変わらずにずっと。
きっと思ってるよ。俺はその時のことも、光くんのことも知らない。だけどな、
お前のことは知ってるよ。そりゃあまだまだ分からないところや知らないところ、あるよ。
でもそうやって泣く舞ちゃんが優しい子だってのは、俺にだって分かる。
忘れんな、光くんのこと。だけどな、泣くのはこれで最後だ。上を向こう。
じゃないと星は見えねえよ。」
「・・はいッ・・」
たくさんの大粒が頬をつたう。
スッっと手がのび、私の頬に熱が伝わる。
そう、あの時の貴方のように。優しい手が。
「う、うう、ううううあああああああああんっ・・・」
「よしよし」
何時間泣いただろう。
もう空は暗くなりかけていて、もうすぐ貴方に会える時間だった。
子供のように、目をこすりながら涙を流した。
君を思い出して。彼の優しさを感じて。
私は恋に落ちた。流れる星のように。
──────────────────────────────・・・・
とまどいながら。君を胸に抱きながら。私は足を進めた。
「あの、幸太先輩」
「ん?」
「付き合って、くれませんか。」
「え?」
「だめ、ですかね」
「・・いいの?それで。迷いとか、あったって俺は受け止めるよ。舞ちゃんが
光くんを思い続けてることは知ってる。だけど、舞ちゃんはそれでいいの?」
「はい。私は幸太先輩が好きです。」
「ありがとう。なら、付き合ってくれないか。・・・舞。」
「はッ・・・うんッ・・。」
こうして、私は幸太と付き合った。
幸太はすごく大人で、私はいつも頼ってばかりだった。
一緒に星を見たときは、すごく緊張した。
光は、認めてくれるかな?あたしが幸太を選んだこと。
そんなとき、あの一番星がきらりと光った気がした。
・・ありがとう。大事にするから。
大好きに、なってみようと思うんだ。
────────────────────────・・・
それからわ、ずっと幸太といた。つらいときも笑い合い、順調だった。
仕事が決まったときは、私よりも喜んでくれた。
誕生日も盛大に祝ってくれた。
仕事が上手くいったときは頑張ったなと頭を撫でてくれた。
幸せだった。
光のお墓参りも、一緒にいってくれた。
綺麗な花をもって、丁寧に水をやってくれた。
ああ、本当に優しい人なんだなって少し瞳が潤んだ。
いい人と出会えて、よかった。
光、私幸せだよ・・・
そんな時、幸太がいった。
「坂の上へ行こう。一緒だから大丈夫だろ。」
そうやって私の手をぎゅっと握った。
「うん・・。」
私は決心した。あの場所で全てを受け入れると。
そしてその手を握り返した。
坂をゆっくりとのぼっていく。
鼓動がはやく高く打っている。
もうすぐ、いくから・・・。
そして、その場所へついた。
「ここは星がよく見えるな。」
幸太が言った。
私は空を見た。たくさんの星。そして、一番星。
ゆっくりと目を閉じる。君の声が聞こえる。優しい風が吹く。
──「でも俺は、舞に会えて一番嬉しい」
「・・・俺、舞のこと好きだよ」──
──────「ごめんね。舞。」────
───「舞は空が好きだから?いや、星が好きだから、かな」─
─「舞」───
────「キスしようか」───
──「可愛いよ舞」────
───────「舞・・・ありがと」─
────「ま、い・・・俺は・・舞、の・・一番星になる・・」──
──「舞、愛してる・・」──────────
「じゃあな。舞。楽しかった。」
瞳が開いて、私は振り向いた。
「え?・・幸太?」
「もう、よそ見すんな。お前はそこに立ってる。全部受け入れられた。だろ?」
「でも、私・・」
「お前が今一番好きなのは誰だ?」
「こ・・」
答えられなかった。口が動かなかった。戸惑った。
「分かっただろ?前を向け舞。その星には見てる。いつでもお前を一番に照らしてるんだろ」
「・・うん・・・っ!」
「だからここでさよならだ。じゃあな舞。幸せになれよ。」
「・・・・・・・・・・・あ、ありがとう!幸太・・・!」
幸太は背を向け手をふった。
力強かった。
ありがとう、ごめんね。
最後まで愛すことができなかった私。
きっと全て分かっていた幸太。
子供な私と、大人な幸太。
きっとつりあわなかったわけじゃない。
だけど、私の気持ちではきっとうまくいかなかった。
私も、幸太も。
私は、きっとこれからも一人では何度もくじけてしまうだろう。
強くなるって決めた。でも、そんな簡単なものじゃないって分かってる。
でも、私には光がいる。ずっと私の胸の中に。この空に。
私の背中を押してくれる君がそこにいるから。
どんなときも幼い君の顔を思い出して。
君の声を思い出して。
君の言葉を思い出して。
前を向いていくから。きっとずっと忘れない。
「愛してるよ、光」
「帰ろう」
ザァーーーー・・・・・
強い風が吹いた
もう一度、
君に会えたら
「・・・舞!!」
「え?」
振り向いたそこには、
長い長い下り坂が続いているだけだった。
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どうでしたか?内容がgdgdなってしまったこと、本当にごめんなさい。評価・感想をくださっている方々、本当にアドバイスなど嬉しいです。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。