一撃必殺
よろしくおねがいします
此処とは違う進化を遂げた世界。
その世界の小さな家から物語は始まる。
空は晴天と呼べるほどに三つの太陽が大地を照らし、草木は我先にと陽の光を浴びる今日このごろ。
そこにポツンと存在する小さな家では騒がしく今日を迎えていた。
「リライト!アラヤ!ロック!起きなさい!」
黒い長髪と狼の耳が特徴的な女性がお玉とフライパンを叩き騒音を奏で三人の少年を起こしていた。
アラヤと呼ばれた少年は緑のザンバラ髪と狼の耳、醤油顔をした愛嬌のある少年。
ロックと呼ばれた少年は包帯で顔の殆どを隠し見えているのは睨み付ける様な金色の目とブラウンのボサボサな髪が特徴的。
リライトと呼ばれた少年はのほほんとした顔付きと糸目、それと緑のショートヘアーが特徴的だ。
「おはよう母さん」
「おはようなお母ちゃん」
「……おはようさん」
「はいはいおはよう、さっさと飯食って試験に行ってきな」
女性は三人の首根っこを掴むと洗面所に叩き込みすぐに顔を表せ、自分はすぐに朝食の準備に取り掛かった。
「手伝う」
「相変わらず早いねぇロック」
「まぁな……おふくろは休んどけ」
一番最初に洗顔を終えたロックは彼女からフライパンを奪い取り押す感じでテーブルへと追いやった。
「さて……『闇人形』」
ロックが指を鳴らすと宙に浮く調理器具達。
それはまるで意思を持ってるかの様に勝手に動き出し、すぐに朝食が完成してしまった。
「今日はロックのかぁ〜」
「たまには俺も作るよ母さん」
のんびりとした口調のリライトと真面目なのか親孝行なのか自分がたまには作ると言ってくれるアラヤ。
だがそれを聞き三人は微妙な表情を浮かべる。
「気持ちは嬉しいけどあんた達は来月から寮学生だろ、一々気にしないの」
「まだ合格どころか試験すら受けてないわお母ちゃん」
「何言ってるのよ、あんた達は私の自慢の息子なんだよ!
合格は決まってるって」
彼女の力強い言葉に三人は照れ、すぐに朝食を食べ終えて出発するのだった。
そして三十分ほど歩くと一つの要塞の様な頑強な都市。
「此処が『学園都市エルヴィナ』か」
「ほな、ちゃっちゃと合格しちゃいましょか」
「おう」
三者三様で紙を門番に見せて通り、要塞の中央に存在する城の様な建物へと向かう。
学園都市エルヴィナ
それは各国が資金を出し合い中立地帯として作り上げた学生の学生による学生の為の国。
一部を除きすべての運営は学生に任されており、また数多の種族が暮らしている。
説明は此処までにして三人は城に着くなり受験票を教員に見せ、試験会場へと案内された。
そこは質素な作りの体育館で、ただ長机とパイプ椅子が設置されただけのつまらない会場。
我々の世界と大して変わらないが、少し変わっているのは既に試験を受けている生徒が居ることだ。
この学園の試験は特殊で、来た者から順に試験を受けていく。
一番最初に筆記試験を、二番目に実技試験を、そして最後に面接試験を受けるのだ。
三人は顔を見合わせると各々遠く離れた席に座り、裏向きにされているプリントを捲った。
(最初は常識問題か
何々……この世界で使われる五つの術法を述べよ
一つは『魔術』
一つは『魔法』
一つは『療法』
一つは『気法』
一つは『種術』)
(んん〜上記で述べた五つの特徴を書けぇ?
えっと
『魔術』は『魔力』ともう一つ媒体を使い行う交換の術で、媒体が強ければ強い程えぇやったな
『魔法』は『魔力』のみで行使できる力で個人の魔力量が大きく関わるモン
療法は『魔力』で傷を治すやったな
気法は『気』って生命力を使って行う魔法みたいなモンで、種術は種族特有の特別な術や)
(この世界の八大種族を答えろ?
『竜族』
『獣族』
『鳥族』
『魚族』
『天族』
『魔族』
『森族』
『機族』だろ)
(えっと……八大種族でも特別な力を持った呼び方を答えよ……か
確か『竜族』が『竜人』
『獣族』が『ウルフェン』
『鳥族』が『シグルス』で『魚族』が『クトゥリ』
『天族』が『ドミニオ』で『魔族』が『ドラクル』
『森族』が『ハイド』で『機族』が『モーター』!)
(九大国を答えろかぁ……地理は自信無いなぁ
確か『獣国エンリャ』
『竜国ドラグレスク』
『鳥国オウギ』
『魚国アトランティス』
『森国イグドラシル』
『天国エデン』
『魔国タルタロス』
『機国ハッカク』やったっけ?)
(我々が戦う生命体とその等級?
……殴れば死ぬから考えたこと無かったな)
(『疫獣』だな
等級は特から伍までの約六等級で、一部に追加字が着いてその特性を表しているっと)
(えっと…………………職業について答えろ
生まれつき持っている職、才能を前職でその後に何かしらの要因で付与される物を後職
職は神から与えられた才能……やったな
しっかしロックの忍者って職は謎やな、高いアサシン適正におまけも付いとるのは羨ましい限りや)
こんな感じで進んでいく試験、だが少し時間が経つとロックは筆箱から三本の鉛筆を取り出した。
その頭には一から六までの数字や等級に合わせた数字などが書いてあり、これからすることを教えてくれている。
(三択ならお前だ!
ギガストライカーX!)
茶色がメインで金で文字の掘られた鉛筆を転がし答えを書いていくロック。
それを白けた目で見ている受験生達。
そして……
「終わりだ」
「では次の試験会場に向かいたまえ」
「お、俺も終わりました!」
「ワイもや!」
ロックに釣られる様にアラヤとリライトも立ち上がり監督にプリントを手渡すと後を追うように付いていくのだった。
「次の受験生はまだかな?」
次の試験会場は石造りの闘技場で、その上には木製のレイピアを持った男が一人暇そうにしていた。
「うへぇ、『学園ギルドの切り札』が相手かいな」
「誰だそれ?」
「学園都市のギルドで一番強いって言われてる男だ」
「最強は俺だ」
ロックは木製の先端の膨らんだ鈍器を手に闘技場へ登り、睨むように教官を見ている。
「全く、年に何人か君みたいな身の程知らずが来るからこの学園の試験は困るな」
「そうなのか?」
「あぁ、この学園は気品と知性に満ち溢れ競争心を清く正しく美しく持った学生のみ必要なのだ
君のような無謀で知性の欠片もない蛮族は不要なのだよ!」
そう言われると少し寂しそうな表情になるロック。
おや?と少し拍子抜けしたと言わんばかりの表情になる教官。
「俺は喧嘩や戦争は嫌いな平和主義者なんだが」
「そうなのか?なんか……意外だな」
「「うわぁ……」」
気を取り直して教官が試験開始を告げるとロックは一瞬で距離を詰め、教官の肩を掴み全力で地面に埋め込み頭だけ出す形にした。
「き、君?」
「俺は蛮族じゃねえ、それに戦争や喧嘩が嫌いってのも本当だ」
「な、なるほどこうやって私を棄権に追い込む……」
「好きなのは一方的な虐殺と圧倒的な暴力による蹂躙だ!」
「蛮族じゃないか!?!?!?」
「「いいえ、ただのバーサーカーです」」
ロックは天高く鈍器を振り上げると、一方的に教官の顔面を力強く叩いていく。
先ず降参の宣言が出来ないように顎を、次に鼻を、そして髪を破壊していく。
一方的な虐殺と言える姿に二人は内心引きながらもこれからの試験がどうなるか考えるのだった。
ロック・イリュウイン
元孤児の男子で滅茶苦茶ガタイがいい
包帯で顔の殆どを隠しており、素顔は家族である三人しか知らない
一応かなりのイケメンらしいが言動や普段の態度から「確実にモテない」と断言されている
三人の中で一番大きい
竜族『ドラグナー』
アラヤ・イラシキ
あの家で唯一母親と血の繋がった少年
普通すぎる性格と普通ではない槍さばきでたまに買い物に行く村ではアイドル見たく扱われている
獣族『ウルフェン』
リライト・リミックス
関西弁っぽい言葉を使っている少年
常にヘラヘラとしており掴みどころが無いと言われるが割とわかりやすいらしい
鳥族『マーシュ』
ヒイロ・イラシキ
三人の母にして滅茶苦茶な母親
本人は「死ぬ前に孫を抱きたいな〜」と言っている程、三人が結婚出来ないと思っている
獣族『ウルリア』