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その2

 学生生活が楽しいものであれば、それはそれで良いことなのだと思う。しかしながら、僕の場合は必ずしもそうとは言えなかった。僕はことさら孤独だった。自分としては、そういう生活をしている方が、楽だと思っていた。周りからどんな目で見られたとしても、それはほとんど関係のない話だった。


 僕にはやっぱり、愛花しかいないみたいだった。それがいいことなのか、あるいは、悪いことなのか、正直分からない。でも、これが今のところ、僕にとっては正解なのだ。


「ねえ、たっくん???」


 愛花は仕事が終わって疲れ切った僕に、問いかけることがあった。


「お医者さんって、すごく大変なのよね???私、ニュースとかで知ってるよ。ああ、私の愛するたっくんがどんどん死んでいく……死んでいく……。世間に殺されていく!!!」


 愛花は被害妄想が時々激しい。実際、これは僕自身の選択によるものなのだから、愛花が何か言ったとしても、本来僕の意思決定には影響しないはずなのだ。


 それなのに……。どういうわけだか、僕は最近、愛花に脅えている。


「ねえ、たっくん。こうなったらさ、私がたっくんからコーフンする薬を貰ってさ、後は注射器を用意してさ、そしたらね、私がたっくんにチクって注射してあげようか???」


 こんな具合に、僕のことを恐喝する。


「そんなことをしたら、間違いなく僕は医師でいられなくなるだろうねえ……」


「いいじゃない、別に。ねえ、たっくんがお医者さんになったのは、子供の頃、お医者さんごっこして、その時可愛い女の子がいて、その子を抱きたいって思ってなったんでしょ???」


「…………そんなわけないでしょう……」


「その歴史の中に、私の知らない女の子がいる……。お医者さんになって、たっくんの周りには能無しの女が1万人もうろついている……ああ、どうしてかしら???ねえ、私がたっくんを縛りつければいいんでしょ???ダメだよ、外は敵がたくさんいるんだから……。たっくんの命を奪おうと嫉妬する輩が多すぎて……私も一々目を光らせるのが大変だからね???」


 せっかく、楽しいムードでおしゃべりしていても、最悪な気分になる。


 愛花が僕のことを好きでいてくれるのは構わないが、どうして、これほど重いのだろうか???これを愛と言うのならば、世間に溢れるカップルは、恐らくみんな、胃に穴でも開いているんだろう。


「分かったよ、愛花。僕が悪かった。明日はもっと早く帰って来るから……」


 そう言って、愛花を抱きしめる。すると、愛花は落ち着いた表情に戻って、


「ありがとう、たっくん!!!」


 と言う。その可愛らしい姿を見せつけられた僕は、なんともいたたまれなくなるのだった……。




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