その18
「どうしてこうなったんだ……って君に聞いても、僕はその答えを知っているのだが……」
「あら、だったら、わざわざ聞く必要はないんじゃないのかしら???」
「ああ、そうだな……」
「たっくんが悪いんだからね。そうだ、もう外に出るのはやめにしたら???」
「でも、僕が仕事をしないと、2人で生活するのは困難だと思うが???」
「それは平気。私だって、稼ぎ方くらいは知っているから。ほら、いまはね、こういうツールがあるのよ……ここに私の名前を登録すると……ヤサ男たちが集まって来るってわけ……」
「ひょっとして…………」
「ああ、大丈夫。たっくんが想像している、そういういかがわしいものではないから。ただね、ネット界隈のバカな男たちの相手をしているだけで、結構の金になるのよ。私は何にもしていないから」
随分と都合のいいシステムができているようだ。愛花は……こんな愛花でも、ネット上でもいいから、繋がってみたいと思う男がいるのか。まあ、確かに表面上は素敵なお姉さん、ということになるのかな。
「あれっ……ひょっとして、たっくん、嫉妬してるの???私が他のクズ男どもと話をするだけで、嫉妬してくれるの???やだ、素敵ね!!!でもね、もし仮に、そうなのだとしたら、私の気持ち、分からないわけないよね???」
なるほど、確かに僕は嫉妬したのかもしれない。愛花が……他の得体の知れない男たちと関わりを持つ……それがどういうことなのか、考えてみると、嫌なことだった。
「でもさ、本当に僕が仕事しないと、これから真面に生活できないと思うんだけど……」
僕がこう言い続けると、愛花は、
「だからさ、はあ……やっぱり、たっくんは何も分かっていないみたいだねえっ……」
と言った。
「分からなくてもいい。でも、とりあえず、この縛りを解いてくれないか???」
僕がこう言うと、愛花は、
「いやだ」
と答えた。僕はしばらくこの状況である必要があった。
「だって、その縛りを解いたら、たっくん、私の傍から逃げるでしょう???」
確かに、一瞬愛花の傍を離れたいと思った。これは事実である。
「そんなことされたら、私が死んじゃうから……」
これも事実だと思った。
「だからね、もう少しだけ頑張って」
僕はこれ以上、何も言わなかった。しばらくは、愛花の好きにさせようと思った。