その16
「あの女も、ハンバーグみたいにグチャグチャになればいいのに……」
僕は愛花の提案通りに、ハンバーグを作ってやった。愛花は美味しそうにハンバーグを食べた。だが、その発想は、やはり愛花特有のものなのだろうか、あるいは、もっと他に意味があるのだろうか。僕には分からなかった。
「愛花……そういう話はダメだろう。僕たちはいま、食事をしているのだから……」
「だからね、あんな女は本当に壊れちゃえばいいんだよ。たっくんにとって害悪なのだから、生きていても仕方ないじゃない……」
「害悪なわけないだろう……」
「そんなことないよ。私たちを邪魔する者はみんな害悪なんだから……」
愛花はそう言って、ハンバーグを手に握り、ぎゅっと潰した。
「安心して。たっくんが作ってくれたものは全部食べるから……」
僕は愛花よりも早く食事を済ませて、部屋に入った。すると、まるで強盗にでも入られたかのような有様になっていた。もちろん、僕はその犯人を知っているので、改めて怒ろうとは思わなかった。
「ああ、そうだ!!!たっくんの邪魔になりそうな本はね、ぜーんぶ処分しておいたから!!!」
愛花は食事を終えて、僕の部屋にやって来た。なるほど、確かに卒業アルバムなど、学生時代に使った本がそっくりそのまま消えていた。
「僕の部屋に入って、物色したんだね???やめてくれって言ったじゃないか……」
僕は一応注意した。もちろん、意味はないのだが。
「ごめんなさい。でもね、私やっぱり、我慢できないのよ。だってさ、たっくんが毒されていくと思うと、もういてもたってもいられなくてさ……」
そう言い続ける愛花に対して、僕はいまさら、返す言葉がなかった。それはそうと、卒業アルバムに挟んでおいた、長崎出雲からもらった手紙はと言うと……愛花がぐしゃぐしゃにして持っていた。
「ひょっとして、たっくんが探しているのはこれかしら???」
愛花の言う通りだった。僕は頷いた。
「ふーん……ねえ、私を裏切って、こんなやり取りをしていたんだね???」
段々と、愛花の機嫌が悪くなる。
「一方的なものだよ……」
「だったらさ……どうして保管しておくわけ???あの女の前で、ビリビリに破り捨てればいいじゃないの???どうして、そんなことができないのかな???ねえ、どうして???どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして????????????」
近頃、こんなペースの愛花の相手をするのは、非常に疲れると思った。