その15
僕は生まれながらにして一人ぼっちだった。そして、例えば妹や弟など、自分よりも若い子供の面倒を見ることが好きだと思っていた。世間ではこういう輩のことをロリコンと言うのかもしれない。実際、ロリコン趣味と言われても、完全に否定することはできないと思う。
「たっくん、さっきからどうしちゃったの。様子がおかしいみたいだけど???」
様子がおかしくなった原因が、一体誰にあると言うのだろうか。それはおそらく、愛花なのだと思う。でも、本人に直接それを伝えることはできなかった。
「大丈夫だよ。少し疲れちゃっただけだ。家に帰って休めば何とかなると思うよ……」
でも、実際のところ、家に帰ったからといって、ゆっくり休むことができるわけではない。家に帰れば、今度は愛花の面倒を見なければいけないのだ。過保護な親、と例えることができるかもしれない。僕は愛花にとって、親のような存在なのかもしれない。
「たっくんにどんな料理を作ってもらおうかなぁ」
愛花は本当に何もできないと思う。何もできなくした張本人は、おそらく僕である。だから、愛花が死ぬまで、彼女の面倒を僕は見ることになるのだろう。一度引き受けてしまった以上、断る事はもうできないのだ。
「どんな料理が食べたいんだ」
僕は問いかけてみる。
「たっくんの作った料理だったら何でもいいんだけど。そうだね、強いて言えば、今日はハンバーグでも食べたい気分かしら???」
「わかった」
「ねえ、それよりさ、たっくんはこれからどうしようと思っているの???」
愛花は不意に質問してきた。
「なにが???」
僕が聞き返すと、愛花は途端に機嫌が悪くなって、あの時のように怖い目をした。
「ようするにさ、あの女との関係はどうするのってことだよ???」
長崎出雲……僕はそもそも彼女とは無関係なはずなのだ。少なくとも、いまこの瞬間、僕と愛花の構築してきた関係を壊そうとするのであれば、それは大きな問題である。でも、だからといって、愛花をこのまま野放しにしていいのか、と考えてみると、それもまた、保護者として無責任であると思うのだ。
「愛花はどうしたいんだ???」
「わたし???わたしは別にどうだっていいの。たっくんがどう考えているか、それが問題なの。ああ、でもわたしはその答えを知っているから。第一、たっくんにあんな女は似合わないよ」
「それは、これから僕が考えることだな」
「やっぱり、たっくんは変わったのかもしれないね」
「変わった……変わらない人間なんていないんじゃないのか???」
愛花はこくりと頷いた。