【第二章】第五十一部分
「あれ。俺はいったい何をしてたんだ。虚無はどこに消えた?いや虚無に消えるという表現はおかしいぞ。」
「ひとり問答で自爆するんじゃないよん。」
「あれ?箱子、いや校長か。吝奈と木憂華もいるぞ。3月1日の壁を壊したんじゃ?」
「さっきのはオニイチャンのブラックアウト、つまり意識を奪って、脳内に投影したシミュレーションだよん。」
「そんなバカな。記憶には鮮明に残っているぞ。」
「大脳の記憶とは映像がすべてじゃないよん。むしろ意識だけのものの方が同じ脳内感情に直結するよん。それはどうでもよくて、オニイチャンが虚無を拒否ったから、その希望通りにやったまでだよん。虚無は起こらず、ただの現実、日常に戻ったよん。3月1日の翌日は虚無。その歴史は変更不能だよん。」
「そうだったのか。俺は日常を選択したんだな。よかった。虚無なんてゴメンだからな。3月1日が終わらないとしても、この方がぜったいにいい。ハグ、ハグ、ハグ。」
昆太は箱子兼萌絵、吝奈、木憂華を全力抱擁した。
「ちょっとやめてよ、いややめないでよ、お兄ちゃん。」
「く、臭くて苦しいですわ。でも気持ちいいですわ、お兄様。」
「毒々しいけど、注射したくなる血液じゃん、あんちゃん。」
三人の拒絶(+ちょびっと受容)にも拘わらずひたすら抱擁し続ける昆太。
『ウイン、ウイン、ウイン、ウイン』
けたたましいサイレン音が昆太の鼓膜を破る勢いで聞こえた。
「楼李昆太。女子高生へのセクハラの現行犯で逮捕する。」
ブルーの警官帽をかぶった三人のミニスカ婦人警官がやってきて、昆太をパトカーに押し込んだ。
「やめろ~!俺は犯罪なんて犯してないぞ。いや犯したけど、タイホはイヤだ~。」
「お兄ちゃん落ち着いてよ。あたしたちが市長にお願いして、また死んでもらってこの次元に飛んできたよ。ねえ、吝奈ちゃん、キューリー夫人博士。そしてお兄ちゃん。あたしたちが『この世界のあたしの妹』だよ。」
自動運転のパトカーの中で、三人幼女に囲まれた昆太。
「俺はこの世界でついにロリ王になれたんだ!」
パトカーはガッツポーズのリフレインを止めない昆太を乗せて、どこかへ消えていった。




