【第二章】第四十九部分
「よくわからないことを言うじゃん。これだけキッチリ攻撃を回避している、つまりムダに注射して、もう薬物がなくなったんじゃないかだよん。」
「その通りじゃん。でも、校長、自分の周辺を見るじゃん。」
「あれ?もう空いてる場所がないよん。これって、追い込まれたってこと?」
萌絵が立っているところは赤紫一色になっていた。萌絵が立っているところは赤紫一色になっていた。
「はい、最後のピースがきれいに埋まって完成ですわ。」
『バキッ。』
吝奈の牙剣が萌絵の額を襲った。
「やられたよん。ばたん。」
余裕を持って倒れた萌絵。倒された感はかなり乏しい。
「もえだけじゃなく、この世界の人間は、不老不死ではないけど、3月1日から後ろにいかないなら死なないよん。」
「校長は開き直っているみたいだな。勝負に負けたんだから、正々堂々と義務を果たせよ。」
昆太は強い調子で萌絵に要求した。
「オニイチャンがそんなに厳しく言うと思わなかったよん。ぐすん、ぐすん。」
「ぐっ。」
一瞬、言葉に詰まった昆太。
女子高生の泣き顔は最終兵器である。しかも泣いているのは外見上箱子である。さすがの昆太も切っ先が鈍っていた。
「な~んて、動揺するとでも思ったか。俺は天下のロリ王を目指す男だ。女子高生の泣きでふらつくものか。ははは。」
「お兄様。ちょっとオブラートに包んではいかがでしょうか。」
「さあさあさあさあ、やってくれよ!」
吝奈の諌言はハズレ馬券になった。
「そこまで言うならやってやるよん。でもよく聞くよん。3月1日の壁を破るんだよ。ここ重要だよん、テストに出るよん。破るんだよ、オトメもえのハジメテを破るつもりなのん?」
「誤解を招くような表現を使っての脅しか。」
「ペンは剣より強しだよん。」
「それはマスコミが弱さを認めたくないから使うただの方便だ。オトメのハジメテだろうが、オトメイトだろうが、お留婆さんだろうが、何でも破ってやるぜ。」
「オニイチャン、その3つはすべてお破り禁止だよん。でもどうしてもやぶりたいなら願い叶えるよん。どうなっても知らないよん。ぶちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー、ちゅー。」
萌絵はいきなり昆太にキスして魔力を吸収した。
昆太は一瞬でブラックアウトした。
「・・・・・・・・・・。」
何もない感覚、誰もいない圧倒的な虚無感。無限に広大な宇宙を誰も想像できないのと同じく、虚無を人間が理解するのは不可能である。




