【第二章】第三十五部分
先導者がいなくなり、こわごわと進んでいく木憂華と、平然としつつも睥睨する箱子・吝奈。
「邪魔者がいなくなったところで、ゲートインだ。」
腰の抜けたっぽい木憂華を背中に乗せて、昆太一行は行動を開始した。暗い中で、少し先にぼんやりと何かが見える。古びた低い円筒形。
先頭を歩く昆太が口を開けた。
「あれは、お化け屋敷の定番、井戸か。」
ゆっくりと井戸から何か出てきた。細くて色とりどりな光が見える。
「な、なにかヘンなモノが生えてきたぢゃん!」
昆太の背中が大きく唸った。
出てきたのは手だった。カラーリングしている七色マニキュアがド派手。
「うらめしいってゆうか、暗い中にひきこもるなんていやだしぃ。だからお化粧やマニキュアやってるんだけどぉ、全然ダサいしぃ。」
ギャル風の短い花柄浴衣の女子。ウェーブのかかった茶髪をポニテにしている。前髪が垂れており、左目が隠れている。長いつけまつげとバーニングレッドのルージュが印象的である。ギャル風ではあるが、幼女であることに変わりはない。
「な、なんだコイツは?幼女だけど、かなり異質な存在だな。」
幼女と確認したものの、身構えている昆太。
「あたい、名前、ダサコだよ。この世界が不老不死でなかった頃に死んだんだよ。大昔に彼氏からお前のダサさに嫌気したと、殺されて人生ゲームオーバーしたんだよ。ホント、ダサい死に方だったしぃ。今は幽霊ライフ満喫中だしぃ。あ~あ、うらめしい、メンドクサいしぃ。」
「ゆ、幽霊!?初めて見た。不老不死の国なのに、死んで幽霊になるヤツがいるなんて、非科学的ぢゃん。それに大昔は男子がいたらしいし、あ~れ~ぢゃん。」
あまりの衝撃に、木憂華は気絶してしまった。
「あらら。何もしてないのに倒れちゃったぁ。気絶なんて、チョーダサいしぃ。仕方ないねぇ。これでも呪い殺すことを仕事にしてるんでぇ。あっ、別に殺しを呪い限定してないからぁ。次はどうするかなぁ。これ使うかなぁ。ちょっと古くてダサいしぃ。」
ダサコの視線の先には横長でない、かなり古い小型テレビが置いてある。アナログチャンネル付きで、骨董品級である。
「さあ、この中に入ってほしいしぃ。」
箱子は古いテレビに、セーラー●ーン的に目を輝かせて興味津々である。




