【第一章】第六部分
「でもたしかに魔法が使えたら、この歯を鋭利にして、ひとくちじゃなくて、箱子さんの生肉を、もっとたくさん切り刻んで食べることができるかもでちゅわ。」
「Qも注射器を巨大化させて、パコから大量の血をもらい受けるぢゃん。」
「やめてよ。そんなことしたら、死んじゃうよ!」
「不老不死の国なんだから、それは絶対大丈夫♥」
「大丈夫じゃない!死ななくても痛みは万死に値するんだからねっ!」
「用語の使い方がちょっと間違ってまちゅわね。」
三人は歩きだしたが、箱子が突然立ち止まった。
「学校行くの、やだよ。」
「また『勉強イヤだ病』が発病しましたでちゅわね。何百年、同じフレーズをおっしゃるんでちゅの?」
「勉強はたしかに好きじゃないけど、それ以上に学校が、いや学校で行われることがイヤなんだよ。」
三人は会話をしながら歩き続けた。
「おい、ここを越えると遅刻しちゃうぢゃん。」
「あら、ホントでちゅわ。ワタクチも見落としてしまうところでしたわ。」
三人は小さな緑に覆われた山の前で立ち止まった。
「学校って、見つかりにくいように設計するんだねえ。こんな人通りが少ない場所なのに、いったいどんな意味があるんだろう。」
「さあ、ワタクチにもわかりかねまちゅわ。おそらく、防犯上の対策だとは思われまちゅけど。」
「防犯だって?こんなところに外部から侵入する人なんていないよ!」
「ごちゃごちゃ言ってないで、学校に入るぢゃん。」
「そうだね。遅刻寸前だからね。」
小さな山と言っても高さ50メートルの小山である。三人は小さな山の中に幽霊のようにスーッと入っていった。
「このドア、音をまったく立てずに開いて、あとは自動歩行とかスゴいねえ。」
「歩かなくていいのは便利でちゅわ。」
「それは逆走できない、つまり一旦入ったら、拘束されてしまうということぢゃん。建物をわざわざ背景と同じ山の迷彩色にしたりして、実にワケがわからないじゃん。この叡宴小学校は!」
「小学校じゃないよ。正確には小学校分校だよ。」
『マチナサイ。』
奇妙な械音声が聞こえた。