【第二章】第二十三部分
「そうなのか。木憂華は出血量を計測すれば、死んだ回数を計算できるのではないのか。」
「不可能ではないぢゃん。でもそんなことをする科学的な価値がないぢゃん。何の研究対象にもならないぢゃん。」
三人幼女はいずれも昆太に視線を合わせることもなく、虚ろな様子である。
「お兄ちゃん。どうしてもこの中の誰かを殺したいの?」
「い、いやそんなことはない。あるわけないだろう。元の世界に戻りたいという気持ちはあるけど。」
「やっぱり、ワタクチたちを殺したいんじゃありまちぇんの?」
「そう思えるぢゃん。でも殺されても不老不死だし、簡単には殺されないぢゃん。」
「殺したりなんかするものか。それに俺には戦闘力がないんだぞ。お前たちと戦っても負けるだけだろう。」
「オニイチャン。そこで、もえからの提案だよん。これから、分校で合宿を開いて、オニイチャンは誰を殺すのか、そして殺す方法を考える、といのはどうかだよん。」
「いきなり合宿?ちょっと待ってくれよ。まだ誰かを殺すとか考えているとか、何も言ってないぞ。殺す前提での、しかも殺す相手と合宿っておかしいだろう。」
「「「ジーっ。」」」
三人幼女は犯罪者を見るような目で昆太の顔を睨んでいる。
「なんだ。みんな、俺を疑うのか。わかった。ならば合宿に行って、俺の無実を証明してやる。」
「「「やっぱり殺すんだ。殺し屋兄!」」」
「よ~し。合宿じゃん!」
「ちょっと待て。市長もついてくるのか?」
「当然だよん。市長として法律で裁くよん。」
「「「危険過ぎるよ、おばあちゃん!」」」
「おばあちゃん言うな!」」」
一瞬怒りに燃えた萌絵であったが、ゴホンと咳払いして、改めて昆太の方を見た。
「相手は不老不死なんだよん。殺し方を探すしかないよん。言っておくけど、細胞すりつぶしてもダメだし、肉体じゃだめだから、精神的に殺してとか考えるの無駄だよん。精神死は結局脳死なんだから。脳は死なないようにできてるだよん。頭ぶち壊しても死なないよん。なんなら今やってみようかだよん。」
「お兄ちゃん、まさか、本当に殺そうとか考えないよね?」
箱子は深刻そうな顔で昆太を見上げた。
昆太は無言であった。
「お兄ちゃんのひとでなし!・・でもいいよ。あたしも長生き飽きたし。」
「仮にお前たちの誰か殺したとしても、同時に生かす方法があるかもしれない。それにチャレンジするさ。」
「わかったよ。お兄ちゃんの帰りたいという希望を叶えたいし、どうしても殺したかったら、協力するよ。」
こうして、昆太、三人幼女、市長で分校合宿を行うこととなった。




