【第二章】第十九部分
「今だ。パコ、吝奈。同時にわら人形の足を攻撃するぢゃん!」
「「せーのっ!!」」
わら人形・害の二本の足は不意をつかれて、脂汗で滑りやすくなっていた床の上に転倒した。
「やった。一泡吹かせてやったぢゃん。」
『こんなことで勝ったつもりなのか。またオレをバカにするモードが復活したようだな。もう許さんぞ。』
わら人形・害はまだ倒れたままである。
「よし。あんちゃんから溢れ出した汗を集めるぢゃん。」
木憂華は注射器を構えるが、手が動かない。
「キューリー夫人博士。どうしたの?注射器を使わないの?」
「うっ。脂汗がクサくて、ゲロ吐きそうぢゃん。」
「ボクはそんなにクサいんだ?ああ、幼女に嫌われる。トホホ。」
「そんなことありませんわ、お兄様。クンクン、あ~あ、なんてクサいんでちょう。」
「わ~ん。やっぱりスゴい悪臭なんだ!」
「クサい、超クサい、めっちゃクサいでちゅわ~。」
「うわあああ~。」
両手を頭に当てて左右に振るという自己否定ポーズ展開中の昆太。
「これでよいのでぢゅね。」
吝奈は木憂華から受け取った注射器で昆太の脂汗で満たした。
「これで準備万端ぢゃん。次の工程に移るぢゃん。」
吝奈は、倒れていたわら人形・害に注射した。
『栄養剤でも注入したのか?たしかにスゴくクサいぞ。』
「また幼女にクサい呼ばわりされた。うえ~ん。ズズズ。」
昆太の落涙は、重い空気を伴って継続を余儀なくされた。
昆太の傍らで、起き上がったわら人形・害。
『このクサさ。毒を注入しやがったな。でもその作戦は日の目を見ないぞ。このわらの体は生き物ではないからな。ムダな努力賞を授与してやるぞ。ワハハハ。』
「勝負あったぢゃん。パチパチパチパチ。」
『なんだ?敗北を自画自賛するのか。ずいぶんとポジティブ思考だな。』




