【第二章】第十四部分
「小さい頃からいたぶらて、いたぶられて、いつも泣いてばかりだったオレは自分を改革すべく、この監獄で修行した。そこで得られたものが、ドS。じゃなくて、ドM。ドMならどんなにイジメられても怖くない。いや気持ちいい。うひゃひゃひゃ!」
害は完全に狂ってしまった。いや真の姿を晒してしまった。
「気持ちいい。どんどん剥いてくれ~!」
「なあ~んだ。ガイちゃん、ただのMに変わっただけだよ。飽きた。」
「みんな、やっぱりオレをいじめるためにここに入所してきたんだな。ひ、ひどいよ!うえ~ん。」
「見せかけだけのドMが露呈しまちたわ。ホント、小者ですが、それが泣き虫ガイちゃんらしくて、しっくり来まちゅわ。ホーホホホッ。」
「みんなでオレをバカにして!こうなったら、最終兵器だ。これを見て吠え面かくなよ。地獄通信にあくせく!」
襦袢だけを身につけて、スマホを取り出して、地獄通信にアクセスしようと、あくせくするが、そんなものはそもそも存在せず、なかなかヒットしない。ようやく出てきたサイト画面を見つめる害。
『地獄通販・・・。まがい物、偽物、キズモノばかりお取り扱いしております。ネットで転売すれば儲かりまっせ!』
「これも違う。だ、ダメだ。こうなったら、自分でやるしかない。これがオレの地獄通信だ!」
害は胸元から麦色の何かを取り出した。
「あっ。かわいい!」
それを見て即座に反応した箱子。
害の手にはわら人形が握られていた。赤い紐もついている。しかし、何かがおかしい。
普通、わら人形には顔がないが、これにはちゃんと顔があった。手書きで紙に描かれた顔が貼り付けられているだけである。幼女が描いた下手な絵である。
「このわら人形には顔があるよ。しかも笑顔だよ。これぞ、笑人形。ガイちゃん、工作うまくなったね。えらい、えらい。」
箱子は害の頭をなでなでしている。
「また、バカにした。もう、こうしてやる!」
害は大きく右手を上げて、全力で赤い紐を引っ張った。タダのわら人形はどこも動かない。
「泣き虫ガイちゃん。わら人形を乱雑に扱ってはいけませんでちゅわ。モノを大切にするよう、昔から吝奈おねえさんが言ってるではありまちぇんか。」
「また子供扱いした!クソ。いったいどうしたらいいんだろう。うえ~ん。」
泣き顔に復帰した害。顔はさらにぐしゃぐしゃになってしまった。




